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ぶっちゃけ

2014-01-28 07:18:00 | 政治
あらためて、籾井NHK会長の就任記者会見を視てみた。

もし、NHKの株が上場されていたら、連日ストップ安をつけただろう。三井物産副社長から日本ユニシス社長を歴任したにしては、信じがたい事実誤認と矛盾した発言が目立つ会見だった。とりわけ、安倍内閣を痛撃したのは、河野談話以来、日本政府の公式見解になっている従軍慰安婦の「強制的連行」を覆す以下の発言だ。

韓国は日本だけが強制連行をしたみたいなことを言うからややこしい。

安倍内閣は河野談話の「強制的連行」ですら覆そうとしているのに、反対に、より苛烈な「強制連行」に格上げしてしまったからややこしい。

韓国だけにあったと思っているのか。戦争地域にはどこでもあったと思っている。ドイツやフランスにはなかったと言えますか。ヨーロッパはどこでもあった。なぜオランダには今も飾り窓があるのか。

現代人(記者)の無知を指摘するために、「今の人は知らないだろうが、昔の人は靖国に帰ってくるといって戦争に行った」と靖国神社を解説しながら、先の大戦で日本が朝鮮と戦争したことはなく、朝鮮が戦場になったこともないという事実を知らない。

「戦時下のヨーロッパはどこにでもあった」の証拠は?と問われて、「なかったという証拠はあるのか?」と問い返す。籾井氏が議長役もつとめたはずの三井物産や日本ユニシスの経営会議では、いったい、こういうレベルの議論が交わされているのだろうか?

また、肝心要の経営方針についても、「放送法の遵守」を真っ先に挙げながら、「政府が右と云うものを、左と云うわけにはいかないだろう」という矛盾する発言。「放送法」を読んでいないか、読んでいても基本的なポイントを理解していないとしか思えない。こういう人が財界の中枢なら、日本企業の国際競争力が下落するのも無理はない。

NHK 籾井会長 記者会見


後日、会見でも繰り返していた「個人的発言」として、「不適当な発言」「不徳の致すところ」で収拾をはかっているが、安倍内閣は一刻も早く解任した方が得策だろう。官邸の指導力を発揮した実績にもなる。

公人が公の場において、個人の見解や意見を述べて許されるのは、そこに公式見解「以上」の知見や洞察が含まれる場合に限られる。独立した一個の知性や個性として、その洞見が尊重されてはじめて、「では、個人として、私人としては、いかがお考えでしょうか?」と尋ねられるもの。

籾井NHK会長の「ぶっちゃけ、戦場には売春婦はつきものだったわけよ」というのは、公式見解「以下」どころか、たいていの「見解」が回れ右して逃げ出す「本音」に過ぎない。「ぶっちゃけ、社員には、タダで働いてもらいたいくらいなわけよ」が経営者の「本音」だとしても、公私を問うはるか以前に、見解にはなり得ない。そんなことをいったいどこで誰に云うんだ? となる。

ところが、「ぶっちゃけ」という留保を使うことで、低劣な本音を個人の見解に格上げする「本音主義」という病症が蔓延した上に、どこで誰に? → ネットで! と場までが提供されてしまった。個人の見解を本音にまで溶解すれば、対となる公式見解も瓦解して、足許には不信しか残らない。「ぶっちゃけ、こき使うだけの会社なら、潰しちゃるけんね」という49歳給与額面19万円弱という契約社員が出てくるのも無理はない、ぶっちゃけ。

お口直しに、ブリア・スカンバーグさん。「ぶっちゃけ、美人で選んでいないか?」と訊かれたら、「心外です」とコーヒーを淹れに席を立つのが、俺の「公式見解」です。

Bria Skonberg--Make Me One Pallet.mp4

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