デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ドロシー・アシュビーはゴールデン・イヤリングが似合う

2008-04-20 09:02:36 | Weblog
 NHK交響楽団首席オーボエ奏者、茂木大輔さんの著書「オーケストラ楽器別人間学」は、どんな楽器がどんな性格を生むのかを分析している。ハープの項には、夢見がちな深窓の令嬢、と副題が付いていて、楽器が持つ既成の美音のため、奏者は既成の幸福をあらかじめ手にしたところから発想をスタートするという。空想を誘うその音色は、性格からも苦悩をとりのぞき、夢見るような性格になっていくそうだ。

 アドリブを命とするジャズには、機能的にハープは向かないようで、ジャズ・ハーピストは少ない。ドーハムとロリンズのセッションに参加したベティ・グラマンが有名だが、この楽器を極めた人にドロシー・アシュビーがいる。アシュビーが深窓の令嬢なのかは不明であるが、フランク・ウエスとのコラボレーションが見事な「In A Minor Groove」を初め数枚のリーダー・アルバムがあり、美しい音色を損なわずにハープで自由にインプロヴァイズしている。ジャズ向きではないハープを、高度なテクニックによりジャズの場で位置付けた功績は大きく、アシュビーのアドバイスにより、日本のジャズ・ハーピスト林忠男さんが誕生したのは、国境を越えて同じ音色に魅せられた二人の友情であった。

 Concierto de Aranjuez と題された作品は、タイトルのアランフェスをはじめ、ミスティ、ラウンド・ミッドナイトというお馴染みの曲を収録したハープ・ソロアルバムだ。児山紀芳氏プロデュースということもあり日本人好みの選曲であるが、ソロ演奏によりメロディの美しさを際立たせた好作品である。レイ・ブライアントの決定的名演で知られる「ゴールデン・イヤリング」がトップに収められていて、美しいことこの上ない。ロバート・マックスウエルが「ひき潮」でハープの究極の美ともいえる押しては引く小波を表現したように、アシュビーは金のイヤリングの目映いばかりの輝きをその47本の弦で紡いでいる。美しいメロディは美しく表現されることで、曲が持つ本来の美しさを醸し出すのだろう。

 茂木さんによるとハーピストは目に見える上半身の優雅な動作とは対照的に、スカートの下では両足で煩雑なペダル操作がおこなわれているそうだ。このペダル・コンビネーションがハープを演奏する際重要なポイントになる。夢見がちな令嬢のスカートの下は気になるが、見ないほうがいいものもあるようだ。
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