菅新内閣の発足の党議員総会で、司会者が、会場にいるはずの小沢一郎を「政権の頂きに立たしていただいた」と称え、会場が拍手に包まれるという中継画像が、今夜、TV朝日の報道ステーションで流れていた。「高みに立たしていただいた」だったかもしれないが、いずれにしろ、語るに落ちた場面だった。
現在の民主党は、周知のように、鳩山・菅の民主党と小沢の自由党が合併してできた。今回、小沢グループが排除されて、旧民主党が党と内閣の実権を握ったわけだが、小沢チルドレンの大量加入によって党内最大グループになった小沢グループに向けて、「政権交代は小沢さんのおかげだった」とマスコミの前でアナウンスして見せたわけだ。当の小沢は欠席していて、会場の「笑顔」と「拍手」は空回りに終わったのだが、このアナウンスの意味と効果について、誰でも以下のことに気づくだろう。
①小沢さんありがとう、これからは僕たちがやりますから、引っ込んでな。
②小沢さんありがとう、これだけ気を遣ったんだから、波風立てないでね。
③小沢さんさよなら、小沢グループの皆さんこんにちわ、なかよくやろうね。
もちろん、欠席していた小沢はこのようなアナウンスがされることは、事前にまったく知らされていなかっただろう。当人が欠席しているのを承知の上で、「過去の人扱い」のアナウンスをしてみせたのだから、菅直人と内閣、党の面々が会場に小沢の姿を探して、わざとらしく首を回して見せた仕種を含めて、きわめて無礼なことであった。出席していた小沢グループの面々は、怒りに青ざめたことだろう。
しかし、民主党内の勢力地図がどう変わろうと国民には直接関わりない。俺は、「小沢色の排除が内閣や党の最大の課題である」という論そのものを、「バカいってんじゃねえよ」といってきたわけだから、小沢が失脚しようがしまいが、それはかまわない。
問題は、語るに落ちた、ことだ。「頂き」でも「高み」でも、いずれにしろ、その言葉づかいに、万雷の拍手で応えた旧民主党グループが、政権に焦がれていたことが、はしなくも表れたことである。菅首相の誕生によって、旧民主党が天下を取った。その喜びに沸き立ったことである。旧民主党グループの多くは、要するに、ただ自分たちが、首相に、大臣に、政権与党の幹事長になりたかっただけなのだ。
小沢はつねにNO2を持ち場にした。自民党時代には、総理総裁にこそならなかったものの、党と内閣の主要ポストを占め続け、ほとんどの内閣のキングメーカーであったが、あっさり自民党を離党して、二度と戻らなかった。以後、長年、政権交代を唱え、一度は、細川内閣でそれを実現して見せた。
細川殿様内閣であれ、誰が「頂き」や「高み」に立っても、NO2として仕事ができればよいというのが小沢の立場である。小沢にとって、政権とは「頂き」や「高み」に登ることではなく、自らが理想とする改革や政策を実現するフラットな機会なのだろう。誰かがいっていたが、小沢は、「改革オタク」なのかもしれない。
しかし、合併前の旧民主党と旧自由党はジリ貧だった。政権交代はおろか、そのままいけば、解党の危機だった。合併後も、岡田前原両代表の下で戦った選挙は負け、小泉人気に圧倒されていた。小沢が選挙を仕切り、参議院をひっくり返したお陰で、「ねじれ国会」から地滑り的政権交代につながったわけだ。
しかるに、選挙対策委員長になった旧民主党の安住淳などは、朝のニュースショーなどに出演して、「民主党の伝統は若手でも政策に参加できることだった」など、旧民主党を現民主党にスライドさせる印象操作を盛んに駆使している。自由党など、最初からなかったかのように語っている。
また、「鳩山さんは、僕ら一年生議員にも政策の勉強をさせてくれた」などともいう。それは鳩山が鳩山家から持ち出した金にたかっていたに過ぎないが、そうした発言の狙いは、次の選挙だけに集中せよと「雑巾掛け」を命じられている小沢チルドレンの一年生議員に、秋波を送っているのだろう。
また、昨夜のNHK新内閣特番に出演していた、今度、政調会長になるというゲンバとかいう旧民主党も、「本来、民主党は生活者第一の党であったはずなのに、選挙第一の党になってしまった」と同様に小沢を批判した。現在の民主党は小沢の自由党を含めた民主党であるはずなのに、旧民主党だけを現民主党に重ねているわけだ。
つまり、「頂き」や「高み」という言葉づかいにはしなくも表れているのは、自民党に代わって政権を担う政権交代ではなく、旧民主党による政権奪取ということである。小沢側近の松木謙公は、「負けたら干されるのが政界に常ですから」と笑っていたが、対等合併であったはずなのに、吸収合併だったわけで、小沢と旧自由党グループは裏切られた思いだろう。
「改革オタク」の小沢率いる旧自由党が、政策的には一枚岩であるに対して、旧民主党は右から左まで政策的にはバラバラであることは周知のことだ。実権を握った旧民主党グループが、小鳩政権ができなかった改革や政策を前進させるならいいのだが、「小沢色を排除」して、いったい何をやるのか、いまのところまったく見えてこない。
俺は、「小沢色を排除」はマスコミのミスリード(誤導)かと思っていたが、本当に菅内閣と民主党の最大の課題らしい。すると、次の参議院選挙は、「小沢色を排除」を選挙民に訴えて民主党は闘うのか。今度は、小沢に議員辞職でも迫るわけか。たしかに、それが現在の民主党にとって、もっとも実現可能な「改革」ではある。
(敬称略)
現在の民主党は、周知のように、鳩山・菅の民主党と小沢の自由党が合併してできた。今回、小沢グループが排除されて、旧民主党が党と内閣の実権を握ったわけだが、小沢チルドレンの大量加入によって党内最大グループになった小沢グループに向けて、「政権交代は小沢さんのおかげだった」とマスコミの前でアナウンスして見せたわけだ。当の小沢は欠席していて、会場の「笑顔」と「拍手」は空回りに終わったのだが、このアナウンスの意味と効果について、誰でも以下のことに気づくだろう。
①小沢さんありがとう、これからは僕たちがやりますから、引っ込んでな。
②小沢さんありがとう、これだけ気を遣ったんだから、波風立てないでね。
③小沢さんさよなら、小沢グループの皆さんこんにちわ、なかよくやろうね。
もちろん、欠席していた小沢はこのようなアナウンスがされることは、事前にまったく知らされていなかっただろう。当人が欠席しているのを承知の上で、「過去の人扱い」のアナウンスをしてみせたのだから、菅直人と内閣、党の面々が会場に小沢の姿を探して、わざとらしく首を回して見せた仕種を含めて、きわめて無礼なことであった。出席していた小沢グループの面々は、怒りに青ざめたことだろう。
しかし、民主党内の勢力地図がどう変わろうと国民には直接関わりない。俺は、「小沢色の排除が内閣や党の最大の課題である」という論そのものを、「バカいってんじゃねえよ」といってきたわけだから、小沢が失脚しようがしまいが、それはかまわない。
問題は、語るに落ちた、ことだ。「頂き」でも「高み」でも、いずれにしろ、その言葉づかいに、万雷の拍手で応えた旧民主党グループが、政権に焦がれていたことが、はしなくも表れたことである。菅首相の誕生によって、旧民主党が天下を取った。その喜びに沸き立ったことである。旧民主党グループの多くは、要するに、ただ自分たちが、首相に、大臣に、政権与党の幹事長になりたかっただけなのだ。
小沢はつねにNO2を持ち場にした。自民党時代には、総理総裁にこそならなかったものの、党と内閣の主要ポストを占め続け、ほとんどの内閣のキングメーカーであったが、あっさり自民党を離党して、二度と戻らなかった。以後、長年、政権交代を唱え、一度は、細川内閣でそれを実現して見せた。
細川殿様内閣であれ、誰が「頂き」や「高み」に立っても、NO2として仕事ができればよいというのが小沢の立場である。小沢にとって、政権とは「頂き」や「高み」に登ることではなく、自らが理想とする改革や政策を実現するフラットな機会なのだろう。誰かがいっていたが、小沢は、「改革オタク」なのかもしれない。
しかし、合併前の旧民主党と旧自由党はジリ貧だった。政権交代はおろか、そのままいけば、解党の危機だった。合併後も、岡田前原両代表の下で戦った選挙は負け、小泉人気に圧倒されていた。小沢が選挙を仕切り、参議院をひっくり返したお陰で、「ねじれ国会」から地滑り的政権交代につながったわけだ。
しかるに、選挙対策委員長になった旧民主党の安住淳などは、朝のニュースショーなどに出演して、「民主党の伝統は若手でも政策に参加できることだった」など、旧民主党を現民主党にスライドさせる印象操作を盛んに駆使している。自由党など、最初からなかったかのように語っている。
また、「鳩山さんは、僕ら一年生議員にも政策の勉強をさせてくれた」などともいう。それは鳩山が鳩山家から持ち出した金にたかっていたに過ぎないが、そうした発言の狙いは、次の選挙だけに集中せよと「雑巾掛け」を命じられている小沢チルドレンの一年生議員に、秋波を送っているのだろう。
また、昨夜のNHK新内閣特番に出演していた、今度、政調会長になるというゲンバとかいう旧民主党も、「本来、民主党は生活者第一の党であったはずなのに、選挙第一の党になってしまった」と同様に小沢を批判した。現在の民主党は小沢の自由党を含めた民主党であるはずなのに、旧民主党だけを現民主党に重ねているわけだ。
つまり、「頂き」や「高み」という言葉づかいにはしなくも表れているのは、自民党に代わって政権を担う政権交代ではなく、旧民主党による政権奪取ということである。小沢側近の松木謙公は、「負けたら干されるのが政界に常ですから」と笑っていたが、対等合併であったはずなのに、吸収合併だったわけで、小沢と旧自由党グループは裏切られた思いだろう。
「改革オタク」の小沢率いる旧自由党が、政策的には一枚岩であるに対して、旧民主党は右から左まで政策的にはバラバラであることは周知のことだ。実権を握った旧民主党グループが、小鳩政権ができなかった改革や政策を前進させるならいいのだが、「小沢色を排除」して、いったい何をやるのか、いまのところまったく見えてこない。
俺は、「小沢色を排除」はマスコミのミスリード(誤導)かと思っていたが、本当に菅内閣と民主党の最大の課題らしい。すると、次の参議院選挙は、「小沢色を排除」を選挙民に訴えて民主党は闘うのか。今度は、小沢に議員辞職でも迫るわけか。たしかに、それが現在の民主党にとって、もっとも実現可能な「改革」ではある。
(敬称略)