異国を訪れたとき、その国に古くから伝わるメロディに惹かれ、取り上げることにより後のスタンダードになる曲がある。有名なところではスタン・ゲッツの「ディア・オールド・ストックホルム」を思い出すが、「チェロキー」もそのひとつと言っていいだろう。イギリス人のレイ・ノーブルが、「ザ・ヴェリー・ソート・オブ・ユー」のヒットを機にアメリカに渡り、そこで初めて耳にしたチェロキー族に伝わる恋の歌のメロディを拝借して作ったものだ。
拝借といえば聞こえが良いが、剽窃と言わないまでも要はパクリである。こう言うとノーブルは礼を欠く輩にみえるが、アメリカで結成したバンドにはバド・フリーマンやクロード・ソーンヒル、そしてグレン・ミラーといった後のジャズシーンを飾る大物を雇い、独立後のミラー・サウンドの礎もこのバンドだから貢献度は高いし、何よりもこのメロディを広めたことに礼を言わなければならない。ノーブルがもしアメリカの地を踏まなかったら永遠にこの愛すべきメロディが埋もれ、そしてクリフォード・ブラウンのあのどこまでも美しく、艶やかで、スピードのある名演だって聴くことはなかっただろう。
多くのプレイヤーがブラウンに続けとばかりに録音を残しているが、そのハードルはかなり高いようでこれを超える名演は耳にしないものの、これに次ぐと思われるのはジョー・ワイルダーだ。ハンク・ジョーンズのイントロに導かれてあの聴き慣れたメロディが出てくるかと思いきや、いきなりアドリブから入っている。これが良く歌う。テーマもコード進行もシンプルな構成のため簡単そうだが、いざアドリブとなるとコード・チェンジに寄りかかれないぶんだけ難しい曲の解釈としてはベストといえる。メロディを初っ端から崩す奏法は珍しくないが、ワイルダーのように歌心がないと原曲の持ち味を引き出せない。
ノーブルが「チェロキー」を録音したのは1938年で、これがオリジナル・レコーディングになるが、大ヒットしたのは翌年録音したチャーリー・バーネット楽団である。何とバーネットはこの曲を楽団のテーマ曲にしたというからこちらが上手の拝借だ。するとバーネットはノーブルより酷い輩かといえばそうでもない。白人ながら初めて黒人プレイヤーを積極的に起用した人であり、リナ・ホーンもオスカー・ペティフォードもバーネットが世に出している。ジャズ界はまだまだ面白い話でつながっているからやめられない。
拝借といえば聞こえが良いが、剽窃と言わないまでも要はパクリである。こう言うとノーブルは礼を欠く輩にみえるが、アメリカで結成したバンドにはバド・フリーマンやクロード・ソーンヒル、そしてグレン・ミラーといった後のジャズシーンを飾る大物を雇い、独立後のミラー・サウンドの礎もこのバンドだから貢献度は高いし、何よりもこのメロディを広めたことに礼を言わなければならない。ノーブルがもしアメリカの地を踏まなかったら永遠にこの愛すべきメロディが埋もれ、そしてクリフォード・ブラウンのあのどこまでも美しく、艶やかで、スピードのある名演だって聴くことはなかっただろう。
多くのプレイヤーがブラウンに続けとばかりに録音を残しているが、そのハードルはかなり高いようでこれを超える名演は耳にしないものの、これに次ぐと思われるのはジョー・ワイルダーだ。ハンク・ジョーンズのイントロに導かれてあの聴き慣れたメロディが出てくるかと思いきや、いきなりアドリブから入っている。これが良く歌う。テーマもコード進行もシンプルな構成のため簡単そうだが、いざアドリブとなるとコード・チェンジに寄りかかれないぶんだけ難しい曲の解釈としてはベストといえる。メロディを初っ端から崩す奏法は珍しくないが、ワイルダーのように歌心がないと原曲の持ち味を引き出せない。
ノーブルが「チェロキー」を録音したのは1938年で、これがオリジナル・レコーディングになるが、大ヒットしたのは翌年録音したチャーリー・バーネット楽団である。何とバーネットはこの曲を楽団のテーマ曲にしたというからこちらが上手の拝借だ。するとバーネットはノーブルより酷い輩かといえばそうでもない。白人ながら初めて黒人プレイヤーを積極的に起用した人であり、リナ・ホーンもオスカー・ペティフォードもバーネットが世に出している。ジャズ界はまだまだ面白い話でつながっているからやめられない。