NYの地下鉄で歌って小銭を稼ぐホームレスGeechee Dan 。歌っているのは、Otis Reddingの"I've Been Loving You"。俺なら、千円やるな。
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昨年も暑かったが、今年はさらに暑そうだ。そうめんと並んで夏の定番は、冷やし中華であることは論を待たない。そうめんと同様、冷やし中華も店ではなく、自宅で作って食べるものである。なぜなら、そうめん屋や冷やし中華屋などはないからだ。もちろん、ラーメン屋や中華料理屋で、9月まで冷やし中華を供する店は少なくない。しかし、ラーメン屋のそれは手抜きに過ぎるし、中華料理屋のそれは凝りすぎ。ボイル海老やキクラゲをのっけたゴマだれというのでは、冷やし中華とはいえない。冷やし中華の具は、キュウリと卵焼きの千切りとハムかチャーシューの三位一体に決まっている。最近、スーパーでは、錦糸卵とハムの千切りを冷やし中華麺と一緒に売っているが、そのうち、キューリの千切りも並ぶのではないか。こういうものを買う女とは、一分一秒も一緒にいてはならない。さて、麺は、麺はなんでもよい。シマダヤだろうがマルちゃんだろうが明星だろうが、198円ので充分。選んで買うべきなのは、チャーシューである。ハムでもよいが、筆者はチャーシューである。上質なものを探す。二人分作るとして、4枚くらいあればよいのだから、少し奢ろう。以上を買いそろえたら、できたも同然。失敗するのが難しいくらい。順序としては、まず、具をすべて千切りにする。そうそう、卵は1個、何枚か薄焼きにして、冷めてから切る。もちろん、キュウリも。これは一本の半分。わかりますか。具は少なめである。麺7:具3が黄金比率。この具を少なめに、というところが素人にはなかなか難しい。ケチっているのではないかと思われるのが業腹で、つい麺が隠れるほど盛りつけてしまう。6:4では、もうダメ。5:5なら、バカモノである。冷やし中華は、そうめんと同様に、冷たい麺の喉ごしを楽しむもの。具はあくまで彩りの添え物である。異なった食感と味と香りの絡まり具合を、口中において楽しむもの。したがって、キュウリだけ、チャーシューだけ、卵だけ、箸にとって別々に味わい食べてはいけない。重大なマナー違反であるし、冷やし中華の醍醐味を台無しにする。そんな女、あるいは男とは、一分一秒も食卓をともにしてはいけない。さて、具を切りそろえたら、湯を沸かし、正確にいえば、水を沸かすといわねばならないが、それでは熱や湯気が思い浮かばず、何か情けなくなるのはなぜだろう。麺をほぐしながら、鍋に入れるのだが、気をつけるべきは、茹で時間である。3分と説明書きにあれば、2分。短めにしよう。硬めはいけるが、茹ですぎは致命的だから。茹で上がったら、手早く、そして丁寧に水洗いし、軽く水切りをして、皿に盛りつけ、具をのせ、添付のつゆをかけて、はい、出来上がり。ではない。そのとき、食卓に、スパゲッティを食べるときのように、相伴する者は待っていなければならない。箸を持ってから、もうひと手間かける。私なら、和辛子を少しのせてからだが、麺と具を上下左右に豪快に混ぜ合わす。麺に具とつゆが混ぜ合わさったとみたら、おもむろにズゾッといくのである。そして、頬を膨らましたまま、ニッと顔を見合わせるのである。冷やし中華とは、必ず二人で食するものなのである。一人分は売っていないからである。
(敬称略)