遠藤雷太のうろうろブログ
何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。




観劇三昧:ツキノウタ

2016/8/29

観覧車の事故が起きてから転落して死ぬまでのわずかな間、男が「死神」とともに時空の端から端まで飛び回る話。

前回の作品も一人芝居もそうだったけど、脚本の戒田さんは言葉に意味を重ねるのが巧み。

観覧車≒月→まるい→回る→輪廻。

まるいから分岐して赤い毛糸玉→赤い糸→編み物→親子と恋人の縁。

探せばいくらでもありそう。

回りくどいと言えば回りくどいけど、人からお金を取って人間を描くならこれくらい執拗にやんなきゃダメだとも思う。

ごく単純に滑舌が安定していて声の圧が強い。

前回より、死神の語りが聞きやすい。言い切り+接続詞でブレスする感じ。

そして、西原希蓉美さんの唄の、場を支配している感じ。

呪術的な感じと人間臭い感じが両立している。

動画の音が悪かったのは、ライブで観るときの楽しみにするべきということか。



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観劇三昧:満月動物園『ツキカゲノモリ』(2014年版)

2016/8/28

観覧車の事故で恋人を失った男に死神と疫病神と自殺魂なる存在、他人からは見えない三人が付きまとう話。

雰囲気は、浅田次郎の『憑神』っぽい。

小さめの舞台だけど、照明と音楽が気持ち良く手間がかかっている。

衣裳がおもしろい。赤い手形。ノボリの文字がわかりやすく達筆じゃないのもいい塩梅。

主演は片岡百萬両さん。

最初はあまりかっこよく見えなかったのに、話が進むとだんだんかっこよく見えてくるのは、はじめからかっこいいひとがそのままかっこいいよりもかっこいい。

一人語りでも話を停滞させない力量の高さと見せ方の巧みさ。

彼女側に不幸を背負わせすぎるような気もするけど、テンポ重視で気持ちよく見られる。

あと、「死んだ人間の届かぬ思い」というのは似たような構造の話を何度か書いているので、勝手に深く共感してしまった。



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役者は一日にしてならず
クリエーター情報なし
小学館

2016/8/26

映画史・時代劇研究家の春日太一による渾身のインタビュー集。

後書きの「長いこと最前線を戦い抜いてきた役者は、時代の証言者たり得ると同時に、人生の道標にもなり得る」という言葉通りの本。

業界の重鎮になっても、見えてくるのは役者という芸の道半ば感。

「ああ、素晴らしいと思っても、それが自分の中に取り入れられて昇華して、自分なりの何がしかになるまでに何年もかかります。ろ過する時間が必要なんです。」

夏八木勲の声で再生するとなお染みる。

役者の辛い姿勢こそ美しく見える、芸の好き嫌いはあっても汗をかいている姿はみんな好き、準備ができるのは売れていない期間だけ。

林与一さんの矢継ぎ早に繰り出される金言。

深作欣二監督のキーパーソンぶり。

少しでも役者続けたい人はみんな読んだらいい。

女優編も待たれる。

※なんもかんがえずに付箋を貼っていったらずいぶんカラフルになった。



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2016/8/22

・30分の一人芝居を1日で7作品見る。

・女性4人、男性3人。

・演者が女性の場合は人生または人生の一部を切り取って劇的に見せるやり方を採っているのに対して、男性は虚構を虚構として見せている傾向。(中嶋さんは例外)

・おぐりまさこさんの『如水』(じょすい)が強い。

・形式としては、母親を殺した娘が経緯を語る話。

・認知症で記憶を失う母の人生を振り返っていく。

・展開というより語り口がタダゴトでない。

・同一人物の若い姿と年老いた姿を交互に見せていくこと自体は良くあるやり方だけど、その表現力。

・演劇のお約束として切り替えているというより、周りの空気ごとねじまげていく感じ。

・CGでもこんなにうまく切り替えできない。

・中嶋久美子さんの『次の場所までさようなら』。

・yhsの南参さんにこの作品の存在を教えてもらって、楽しみにしていた。

・どこからどう見てもバレエダンサーの「白鳥」が、なぜか力士として出世していく話。

・相撲用語とバレエ用語の倒錯する様子が期待通りにひどくて笑った。

・「アン」「ドゥ」「トロワ」という掛け声が、そのまま「序の口」「序二段」「三段目」となる。

・相撲取りからのバレエへのアプローチは昔からコントであったと思うけど、その逆は珍しいと思う。

・それでも、このほとんど出オチのような設定で、30分退屈させずに見せられるのがすごい。

・声と語りに加えて動きの滑らかさ、要するに舞台役者としての基本性能が高いということなのか。

・あと、一人芝居は、その役者さんがお客さんに愛されることがとても大事。

・だからといって、愛されようとする姿勢が見え見えだと、かえってお客さんは引いていく。

・落語家にも通じる腹の据わり方、佇まいが求められる。

・愛されると言えば、澤田未来さんの『ミトモエワッカ』のおばあちゃん。

・ヨボヨボのおばあちゃんが、やりたいことに満ちあふれてるという話。まぶしい。

・最後のほうで客席のあちこちからすすり泣きの音が聞こえたのもやむなしだった。

パスコ はろうきてぃなごやん 5個入
クリエーター情報なし
パスコ

※『如水』の重要な小道具。

※中嶋さんの芝居が始まる前の暗転中にスマホだかタブレットだかの明かりを煌々とつけっぱなしにしやがったおっさんには恥を知れと言いたい。出のインパクトを半減しちゃうよ。

 

 



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2016/8/16

自分は将棋ウォーズで勝率5割をちょっと切るくらいのほぼ「見る将」だが、それでもプロ棋士の先生方を直接拝見したく行ってみる。

脚本書く時にどんなに煮詰まっても、「おまえはプロ棋士くらい一生懸命考えたのか?」と自問自答すれば、大体の場面でいかに自分がぬるま湯に漬かっていることを自覚できる。

なのでプロ棋士の先生方は尊敬している。

佐藤康光九段と野月浩貴七段の解説および山口恵梨子女流二段の聞き手スキルが高く、詰め将棋コーナーの参加も忘れ、ニコニコしながら掛け合いを聞き入ってしまう。

屋敷伸之九段もいらしていて豪華。男性陣はなぜかみんな日焼けされていた。

山口女流がニコニコ動画で観るより美人。

対局中の目付きや、相手の手に対して微笑んでいるところも、かっこいいし怖いし見とれる。

プロの対局もよかったけど、普段はネット対局ばかりなので、子どもからお年寄りまで、見ず知らずの人が思い思いに対局している様子も新鮮で楽しかった。

※俺も研鑽する。



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2016/8/14

・戯曲審査をしたので、決勝も関係者気取りで見に行く。

・ここまで書いたら乗りかかった船なので、ひととおり書くことにする。

・最初は宮川サキさんの『円山』。

・この教文短編フェス決勝をひとつの興行と考えると、本作のように、客席の雰囲気に惑わされず、手堅く盛り上げられる存在はとても頼りになる。

・干し芋のくだりが、昨日より長かったと思う。

・お客さんの反応を見て演技を微調整しているあたり、手練れの落語家さんのようだった。

・わんわんズさんの『恋はいつでも、レイアップ?』。

・フィジカルを活かした過剰なリアクションが楽しい。満場一致でダンクのシーンは笑える。

・実力は間違いなくあるのに、周りの人ほど楽しめていないのは何故だろうと考え込んでしまう。

・ひとつ思い当たったのは、自分自身、演劇を観るときには、そこまで「笑い」を求めていないということ。

・お笑い好きには信じがたいだろうけど、大部分の小説好きが小説に笑いを求めていないように、演劇好きにも無視できない割合でそういう人がいると思う。

・「笑いはそんなにいらないです」というタイプのお客さんに何を見せるのかが今後の課題になるのかも。

・TBGZさんの『6/13 no.502』。

・昨日より会話の連携がスムーズになっていた。

・しかし、戯曲で読んだ面白ポイントを結構取りこぼしていたような印象。

・お気に入りのパンのくだりとか、離婚届とつかまえてごらんのくだりとか、浮気話のときの立ち位置とか。

・まだまだ良くなりそうなのがもったいない。

・最後は東海連合の『そして、彼女は』。

・思春期をこじらせた女子高生が、憧れの先輩の前で自問自答を繰り返す話。

・実質、女子高生の一人芝居だが、全く声を出さずにバレエっぽく動く「先輩」「その彼女らしき女」が出てくる。

・女子高生の「語り」に対して、先輩が「ダンス」でリアクションするさまが、とてもシュールで笑ってしまう。

・それも、「女子高生が期待する歪んだ理想の先輩像」と考えれば物語上の必然性もあって、思いつきだけで作っていないように見える。

・最後は意味わかんなかったけど、それも含めて楽しかった。

・結果、東海連合が優勝。

・観客投票方式なのにアウェーで勝ってるんだから、これは本物としか言いようがない。

※東海連合というネーミングが関東豪学連みたいで怖い。



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2016/8/13

・戯曲審査をしたので見に行く。

・元審査員としての反省もこめて、普段より辛めのことも書くけど、お許しいただきたい。

・アトリエさんの『綺れい』、もう少しかっこよく語れる想像をしていた。脚本が面白いだけにもったいない。

・イチニノさんの『第2回もう帰りたい選手権』、題材の採り方には賛否あるけど、チャレンジはできていたと思う。

・前回よりもセリフがきちんと聞き取れていた。声は生きているうちに上げるもんだ。

・票が取れてなかったのは残念だけど、第三回も見たい。

・劇団820さんの『世界』は、脚本→俳優→演出のリレーが全演目を通して一番うまくいっていた。

・セリフも理屈ではなく情緒で緊張感を作れるのが強みで、演劇としての完成度は頭ひとつ抜けていた。

・父親であらねばならないという決意は、呪いにもなるという話と解釈した。怖い。

・あと、自分には今回の20分くらいがちょうどいい。

・決勝進出のTBGZさんの『6/13 no.502』は、ブログで「一読して本選に残るべき作品」と書いてしまった手前、見るほうも気が気じゃなかった。

・紹介VTRであらすじを読み上げていたのがほんとに残念で、知らない人は知らないまま観たほうが絶対楽しい。

・雲の劇団雨蛙さんの『Too Late springs!!』。脚本段階では、バスを待つ二人を同一人物として見せるのかと思っていたら、別人として見せていたので混乱。

・宮川サキさんの『円山』。こういう作品の良さを脚本段階で見抜けるようになりたい。

・ゲラゲラ笑う感じじゃないけど、身ひとつで舞台上に花見の空気を作りあげる演技力。どこの北島マヤだ。

・落語はオチが大事という意見には同意できず。落語のオチはかなりの割合で地口。

・えんさんの『影二つ。』は「総合芸術ユニット」の持ち味が出ていた。

・紹介VTRも札幌勢の中では一番良くできていた。

・わんわんズさんの『恋はいつでも、レイアップ?』。食い気味にお客さんが笑っている印象で、自分自身はなかなか面白さの波に乗れず。

・ラーメン屋さんでラーメンを頼んだのにチャーハン出された客のような観劇感。

・ゲスト審査員の南参さんの「バーカ(笑)」という「はたしてそれは評と言えるのか」という評が一番芯を食っていた。



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2016/8/12

女子高生の小泉さんが、ラーメン屋通いをするドラマ。

クールでミステリアスな小泉さんが、色んなラーメン屋で薀蓄を披露しつつ、恍惚の表情を浮かべるだけの話。

鉄道マニアにも通じる、お湯切り音やすすり音だけを楽しむ文化とか、実際にやってる人いるんだろか。

小泉さん役には早見あかり。

恍惚の表情を浮かべるシーンが見せ場になるんだけど、どうしても取って付けたように見える。

演技力の問題なのか、演出の問題なのか。 たぶん長い時間見せすぎ。

小泉さんの追っかけ役、美山加恋がかわいい。

自分自身、そんなにラーメンにこだわりがあるわけじゃないので、出てくるラーメン屋で知っているのは「ラーメン二郎」くらい。

これで人生の何かが変わる感じではないけど、たまにこういう緩い話を見たくなる時がある。

そういうとき、面白さはむしろ邪魔だったりする。作り手も意図的にやっているのかも。



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大空港 Airport 1970

2016/8/11

空港に集う人々が、それぞれの持ち場で大きなトラブルを乗り越えようとする群像劇。

前に見た『ハッピーフライト』と同じような構成だけど、こちらは1970年。元祖。

元祖のほうがトラブルが派手で、たぶん航空会社はスポンサーになっていない。

序盤は短いシーンのつなぎ合わせで、誰が何をやっているのかよくわからない。

『グランドホテル』でもそんな感じだったので、群像劇の定石らしい。

雪かきの地味シーンの曲にやたらと煽られる。

客室乗務員の制服が色っぽい。

クォンセット婦人がかわいらしい。

彼女の演技内演技が楽しい。

構造としてはわかるけど、細部で考えるとどうやって情報集めて組み立てているんだろう。

単純に2-2とか2-9とかいう言葉がポンポン出てくるとリアリティが深まる。

スケールを目いっぱい小さくして群像劇の習作を書いてみたい。



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2016/8/10

夫であり父親である男が、妻を殺した娘と一緒に暮らす話。

二人芝居。26分。

視覚効果が凝っている。

装置はすべて新聞紙で装飾。

大黒の代わりに新聞紙を整然と並べている。

遠目で見ると格子のように見えるので、親子の食卓なのに牢屋のような閉塞感がある。

娘の影に父親が取り込まれるようなところ、写真、秒針の音、演出のテンポがいい。

準備に時間のかかる装置が使いにくい短編演劇祭で、安っぽくならないように工夫している。転換が早そう。

父親から見ると娘が怪物にしか見えない。

ジェーン・スーさんの書籍を思い出す。

子は鎹という言葉があるけど、いま両親と娘の組み合わせだと、妻(母)が鎹になることが結構あるみたい。

どうやってまとめるのかなと思っていたけど、最後は理に落とさず、情でまとめている。



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