「これ、おいしいね」
家人が感想を述べた。
「そうかい、それはよかったね」
私は答えた。
しばらくして、
「おいしいね、これ」
また言う。
「それはよかったね」
私も言う。
咀嚼する家人の口許を見ている。
「おいしいね、これ。家で自分でつくったの?」
目と唇をまるくして言った。
「ただ、焼いただけだよ」
「さっきから、おいしいって言葉を5回くらい言ったよ」
「覚えてない? 忘れた?」
「それとも、おいしいといわないと俺が文句言うと思ったのかな」
家人はウフフと笑った。
「そんなに頭は回らないよ。それに、おいしいって言ったの3度くらいだよ」
「そうか。それならよかった」
私は言った。
(止め)
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