芸術家、それも音楽家、さらに限定すればジャズ・ミュージシャンほど毀誉褒貶の激しいアーティストはいない。特に革新的なジャズや新作アルバムが前作と大きく違うと保守的な評論家は一斉に攻撃をはじめる。また、ジャズの生命線であるスウィングは「する」だの「しない」とか、と意見が分かれる。音楽は聴き手の感受性に左右されるものなので意見の対立は当然なのだが・・・
デイヴ・ブルーベックほど評論家の意見が割れたのも珍しい。褒める人は、積極的に全米の学校を廻ってコンサートを続けたことでジャズ・リスナーを増やしたことを評価しているが、これは大きな功績だろう。アメリカ人は誰でもジャズを聴く、というのは大きな誤解で、この地道な活動があったからこそジャズを知らなかった人までをもファンにしている。一方、けなす派はブルーベックのピアノがスウィングしないことを指摘する。何を指してスウィングするかというのは別の議論になるが、日本ではこのスウィングしないとみる派が多く、それはジャズ喫茶で極端にかかることが少ないことが証明している。
さて、本当にスウィングしないのだろうか。そんなことはない。大ヒット曲「テイク・ファイヴ」がかかると出だしのピアノから知らず知らずのうちにリズムを刻んでいるではないか。日本ではジャズの普及がジャズ喫茶という閉鎖的な場所を中心にしていたため、頭をうな垂れて聴くシリアスなジャズこそ本物とされていた傾向がある。この図式でいうと健康的で明るい「テイク・ファイヴ」は敬遠されることになるが、楽しいのもジャズであることを忘れてはならない。写真は65年のヨーロッパ・ライブを収めたものだが、ライブならではの楽しさ満載で、こんなピアノを聴いたらスウィング議論は無駄に思える。
ブルーベックが亡くなったのは今月5日だった。「テイク・ファイヴ」を作曲した盟友ポール・デスモンドとバンドを組んだのは40年代半ばだったが、68年に退団するまで実に多くのアルバムを残していて、どの作品も同じ編成ながら随所にジャズのエッセンスがちりばめられており聴くたびに発見がある。「テイク・ファイヴ」は「5分休憩をしよう」という意味合いがある。手を休めてスウィングする「テイク・ファイヴ」を聴いてみよう。享年91歳。合掌。
デイヴ・ブルーベックほど評論家の意見が割れたのも珍しい。褒める人は、積極的に全米の学校を廻ってコンサートを続けたことでジャズ・リスナーを増やしたことを評価しているが、これは大きな功績だろう。アメリカ人は誰でもジャズを聴く、というのは大きな誤解で、この地道な活動があったからこそジャズを知らなかった人までをもファンにしている。一方、けなす派はブルーベックのピアノがスウィングしないことを指摘する。何を指してスウィングするかというのは別の議論になるが、日本ではこのスウィングしないとみる派が多く、それはジャズ喫茶で極端にかかることが少ないことが証明している。
さて、本当にスウィングしないのだろうか。そんなことはない。大ヒット曲「テイク・ファイヴ」がかかると出だしのピアノから知らず知らずのうちにリズムを刻んでいるではないか。日本ではジャズの普及がジャズ喫茶という閉鎖的な場所を中心にしていたため、頭をうな垂れて聴くシリアスなジャズこそ本物とされていた傾向がある。この図式でいうと健康的で明るい「テイク・ファイヴ」は敬遠されることになるが、楽しいのもジャズであることを忘れてはならない。写真は65年のヨーロッパ・ライブを収めたものだが、ライブならではの楽しさ満載で、こんなピアノを聴いたらスウィング議論は無駄に思える。
ブルーベックが亡くなったのは今月5日だった。「テイク・ファイヴ」を作曲した盟友ポール・デスモンドとバンドを組んだのは40年代半ばだったが、68年に退団するまで実に多くのアルバムを残していて、どの作品も同じ編成ながら随所にジャズのエッセンスがちりばめられており聴くたびに発見がある。「テイク・ファイヴ」は「5分休憩をしよう」という意味合いがある。手を休めてスウィングする「テイク・ファイヴ」を聴いてみよう。享年91歳。合掌。