コタツ評論

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女の掌には塩がある

2012-05-15 00:39:00 | ノンジャンル

サンドイッチに禁物は水気。パンは軽くトーストしたほうがよい。


最近、BLTサンドイッチを上手く作れるようになった。ツナサンドもなかなかいける。これまでずっと美味くなかったのに、どうしてか不思議。作り方を変えたわけではなく、パンとベーコンの質を上げたくらい。外食するのに比べれば、パンやベーコンくらい、高いものを選んでもたかが知れている。

昔、ちょっといいなと思った女史。忙しいから、作りだめしたサンドイッチを冷凍しておき、朝晩、解凍して食べているといったのを聴きとがめ、結婚したらそんなものを食わせられるのかと潮が引くように気持ちが冷めた。結婚する気などちっともなかったくせに、妙なことを思ったものだ。

いまから思えば、そのサンドイッチを食っておけばよかった気もする。サンドイッチはなかなか奥が深いのである(深くないか、おれが不器用なだけか)。

子どものころ、田舎のばあちゃんちで夏休みを過ごし、市民プールに行くとき、ばあちゃんはいつも梅干の紫蘇をまぶしたおにぎりを持たしてくれた。海苔も巻かず、具も入らない、質素なおにぎりだった。あるとき、おふくろから比べると、きれいだった叔母が帰ってきていて、ばあちゃんに代わってサンドイッチをつくってくれた。

細かく刻んだ、ハムとキューリやキャベツなどの野菜をマヨネーズで和えたのがはさんであった。紫蘇おにぎりに比べると華やかで、そのせいかとても美味かった。思い出して、たまに自分でつくってみるが、これがちっともうまくない。おにぎりと同様に、女の手でつくるからおいしいのかもしれない。ばあちゃんの紫蘇おにぎりも、やはり、いまつくってみると、ちっともうまくないからだ。こちらが子どもだったせいばかりでもなく、たぶん女の掌には塩があるからだろう。