「やる気あんのか、てめえ」
「いきなり、なに怒ってんのよ」
「その格好だよ」
「おかしい? 似合ってない? ブラウスの色、合わない? そうならいって」
「おかしかねえよ、別に」
「そう、よかった。じゃ、なにが気に入らないのよ」
「そのジーパンだよ」
「ジーパンだって。ジーンズでしょ」
「うるせえな、おれは、おめえが、おしゃぶりくわえてた頃から、リーバイスの501とかはいてたんだ。ジーパンでいいんだよ」
「はいはい、そのジーパンのなにがいけないのよ。女の格好にケチつけるなんて、意外な人ね」
「その、人ねってのはなんだ。目の前にいるのに、どこかよそにいるみたいにいうな。そのうち、私って人は、とかいいやがるんだろ。てめえ、なに様だ」
「いちいちからむのね。いいわよ、なにが気に入らないかわからないけど、ご機嫌が悪いなら、今日はなしにして帰ってもいいのよ」
「ははあ、やっぱりそういうことか。はなからその気はなかったってえわけだ」
「なにがやっぱりよ。さっぱり、話が見えないんですけどね」
「てめ、この、澄ましやがって、見えるも見えねえもねえ、おれは見たとおりをいってるんだ」
「だから、なにをいってるのよ、なにが見えたのよ。じれったい人ね、さっさといえばいいじゃない」
「人ねって、また人っていったな。あ、じれったい人はいいのか」
「なに、空見上げてんのよ、頭よくないのに、考えたってむだじゃない。それより、あたしに、なにかいいたいんでしょ?」
「おめえ、おれをバカにしてんのか?」
「いいえ、バカにはしてません、バカだと思ってるけど。せっかく、はじめてのデートらしいデートだっていうのに、ブスってしてるから心配させてさ、いいがかりつけてさ、精いっぱいのおしゃれしてきたのに、あたしのなにが気に入らないのよよ」
「あ、泣いてんのか、ったく。たしかに、おめえと二人で出かけるのは、今日がはじめてみてえなもんだ。だからよ、ジーパンはねえだろって、そういってるんだ」
「だからあ、ジーンズのどこがいけないのよお」
「いけねえよ、全然、いけねえよ。色気もへったくれもねえじゃねえか」
「誰がへちゃむくれだって!」
「へちゃじゃねえ、へったくれって」
「あんたこそ、靴の底みたいな顔をしているくせに、よくもまあ、あたしのことをへちゃっていってくれたわね!」
「くっ、靴の底みたいな顔ってなんだ。靴の底って! そんなことはじめていわれた。おれの顔は靴の底みたいなのか」
「色気がなくてわるかったわね。どうせ、そうでしょうよ。もっと、色気があって、若くてピチピチしたのがいいんでしょ。そんなら、そっちへ行けばいいじゃない。ニタニタして手でも振れば、靴底と靴べらだわね」
「ちょっと待て、とりあえず、顔のことは横におこう。それから、若くてピチピチの肌のことも、いまはなしだ」
「ピチピチの肌なんて、あたしはいってない! あたしの顔をへちゃといったうえに、肌も張りがないとか、おばさん扱いするわけ? え、ちょっとあんた、本気でいってるの!」
「おれはそんなこといってねえぞ、一言もいってねえ!」
「いった」
「いってねえったら」
「絶対、いった」
「うるせえ口だな」
プハーッ
「な、なにすんのよ、こんな人通りで、他人が見てるじゃない! ほんとになに考えているのよ、あんたって人は!」
「これはなんだ?」
「なんだって?」
「これは右手だよ、靴べらじゃねえぞ。おめえにキスしてるとき、この右手はどうするんだ?」
「・・・」
「な、そんなジーパンじゃ、どこにも入れないだろ? 触れないだろ?」
「まあだ、わからねえか。じゃ、もう一度」
「もういい、わかったから バカ 」
「わかりゃいいんだ」
「お化粧なおしてくる」
「うん」
男と女の不都合な真実
「いきなり、なに怒ってんのよ」
「その格好だよ」
「おかしい? 似合ってない? ブラウスの色、合わない? そうならいって」
「おかしかねえよ、別に」
「そう、よかった。じゃ、なにが気に入らないのよ」
「そのジーパンだよ」
「ジーパンだって。ジーンズでしょ」
「うるせえな、おれは、おめえが、おしゃぶりくわえてた頃から、リーバイスの501とかはいてたんだ。ジーパンでいいんだよ」
「はいはい、そのジーパンのなにがいけないのよ。女の格好にケチつけるなんて、意外な人ね」
「その、人ねってのはなんだ。目の前にいるのに、どこかよそにいるみたいにいうな。そのうち、私って人は、とかいいやがるんだろ。てめえ、なに様だ」
「いちいちからむのね。いいわよ、なにが気に入らないかわからないけど、ご機嫌が悪いなら、今日はなしにして帰ってもいいのよ」
「ははあ、やっぱりそういうことか。はなからその気はなかったってえわけだ」
「なにがやっぱりよ。さっぱり、話が見えないんですけどね」
「てめ、この、澄ましやがって、見えるも見えねえもねえ、おれは見たとおりをいってるんだ」
「だから、なにをいってるのよ、なにが見えたのよ。じれったい人ね、さっさといえばいいじゃない」
「人ねって、また人っていったな。あ、じれったい人はいいのか」
「なに、空見上げてんのよ、頭よくないのに、考えたってむだじゃない。それより、あたしに、なにかいいたいんでしょ?」
「おめえ、おれをバカにしてんのか?」
「いいえ、バカにはしてません、バカだと思ってるけど。せっかく、はじめてのデートらしいデートだっていうのに、ブスってしてるから心配させてさ、いいがかりつけてさ、精いっぱいのおしゃれしてきたのに、あたしのなにが気に入らないのよよ」
「あ、泣いてんのか、ったく。たしかに、おめえと二人で出かけるのは、今日がはじめてみてえなもんだ。だからよ、ジーパンはねえだろって、そういってるんだ」
「だからあ、ジーンズのどこがいけないのよお」
「いけねえよ、全然、いけねえよ。色気もへったくれもねえじゃねえか」
「誰がへちゃむくれだって!」
「へちゃじゃねえ、へったくれって」
「あんたこそ、靴の底みたいな顔をしているくせに、よくもまあ、あたしのことをへちゃっていってくれたわね!」
「くっ、靴の底みたいな顔ってなんだ。靴の底って! そんなことはじめていわれた。おれの顔は靴の底みたいなのか」
「色気がなくてわるかったわね。どうせ、そうでしょうよ。もっと、色気があって、若くてピチピチしたのがいいんでしょ。そんなら、そっちへ行けばいいじゃない。ニタニタして手でも振れば、靴底と靴べらだわね」
「ちょっと待て、とりあえず、顔のことは横におこう。それから、若くてピチピチの肌のことも、いまはなしだ」
「ピチピチの肌なんて、あたしはいってない! あたしの顔をへちゃといったうえに、肌も張りがないとか、おばさん扱いするわけ? え、ちょっとあんた、本気でいってるの!」
「おれはそんなこといってねえぞ、一言もいってねえ!」
「いった」
「いってねえったら」
「絶対、いった」
「うるせえ口だな」
プハーッ
「な、なにすんのよ、こんな人通りで、他人が見てるじゃない! ほんとになに考えているのよ、あんたって人は!」
「これはなんだ?」
「なんだって?」
「これは右手だよ、靴べらじゃねえぞ。おめえにキスしてるとき、この右手はどうするんだ?」
「・・・」
「な、そんなジーパンじゃ、どこにも入れないだろ? 触れないだろ?」
「まあだ、わからねえか。じゃ、もう一度」
「もういい、わかったから バカ 」
「わかりゃいいんだ」
「お化粧なおしてくる」
「うん」
男と女の不都合な真実
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