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青年に訴う

2015-04-09 01:15:00 | ノンジャンル
学生よ、バイトはするな。親が高い金を出して買ってくれた貴重な時間を800円や1000円の時給で安売りするな!

小学校高学年から建築現場をの手伝いを手はじめに、学生時代を通じて肉体労働系を中心にいくつものアルバイトをしてきました。いま振り返ってみると間違っていたと思うのです。とくに、アルバイトすることに、なにか積極的な意味を見出そうとしていたのはひどい考え違いでした。

何か目的があってアルバイトをしたというより、手っ取り早く金を稼ぎたかっただけでした。無能・無力な自分から、目を背けるための安易で手軽な手段に過ぎなかったようです。すべて親がかりの同世代の友人たちとくらべて、きつい肉体労働にも根を上げない自分を自活・自立に踏み出しているものと誤解していました。

もちろん、働くことによって学ぶことはあります。働くことの意味や価値はそれなりにあります。しかし、それ以上もそれ以外もあるのです。もうすこしましな時間つぶしはいくらでもあったはずなのに、よりによって、時給で働くという否応のない未来の先取りをしてしまいました。働くことから学ぶことは後になっても、嫌というほどできます。また、学ばなくてもよいことも少なくないのです。

次にご紹介するのは、アルバイト学生が牛丼を提供し、アルバイト学生が食べる「すき家」を経営するゼンショーの記者会見動画です。強盗事件の多発や超長時間労働をにつながる深夜営業や一人で勤務する「ワンオペ」など、その過酷な職場環境が「ブラック企業」として社会問題化したのは記憶に新しいはずです。

その後、社外の労働問題専門家や弁護士などによる第三者委員会を設置して、劣悪な労働実態を明らかにした報告書を発表して注目を集め、問題となった深夜営業や「ワンオペ」について、改善にどう取り組んでいるのかを説明しています。

働くこと以外から学べる貴重な時間を安い時給で売るな。

という先の「おっさんの主張」を引っ込めるつもりはないのですが、かつておっさんが独り善がりのバイト学生だった頃とは隔世の感があります。かつておっさんは「バイト君」に過ぎなかったが、いまではアルバイト学生を、非正規雇用を主たる戦力とする企業が業界最大手にのし上がるまでになっています。顧客であり従業員でもあるアルバイターに対する「本気」がうかがえます。14:12秒からの小川賢太郎ゼンショー会長の話しを聴いてみてください。人間的迫力とカリスマ性を備えた企業トップをみるのは、ひさかたぶりです。

【ノーカット】「すき家」運営のゼンショー小川賢太郎会長 記者会見(2015.4.8)


「地上から飢餓と貧困をなくす食のインフラづくりがゼンショーのビジョン」

「トヨタに負けない、トヨタを越えるような、世界一の企業にしたい」

「300名の新卒採用者のうち、内定辞退者が一人もいなかったのは嬉しかった」


小川賢太郎会長は、都立新宿高校から東京大学へ進学するも、当時隆盛だった全共闘運動に参加し、その後、港湾労働者などアルバイトを転々とし、吉野家に入社、倒産を機に独立してゼンショーを設立しました。いわば、夢の実現に挑戦するアルバイターのロールモデルといえます。しかし、このおっさんは、安い時給で、労働のみならず、若者の夢を買っているともいえます。

(敬称略)



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