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カンヌ国際映画祭で本作が上映された際には、上映後10分間に及ぶスタンディング・オベーションが
起こったのだそうです。
1995年、ボスニア紛争停戦直後のバルカン半島の山岳地帯。
マンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)が所属する「国境なき水と衛生管理団」は
井戸に死体が投げ込まれ、水が使えなくなってしまった村に赴く。
苦労して死体を引き上げようとするが、古いロープは重みで切れてしまう。
やむなく、武装集団が徘徊し、あちこちに地雷が埋まる危険地帯を
1本のロープを求めて彷徨うことになる。
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この話は停戦後の世界で、派手な銃撃戦や血が流れる殺戮の光景は出てきません。
では平和な世界かといえばとんでもない。
国連やNATOの介入によって「今日から停戦」なんて言われても
昨日まで人種や宗教の違いで殺し合っていた人々が、いきなり仲良くなれる訳がない。
停戦とは名ばかりで、殺戮、凌辱、盗難、なんでもありです。
井戸に死体が投げ込まれたのも、水の密売ビジネスを企む犯罪組織の仕業であると。
井戸の底に沈む、ぶよぶよの腐乱死体の姿は、画面に何度も出てきます。
そんなものが投げ込まれた井戸の水、仮に死体を取り出したとしても、
もう二度と口にしたくないのじゃないか、
そう思うのは恵まれた国に住む我々の思考であって、砂漠地帯に住む連中には
待ったなしの死活問題であるらしい。
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国籍も年齢もばらばらの5人の「国境なき水と衛生管理団」はロープを求めて
武装集団に脅されながら、泥だらけのジープで走り回る。
たった一本の山道を塞ぐように、牛の死体が転がしてある。
その死体をよけて通ろうとすると、そこには地雷があるのだと。
牛の右側か左側、どちらを通るべきか(どちらが死ななくてすむのか)?
現地の一人の少年の力を借りて、ようやくの思いでロープを見つけるが
そのロープの先には、何日も腹を空かせた猛犬が繋がっていた。
爆破された少年の家で見つけたロープの先には、もっととんでもないものが。
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こう書き連ねると、どうしようもなく絶望的な話のようですが
そこにビー(ティム・ロビンス)の自虐的なユーモアや、
女性にだらしないマンブルゥの女とのゴタゴタ、そして新人であるソフィの
ヤル気に満ちた勇み足などが絡まって、面白おかしく進んでいくのです。
そして終盤、呆気に取られる結末が…
現地の住民の事情を無視した、国連などのお役所仕事の不合理さは
何処も同じということか。
コメディタッチで話を進めて戦争の残虐さ、不条理さを浮かび上がらせる手法は
お見事としかいいようがありません。
原作は「国境なき医師団」に所属する医師でもあるスペイン人作家パウラ・ファリスの小説「Dejarse llover」(雨を降らせて)なのだそうです。
映画の原題は『A perfect day』。
公式HP http://rope-movie.com/
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