軍事評論家の江畑謙介が亡くなった。享年60。冷静な語り口と特異な容貌のギャップで知られたが、対面してみるとハンサムといってよい端正な顔立ちだった。一度、話をしただけなのに、毎年、鷹(アメリカ)熊(ロシア)龍(中国)兎(日本)が組んずほぐれつする自作イラストの賀状を送ってくれた。
「原稿だけで食べていきたい」とTV評論家として有名になったことに顔を曇らす生真面目な人だった。結婚は遅かったが、嬉しそうな連名の賀状がきた。伴侶を得たというだけでなく、家庭を築ける収入にようやく達したという喜びも大きかったのではと推測した。大学教授やコンサルタント、会社員など食い扶持を確保しながら、ライターや作家をしている人には、「筆は一本箸は二本衆寡敵せず」の生活苦と滑稽味をとうてい理解できないだろう。
いつでもどこでも誰でも、まず食っていくことが最優先課題である。そのためには、何をしてもよい、という人もいるし、何をしてもよい、わけではない、あるいは、どうしてもできないことがある、という人もいる。できる、できない、どちらも、その人の能力の一部のように思える。江畑謙介は、できない、という能力があり、それが含羞の人柄に通じていたように思う。できない、のは恥ずかしいことだが、それは欠損ではなく、付加であるから、埋め合わせはできないのだ。
新聞やブログでいろいろな人が「エバケン」の早すぎる死にコメントを寄せている。おおむね好意的なものが多い。ライバルと目された小川和久は、何かコメントを出しているのだろうか。戦争報道の視点や論じかたでは対照的とされ、彼の尊大かつ迎合的なコメントを私は好まないが、軍事記事という「食えない」分野をともに筆一本で渡ってきた小川和久が、いちばん瞑目しているような気がする。
(敬称略)
「原稿だけで食べていきたい」とTV評論家として有名になったことに顔を曇らす生真面目な人だった。結婚は遅かったが、嬉しそうな連名の賀状がきた。伴侶を得たというだけでなく、家庭を築ける収入にようやく達したという喜びも大きかったのではと推測した。大学教授やコンサルタント、会社員など食い扶持を確保しながら、ライターや作家をしている人には、「筆は一本箸は二本衆寡敵せず」の生活苦と滑稽味をとうてい理解できないだろう。
いつでもどこでも誰でも、まず食っていくことが最優先課題である。そのためには、何をしてもよい、という人もいるし、何をしてもよい、わけではない、あるいは、どうしてもできないことがある、という人もいる。できる、できない、どちらも、その人の能力の一部のように思える。江畑謙介は、できない、という能力があり、それが含羞の人柄に通じていたように思う。できない、のは恥ずかしいことだが、それは欠損ではなく、付加であるから、埋め合わせはできないのだ。
新聞やブログでいろいろな人が「エバケン」の早すぎる死にコメントを寄せている。おおむね好意的なものが多い。ライバルと目された小川和久は、何かコメントを出しているのだろうか。戦争報道の視点や論じかたでは対照的とされ、彼の尊大かつ迎合的なコメントを私は好まないが、軍事記事という「食えない」分野をともに筆一本で渡ってきた小川和久が、いちばん瞑目しているような気がする。
(敬称略)