コタツ評論

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独り蚤とり悟り悟られ

2019-08-23 22:31:00 | ノンジャンル
専用の金クシで毛を漉いて、クシの間に挟まれてくる蚤を、台所用中性洗剤を数滴垂らした洗面器の水に掻き落とすという作業なんだが、かつて蚤のサーカス興行があっただけにけっこう敵も賢いのね。

横腹を漉いていたら、下になった反対側に逃げている。すかさずひっくり返して漉くも、すでに尻尾の根元に逃げている。顎の下にも。耳の裏にも。蚤とりの裏をかいてあちこちに分散して逃げ回る。生き残ろうとする蚤と逃すまいとする蚤とりの知恵比べである。

やがて、ほとんど知性を感じさせる生き物に思えてきて、少し恐ろしくなる。100匹以上の死骸と毛束が沈んで吐いた血でピンク色に染まった洗面器を見下ろして、これは虐殺だなと独りごちる。中性洗剤恐るべし。はじき落された蚤は瞬時に死ぬ。洗剤の裏面の取説を読むと、食器だけでなく、野菜や果物を洗えるという。

ちなみに蚤は大きいのと小さいのがいるのね。親と子どもじゃない。メスとオスである。「蚤の夫婦」というじゃない。昔の人はしげしげと蚤を観察する機会があったんだね。今は猫の蚤とりくらいの知見だろう。

コロコロ喉を鳴らしている猫をのけて、さあ、お次は誰の番かな。そうか、お前か。さあ、お膝へおいで。どれどれ、ここかな、ほら、いたいた、チーチーたくさんとれたね。殺戮の夜は明けない。

Joe Bonamassa - "I'll Play The Blues For You" - Live At The Greek Theatre


(敬称略)
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