遠藤雷太のうろうろブログ
何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。




2024年上演5神戸常盤女子『653-0824』

2024/7/26

放課後の教室、校内ファッションショーに向け、生徒たちがウォーキングの居残り特訓しているうちに、一人が外国人技能実習生と付き合っていることがわかって言い争いになる話。

服飾系の話が昨年の春フェスから三作品目。

流行っているのか、前年の鶴岡中央『明日は救世主』の影響があるのかないのか。

ちゃんと演劇的に演出されたランウェイを見たいと思っていたのでよかった。

最後のほうに出てくる先生もかっこよかった。

高校生がああいう現場たたき上げ感のある先生を演じるのは大変だと思う。

異性装やトランスジェンダーの話にはならず、本作ではストレートな民族差別が題材。

差別意識と嫉妬がミックスしている友達。

迷惑な友達には違いないが、100%悪意とも言えず、単なる悪役を作らないようにする工夫を感じる。

観てるだけでイライラしてくる生徒たちから、だんだん愛嬌を感じるようになっていく話運びはうまくいっていたと思う。



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2024年上演3茨城県立下妻第一

2024/7/25

高校の演劇部が、過労起因で療養している顧問の先生を題材にした作品を作って、葛藤しながら稽古を進めていく話。

あえて前説から始めるドキュメンタリー調の語り口が新鮮。

現実にもそれなりに似たような状況がありそうで、ちゃんと「どこまで本当なんだろう」と思える程度に臨場感がある。

忌憚のない言葉選びも強く印象に残る。

高校生に「教師は忙しすぎる」という内容の作品をやらせる構図はスリリングではある。

ただ、作中では学校という業界全体がダメなのか、この職場限定でダメなのかがよくわからない。

極端と思われるやりとりもあるので、たぶん後者だ思う。そうであってほしい。

真に受けるのもそれはそれで教師に対して失礼な感じもするので、そこまで普遍的な話として捉えるべきではないのかもしれない。

当然、高校生である彼ら彼女らに、慢性的な人手不足を解決する策はない。

それでも、第一歩として現状に「NO」を示すのは大事なことだと思う。



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2024/7/27

・109歳で大往生を迎えたスエ子のお葬式で、誰が喪主をつとめるか、孫の里子を中心に関係者間でモメる話。

・豊平川の花火大会と重なったため、劇場外はものすごい人の数。早めに移動して開場時間ちょうどに到着。

・花火大会の高揚感にあてられたのか、久々のintroだからか、初日だったからなのか、始まる前から客席の雰囲気がかなり温まっている印象。

・前説の拍手から期待感が伝わってくる。

・タイトルロールかわいい。こういう一工夫が楽しい。

・自分自身、お葬式の運営に深く関わったことがないので、一般的な知識がないままに見始める。

・個人的に「喪主をやりたい」という感覚自体が共感できず、立ち位置的には序盤の里子に近かった。

・それでも、次々と頼りになるんだかならないんだかわからないライバルが現れるにつれ、里子に「喪主は自分しかいない」という使命感のようなものが生まれてくる。

・最初の二組以外は全員シードの不公平なトーナメント表を見ている感じ。最後に参戦する悦子が一番強い。

・里子はなかなか自分から動かないタイプの主人公で、序盤の悦子と連絡が取れない場面は、「悦子は頼りにならない」という描写のように見せて、実は「里子が悦子に依存している」描写だったのかなと思った。

・スエ子の顔を見に行くところでワンクッション置く演出がいいアクセントになっていた。素直に考えれば、身近な人の死を胃の腑に落とすための儀式のような感じ。

・最後、里子はちゃんと自分の中の弱さを認識して、祖母の顔を見に行ったんだから、もう喪主やらせてあげればいいのにと思った。あと一歩だった。現実は厳しい。

・町内会の山之内を演じる宮沢りえ蔵さんが相変わらず面白かった。具体的なプランは何一つ提案していない、ふんわりしたセリフだけで、あれだけ演技のバリエーションつけられるんだ。

・佐藤剛さんがりえ蔵さんを引っぱたくシーンでどこをどう叩いたのかというくらいすごい音がしてた。

・ひ孫が喪主のあいさつをする場合は、最初に自分の名前を自虐風に振っておいてから、「そんな名前でもひいばあは素敵な名前だと言ってくれた。だから、私はこの名前に誇りを持っている」でまとめれば、なんとかなると思う。

・最後の食卓を囲うシーンのおさまりの良さ。ノーサイドの象徴であり、打ち上げでもあり、お葬式という大イベントに向けてのエネルギー補給にもなっている。

(7/26 20時 シアターZOO)

※清二の子孫が気になる。



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北海道余市紅志高校『被服室の変』

2024/7/25

学校祭準備中、課題作成に取り組む男子生徒と、脚本を書きたい演劇部の女子生徒が、たまたま同じ部屋を割り当てられて、世間話を始める話。

知り合いの男女ではあるが、恋人ではないし、恋人になりそうもない、友達ですらない、お互いに対してそこまで関心の無い者同士の気の抜けた世間話が楽しい。

女子のほうの、プロの俳優だったら逆にできないような、独特のイントネーションもだんだんクセになってくる。

舞台上で実際にカタカタとミシンを操作している様子が斬新。

男子が延々と服飾の課題をやっていることで、どういう方向の話かはわかる。

無意識の差別表現や、おそろしくへたくそな寸劇(でもシュールでちょっと笑った)で不和がウヤムヤになっていく様子に不快感がなく、シンプルでスマートにまとめられていた。

実際、彼が演劇部に入ったら、今の悩みについては結構克服できそうな感じはするけど、別のストレスは増えるんだろうなと思う。



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2023上演④ 埼玉県立芸術総合高等学校「Midnight Girlfriend」

2024/7/24

中世の貴族風の男女が、幾多のすれ違い、障害を乗り越え、恋を成就させる話。

例によって録音環境の影響か聞き取れないセリフ多く、細かいことはわからない。

いきなりロミジュリ風のバルコニーが出てきてびっくりする。

象徴的な場所、ドア、廊下、高級そうに見えるソファと椅子。

デザインだけではなく、演劇としての機能性も高い舞台美術。

加えて他校と一線を画する衣装の作りこみ。

だてに校名に「芸術総合」をうたっていない。

演技はだいぶん様式的で、型にはまった演技は好き嫌いのわかれるところだけど、演技の質だけでもしっかり作品の世界観が構築できているのは大きい。

演者からも様式をつかいこなしてやろうという意思を感じるし、良い意味で個性の範囲だと思う。

今時その最後はどうなのと思わなくもないけど、話の組み立て方は良さそうだし、良い環境で観たかった。

カーテンコールをしっかりやるのも、作品の味になっていた。



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2024年上演1石川県立金沢商業

2024/7/24

演劇部の照明担当と脚本担当が、父親の介護で部活に来なくなった佐藤さんと語らい、そのエピソードを作品に反映させようとする話。

最初の場面は、(たぶん)テクリハの作業中、調光卓の前。

照明担当が、様子を見に来た佐藤さんと話をしている。

演劇部が出てくる作品はたくさんあるが、照明担当を中心に据えるのは渋い。

演者とは違うスタッフ目線での会話が生々しい。こういう会話、たしかに様々な調整室的な現場で行われている。

会話のテンポも配慮されていて聞き取りやすい。

中・後半は父親の介護とヤングケアラーの話。

アスベスト被害という言葉は久しぶりに聞いたような気がする。

石綿健康被害救済法の成立が2006年。思ったより最近だった。

法律ができたから話題にのぼらなくなったとも言えるけど、恥ずかしながら、もう過去のものだと思っていた。こういうことは他の分野でたくさんありそう。

そういう気づきを与えてくれる作品だった。



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2023上演③ 山形県立鶴岡中央高等学校「明日は救世主」

2024/7/23

ヒーロー的なものにあこがれる男子高校生が、文化祭発表用に男子用ドレスを着せられてランウェイに臨むまでの話。だと思う。

ジェンダー観、いじめ、ウクライナ情勢、ちょっと節操無い感じもするけど、色んな問題に目を向けている。

ウクライナ情勢で声を上げるのはアリだと思うけど、本作では、自分の足元の見えていない理想主義者として描かれている。

個人のリソースには限りがあるので、個々で興味のあることに声をあげるのは別にいいと思う。共感が得られるかは次の話。

いじめられていた子は、あそこまで言えたならホントにあと一歩だったのに勿体ない。

衣裳をすごく頑張っている。見せ場なので、もうちょっとしっかりランウェイ見たかった。現場だと見え方違うのかな。

演技の思い切りの良さはわかるし、テンション芸として笑えるところもあるけど、この年の作品は一律、結構な割合でセリフが聞き取れない。

録音環境が残念。



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2024/7/19

・密売人の事故でバラまかれたコカインで、アメリカクロクマがラリってしまい、様々な事情で森に入ってきた人たちを次々と襲う話。

・こういうジャンルの90分ちょっとの作品にしては、登場人物が多い。

・滝の絵を描きに来た子供たち、その子供たちを探す母親、コカインを回収しようとするマフィアたち、ただのチンピラ、森林レンジャー、刑事、医者。

・いかにもB級っぽい話なのに、それぞれがそれなりのエピソードを抱えていて、群像劇の雰囲気がある。

・普通、死ぬ役割の人は死んでも悲しくならないようにステレオタイプの人物設定にする。

・死に方は、コミカルだったり、ゴアだったり、うっかりだったり、多岐に富む。もはやクマに襲われて酷い目に遭う大喜利大会みたいになっている。

・早々に人が死ぬし、そのあともどんどん死んでいく。

・事情を抱えた人々がゴミのように死んでいっても、相手がクマ、言い換えれば大自然なので、思いのほか後味が悪くならない。そのへんのバランス感覚が絶妙。

・当たり前だけど、現実に襲われた経験のある人は観てはいけない。実際観る人がいるとも思えない。

・観る前からどんな内容か分かりやすい話なので、遠慮なく不謹慎のほうに振り切っている感じ。

・クマの習性に対する最低限の知識「逃げる者を追う」「奪われたものを取り返してはいけない」に忠実。

・そのうえで、「コカインを持っているものを優先的に襲う」というルールが加わっている。コカインベアはコカイン大好き。

・様々な事情を抱える人間たちを、上のルールに沿って、きれいに捌き切っている。

・特に最後。この事態の元凶は誰か。見ている人が、ちゃんとコカインベアを応援したくなるような構成になっている。これはすごい。

・一見、タイトルでオチがついているような安っぽい話なのに、脚本の人の技術が相当高い。ジミー・ウォーデン。

・頼りになるのかならないのかよくわからないおばちゃん森林レンジャーと、すぐ死にそうで意外と粘る医者の兄ちゃんが好き。

・たぶんあの距離だとライフルよりも徒手のほうが強い。

・なぜかカップルの名前がエルサとオラフ。アナ雪好きなのかな。

(PrimeVideo)



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2023上演① 香川県立高松桜井高等学校「Gifted」

2024/7/19

先天的に優秀な生徒が、安易なネット利用で大失敗している同級生たちを見て、友だちについて考えてしまう話。だと思う。

滑舌なのか会場なのか録音環境なのか、だいぶん会話が聞き取りにくい。

加えて専門用語が多く、動きが少ないため、あまり話についていけなかった。

とりあえず、登場人物が全員ケンカごしで会話している。

むかしむかし、寝室で毎晩両親が延々喧嘩していて眠れなかった幼児期の気持ちを思い出した。

彼女を引き立たせるためなのか、彼女以外の登場人物が全員一般的な高校生よりもかなり頭が悪そうに描かれている。

学校の先生も相当ひどい。セキュリティ上、生徒にパソコン渡したら絶対ダメだと思うんだけど、意外とそういうことやっている学校あるのかな。

ギフテッドってもう少し限定的な分野で天才なんだと思っていたけど、本作のヒロインは結構なんでもわかる。千里眼。

ウクライナの話題を出してみたり、近未来に対する悲観的な予想など、時事性も意識した作品だった。



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精華高等学校『鵲の橋で二度と会わない』

2024/7/14

夜の廃屋で関係性の定まらない高校生の男女二人などが語らう話。

夜の廃屋という組み合わせが持つ雰囲気に、場所、話題、二人の声質、うまく調和していて、名前の話、恋愛の話、かつての友人の話、対立要素がほとんどない会話なのに、しっかり緊張感が続く。

強いて言えば、一時間近くにおよぶ会話の積み重ねの果てに二人の淡い関係性がどこに行きつくのかという部分だけど、少なくとも見ている間は大きい要素ではない。

抑制のきいた掛け合いは玄人好み。

袖を使った唯一のギャグはおもしろかったけど、この雰囲気でよくこのギャグだけ残したなというくらいミスマッチではある。

装置の建て込みもしっかり雰囲気を出している。

全体として、夜と廃屋の掴みどころのないソワソワワクワクする感じをしっかり抽出し、いい感じの温度感に仕上っていた。



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