
結婚生活50年を迎えた老夫婦が、おんぼろキャンピングカーで旅に出ます。
夫ジョン(ドナルド・サザーランド)はアルツハイマー病、妻エラ(ヘレン・ミレン)は末期癌。
エラが再入院する筈だった日に黙って家を出てしまったものだから、
近くに住む息子や娘は大慌て。
彼らは米国北東部ボストンの自宅から、最南端フロリダを目指すのです。
車のラジオからはジャニス・ジョプリンの「ミー・アンドボビー・マギー」が流れます。
「自由ってことは失うものが何もないってことよ」と。

元文学教授だったジョンは、まだらボケ状態。
徘徊し、小便を漏らし、自分が誰なのか何処にいるのか分からなくなったりする。
しかし昔の教え子の顔を覚えていたり、ヘミングウェイ論をウエイトレスに滔々と語ったりする。
50年前のエラの恋人のことをしつこく嫉妬したりもする。
エラはそんなジョンを気丈に世話しながら、旅を楽しむのですが…

最悪だったのは、ジョンがエラを、昔の不倫相手と間違えて語りかけたこと。
エラは夫の浮気を初めて知って激高し、とんでもないお仕置きをする。
それまでの様子を見ても、エラは決して黙って耐えるようなタイプの女ではない。
彼女の人生も結構主体的に、やりたいようにやって来たのでしょう。
ジョンも然り、知性とユーモアを持った誇り高い男で、この旅の最終地点は
キーウエストにある、ジョンの敬愛するヘミングウェイの家なのです。

そんな二人であっても、老いと病は情け容赦なく訪れる。
知性もユーモアも体力も、残酷に確実に奪って行く。
キーウエストに着いて、エラは遂に倒れる。
救急病院に搬送されるエラですが、病院を抜け出した彼女が選んだ道は…
東海岸の陽光溢れる道をひた走りながら、テンポよく展開される様々な事件を
楽しんできたので、まさかああいう展開になるとは驚きました。
でもエラは、最初から覚悟していたのでしょうね。
なんとも切ない、重い結末でした。
ドナルド・サザーランドの実年齢は83歳、ヘレン・ミレンは73歳だそうです。
原題は「The Leisure Seeker」、これはあのキャンピングカーの名前であるらしい。
公式HP http://gaga.ne.jp/longlongvacation/