コタツ評論

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骨がらみの客観報道

2011-12-19 01:42:00 | ノンジャンル
慰安婦は平行線=大統領「障害」、決着済みと首相
 -未来志向で一致・日韓首脳
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2011121800046&rel=y&g=pol

昨日(18日)のTVのニュースでは、1時間の首脳会談のうち、李明博大統領はなんと40分も、「従軍慰安婦問題」について言及したと報じていた。

異例というより、異常というほかないが、さて、李明博韓国大統領の来日に先立ち、つい数日前、NHKは日韓首脳会談をどう解説していたのか。

「アメリカとのFTA(自由貿易協定)や中国漁船の韓国海洋警察隊員殺傷事件に対し、弱腰外交と強く国内で批判されている李明博大統領としては、今度の日韓首脳会議で、従軍慰安婦問題について、多少なりとも触れざるをえないだろう」

つまり、弱腰外交という批判をかわすため、李明博大統領は国内向けに、渋々嫌々しかたなく、従軍慰安婦問題を話題に上げるだろう、だがそれは国内向けのポーズに過ぎず、形式的なものだ、そう日本国民に説明したということになろう。

次の3つに整理できる。

①日韓首脳会談のテーブルに、従軍慰安婦問題を上げることを
  既成事実化した
②しかし、従軍慰安婦問題に言及せざるを得ない、李明博大統領
  の苦しい国内事情への理解をうながした
③多少どころか、第一回会談は、ほとんど従軍慰安婦問題だけが
  テーマになった


①②③という順で読めば、NHKの解説はまったく的はずれだったといえる。②①③の順で読んでみれば、李明博大統領寄りが明白である。③②①という順で読み直すとすれば、ほとんど韓国の宣撫工作とさえ思える。

いつからNHKは韓国寄りになったのか。そんな批判が聞こえてきそうだが、私はその見方をとらない。NHKにとくだんの考えや目的があって、こうした「宣撫報道」になったのではない、と思う。

宣撫工作とは、いうまでもなく占領政策にともなうもの。1945年から1952年まで、歴史上はじめて日本は占領され、サンフランシスコ条約で独立後からいまも、日本の軍事外交は他国に握られ、実質的な占領状態が続いている。

当然、まず占領とその占領政策を隠蔽する必要があるが、そのためには日常的な宣撫工作が求められる。NHKをはじめとするマスコミは、宣撫工作の間接的な担い手なのだろう。被占領国の国営放送であるNHKには、拒否できない立場だ。

戦後66年の長きにわたり、NHKは他国のために、日常的に「宣撫報道」を続けてきた。そこでは、国民に現実上の選択肢を提示し、国益上の選択を迫るという報道機関本来の役割は、あらかじめ失われている。

先のTPP参加問題でも、野田首相が参加表明をする以前、9時のニュースでは、米韓FTAに合意した李明博韓国大統領のためにオバマ米大統領主催の晩餐会が開かれたと報じた後、NHKの解説委員は、悲痛な表情で、こう語っていた。

この間、鳩山、菅、野田など、日本の首相のために晩餐会が開かれたことがない、このままでは置いてけぼりにされかねない、と。たしかに、歴代首相は何度も渡米しているが、食事にも招かれず、ホワイトハウスのコーヒーだけふるまわれて帰されている。

占領国の支持不支持のサインが、報道に優先するのがよくわかる事例だ。TPP参加はすでに「国益上」避けがたいとし、国民に現実的な選択を迫るという転倒。自動販売機に硬貨を入れると、ゴトンとドリンクが出てくるように、宣撫報道はパターン化してしまった。

たとえば②など、李明博大統領だけでなく、アメリカのオバマ大統領はもちろん、ロシアのプーチン首相、中国の胡錦濤総書記、あるいはかの金正日総書記にすら、その「苦しい国内事情に理解をうながす」解説が、必ずつけくわえられてきた。

まるで日本には「苦しい国内事情」など何もないかのように、抽象的な国際社会に向けて日本の国益など度外視する姿勢。NHKはそれを「客観報道」と標榜してきた。それが宣撫報道の偽装に過ぎないことを忘れるほど、骨がらみになっているために、占領国以外にも同様な宣撫報道になるのではないか。

(敬称略)