今日の午後、都内にいくつもある小沢関係事務所のひとつに顔を出した知人の話。前日の電話で、「金集めを急がなくては」と呼びつけた相手方は呆然としていて、声をかけた知人に、「ヤメだヤメだ」と吐き捨てるようにいったそうだ。
小沢・鳩山グループは、不信任案に反対票を投ずる代わりに菅首相に退陣を迫る段取りだった。菅首相という猫の首に鈴をつける役には、鳩山前首相が手を挙げた。
午前中に官邸で行われた菅・鳩山会談で、菅首相が合意書に基づく退陣について、双方が合意をしたのを鳩山前首相は確認した。
そのすぐ後に開かれた民主党代議士会の場において、合意したとおり、菅首相は「一定の時期に退陣」を表明した。
それを受けて発言に立った鳩山前首相が、「不信任案反対」を出席者に呼びかけた結果、圧倒的大差で不信任案は否決された。
記者団から、「退陣時期」はいつなのかと問われた鳩山前首相は、合意書に書いてある、「復興基本法案の可決と第2補正予算案の提出」がメドとなる「6月いっぱい」と発言した。
それを聴いた記者の一人が、ただちに民主党の岡田幹事長に確認に走ったところ、岡田幹事長は、鳩山前首相の6月退陣説について、「合意は退陣の条件ではない」と即座に否定した。
「合意書に退陣の時期は書いていない。菅首相がいったとおり、東日本大震災の復興と福島第一原発事故の収束にメドがついてから、つまり(退陣の)時期は決まっていない」
岡田幹事長は、午前中に官邸で行われた菅・鳩山会談に同席していて、退陣時期を明記して合意書にサインすることを求められたが、拒否したという。この官邸会談には、鳩山前首相に平野博文元官房長官が同行したはずだが、会談に同席したかは不明。合意書の内容は以下。
確認事項
一、民主党を壊さないこと
二、自民党政権に逆戻りさせないこと
三、大震災の復興並びに被災者の救済に責任を持つこと
①東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案
(復興基本法律案)の成立
②第二次補正予算の早期編成にめどをつけること
誰がどうみても、鳩山・小沢側の完敗である。岡田幹事長の否定発言に対して、鳩山前首相は、「ウソです。人間ウソをついてはいけません」といったのが、敗北のダメ押しになった。
私は、菅直人と民主党執行部を少し見直した。政治家は、その政治的な能力が高ければよいのであって、人格識見がとくに優れている必要はない。そして、政治的な能力には、当然、権謀術策が含まれるものだ。
首相、来年1月まで続投示唆、「冷温停止まで私の責任」
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9C8197E09B9C99E2E68DE2E0E2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;at=ALL
東日本大震災の復興と福島第一原発事故の収束について、「民主党が一体となって」「与野党が一丸となって」「国民が心をひとつにして」、被災者や避難民の苦しみを救ってほしい、というコメントを識者や街の声としてよく聞かされる。
党内をまとめ、野党と合意成立し、国民の求心力を高めるのは、政治家の政治的能力によって実現されるものであり、それ以外のヨウ素やプルトニウムではない。
(敬称略)