コタツ評論

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ディパーテッド

2007-06-12 22:33:16 | レンタルDVD映画
はからずも、俺にとっては『リトル・ミスサンシャイン』の引き立て役になってしまった。ディカプリオの熱演が「ジョンベネ」と重なってしまった。スコセッシ映画はエピソード重視のため、筋立てが散漫になりがちなのだが、この映画はその弊を免れている。香港名画『インターナルアフェア』のリメイクだからだろう。

http://wwws.warnerbros.co.jp/thedeparted/jpspecial/index.html

スコセッシはリアリズム派だからしかたないが、『インターナルアフェア』のスタイリッシュな叙情性はない。リアルな人物像としてはジャック・ニコルソン扮するコステロくらい。ディカプリオとマット・デイモンの共演が売りのスコセッシには不向きなスター映画で受賞したのだから、アカデミー作品賞はお手盛りの功労賞だろう。同じ警官ものなら、いま新作コーナーに並んでいる仏作品『あるいは裏切りという名の犬』に軍配を上げる。ダニエル・オートイユくらいの平凡な容姿の中年男が、警察組織と暴力に肉迫するところに、その醍醐味があるものだろう。
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リトル・ミスサンシャイン

2007-06-12 22:00:05 | レンタルDVD映画
子どもと動物が出てくる映画が嫌いだ。純粋や無垢なんて冗談じゃない。
最初の映画体験に近い『禁じられた遊び』以来、子どもを出汁(山車)にするのは汚い手口だと思ってきた。

http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=7405

したがって、アカデミー作品賞にノミネートされたこの映画についても、あまり食指は動かなかったが、やられた。美少女コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」に出場したオリーブが、その名前とは裏腹のキューピー体型で、おじいちゃんが振り付けた場末のストリップダンスを懸命に、そして歓びいっぱいに踊るシーンでは、不覚にも込み上げてしまった。

よくある家族の再生とそれぞれの自立で納まるロードムービーだが、ひと味もふた味も違う。「負け犬になるな、勝ち馬になれ」が口癖の俗物の父、無言の行を続ける引きこもりの兄、自殺未遂をしたばかりのゲイの叔父、老人ホームから追い出された厄介者の祖父、火の車の家計のやりくりに追われて懸命な母。バラバラにみえて、かろうじて家族であり家庭として成り立っているのはオリーブのおかげ。オリーブが家族とその規範の中心であり、美少女コンテスト「リトル・ミス・サンシャイン」への出場という共通の目的もオリーブが与える。つまり、この家族では8歳の少女オリーブが家長なのだ。

次ぎにアラン・アーキン(久しぶり!)扮するグランパ。笠智衆やスペンサー・トレイシーが演ずるような好ましい老人像とは無縁。口を開けば悪口三昧、ウエストポーチから取り出すのはコカイン、色魔ゆえに老人ホームを追い出されたという元気者。「俺の間違いをお前に踏ませたくない」と引きこもりの孫へのアドバイスが、「たくさんの女とやりまくれ!」。その一方、「負け犬になりたくない」と涙ぐむオリーブに、「お前は負け犬じゃない。負け犬とは負けるのが怖くて挑戦しない者のことだ。お前はそうじゃない」と諭しもする。

スコセッシの『デイパーテッド』とアカデミー作品賞を最後まで競った作品だが、期せずしてアカデミー賞をオリーブが挑戦する「クソ」美少女コンテストにしてしまった。痛快である。
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