デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ナット・アダレイの素敵な相棒

2013-09-22 08:46:49 | Weblog
 先日、映画「素敵な相棒」を見た。ドラマの「F.B.EYE!!相棒犬リーと女性捜査官スーの感動!事件簿」や、「男の相棒は猫に限る」というウィリー・モリスの著書があるように、相棒というと犬や猫のペットに結びつくが、この映画の相棒はロボットだ。サブ・タイトルは「フランクじいさんとロボットヘルパー」で、物忘れが激しくなった元宝石泥棒の父親を案ずる息子が、介護型ロボットをプレゼントするというストーリーである。

 現実のロボットの進化は知らないが、映画のロボットは自立歩行や会話は勿論のこと、雇い主の健康管理や、意欲を出させて生きがいまでをも見つけさせるようにプログラムされているから驚きだ。ロボットのおかげで元気を取り戻したフランクじいさんは、こともあろうに昔鳴らしたピッキングの技術を善悪がプログラミングされていないロボットに教える。超高性能だけあり習得も早く、これで泥棒の相棒ができたというけだ。そして・・・これ以上はネタバレになるので書けないが、面白い作品だった。そのロボットをジャケットに使ったアルバムにナット・アダレイの「マンハッタンの夜」がある。

 92年の録音で、兄キャノンボールを彷彿とさせるビンセント・ハーリングを迎えてのセッションだ。80年代に組んだソニー・フォーチューンは、音楽性でナットとは若干異なるところがあってコンボとしての統一感に欠けていたが、ハーリングとは非常に相性がよく、アルバムトップの「ネイチャー・ボーイ」におけるソロリレーはいつ交代したのだろうと思わせるほどフレーズがつながっている。通常バラードで演奏される曲をテンポを速めにとることでコルネットとアルト・サックスのユニゾンに彩を付けているのは見事だ。2000年に68歳で亡くなるナットにとってハーリングは最後で最良の素敵な相棒だったのだろう。

 老いは誰にでも訪れ、もしかすると記憶もまだらになる。そんなとき映画に出てくるようなロボットが相手をしてくれるかもしれない。主人公は泥棒の方法を教えたが、素敵な相棒にするために貴方なら何を教えるだろうか。小生なら持っている限りのレコードを聴かせ、ジャズの辞書ともいえるイエプセンのディスコグラフィーを覚えさせる。一度聴いたら記憶し、一回読んだら忘れない超高性能な相棒とブラインド・クイズをやったら間違いなく負けるだろうなぁ。
コメント (11)
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