Zooey's Diary

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縞模様のパジャマの少年

2010年05月18日 | 映画
2008年イギリス・アメリカ映画。マーク・ハーマン監督

ナチス将校を父親に持つドイツ人少年と、強制収容所内のユダヤ人少年との
友情と哀しい運命を描いた人間ドラマ。

父親の転勤で引越しした郊外で、一人ぼっちのドイツ少年ブルーノ(8歳)は
好奇心から「農場」(彼はそう思ったが実は収容所)に近づき、
有刺鉄線の向こう側にいる自分と同じ年齢の少年のシュムールに
無邪気に声をかけます。
「なんでパジャマを着ているの?
 その数字は何? 何の遊びをしているの?」
高い有刺鉄線を挟んで二人の少年が向き合う上の写真が、
この作品の内容を実に上手く表わしています。

この作品に対する批判には、共感する部分もあります。
強制収容所の鉄条網に高圧電流も流れず、見張りも立たず、
あんなに簡単にやり取りができるということが、まず信じられない。
ネットのレビューを少々読んでみたら
いかに世間知らずといえども、8歳の少年が収容所のことを何も知らないというのも
あり得ないのでは、という意見がいくつも見られました。
しかし…
日本でも、戦時中、ことに敗戦色が濃くなってから
大本営が発表する”戦況”は嘘八百であった。
でもそれを知っていたのは軍の幹部だけで、殆どの国民はそれを真実だと思っていた。
ナチス独裁下のドイツでも、言論統制は十分あり得たことだと思うのです。
ことに高級将校であり、収容所でユダヤ人の虐殺を実際に行っていたブルーノの父が
自分のしていることを息子に知られたくなくて、真実を隠したということは
たやすく納得できるのです。

ナチス将校の父を持つブルーノの家に、ナチ関係者が何人か招かれて
ビデオを鑑賞するシーンがあります。
それは、ナチスが強制収容所内の様子を紹介するビデオなのですが
驚いたことに、そこではまるでリゾート施設のような施設を映し出しているのです。
収容所内のユダヤ人は皆、綺麗な色とりどりの服を着て(縞模様の囚人服ではなく!)
音楽やガーデニングなどの趣味を楽しみ、なんとカフェまでもがあるのです。
実際に収容所に入ったことのないナチの軍人達はそれを見て満足し、
少年ブルーノはそれを盗み見て、収容所とは楽しい所だと信じ込んでしまう。
その結果、どんな残酷な結末が待っていたか…

このエピソードが事実であったかどうかは知りませんが
言論統制の恐ろしさ、無知であるということの恐ろしさを
今更ながらに実感します。
そうして無知ゆえに起きてしまう悲劇。
衝撃の結末については、本当に言葉がありません。
設定に多少の無理があろうと、そんなことはどうでもよくなります。
ナチスが行った、民族大量虐殺という人類史上稀に見る残虐行為の非道さ、
そして真実を直視しようとしない大人のずるさ、それ故に起きてしまう悲劇の重大さが
ずっしりと伝わってくるのです。

ジョン・ボインによる原作”THE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS”は、
アイルランドで長期間ベストセラーとなり、30か国以上で翻訳出版されたのだそうです。
これは読んでみなくちゃ…

縞模様のパジャマの少年
コメント
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