私はこのギレルモ・デル・トロ監督の作品「パンズ・ラビリンス」に
10年ほど前に打ちのめされたのです。
で、本年度のアカデミー賞作品賞を取ったこの作品に大いに期待していたのですが…
冒頭、何の説明もなくヒロインのイライザが自慰をしているシーンで
息を呑みます。
彼女は耳は聞こえるが、話すことができない。
首に酷い傷が残っており、どうも幼少の頃、親に虐待されて捨てられたらしい。
この女優サリー・ホーキンス、何処かで見た顔だと思ったら
「ブルー・ジャスミン」の、自分に自信がなくて男にだらしない妹役。
誰もが認める美人女優をヒロインに選ばなかったという点でまず、面白い。
で、イライザは毎朝卵を茹で、自慰をし、政府の秘密研究所の清掃員として働いている。
孤独な彼女の友人は、売れない画家でゲイのジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)と
同じ清掃員で黒人のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)。
冷戦下のアメリカ、残忍な軍人のストリックランドがヒール役として登場。
彼らの秘密研究所に、アマゾンで神と崇められる半魚人が捉えられてくる…
その半魚人とイライザとの恋愛物語。
こう言ってしまえば身も蓋もないのですが
無論、それが上手く成就するわけがない。
冷戦下の敵対国ソ連からのスパイも送り込まれ、
思うように事を運べないことに、ストリックランドの残虐性が爆発する。
抑圧された人々がファンタジーの世界に逃げ込み、圧倒的権力と闘う、
そういう意味では「パンズ・ラビリンス」とも共通していた訳ですが
あの自慰のシーンやストリックランドのベッドシーンはどうして必要なのだろうとも
思ってしまう。
いずれ生きているものの生々しさ、グロテスクなまでの悲哀を描きたかったのか?
半魚人とイライザとのそのシーンは、逆に幻想的なまでに美しいのです。
虐待されて口が利けなくなった社会的弱者、ゲイ、黒人、そして半魚人。
荒唐無稽でありながら、今流行りのLGBT映画の一つという気がしないでもない。
多様性への賛歌ということは分かるのですが
「パンズ・ラビリンス」ほどには私の心には響きませんでした。
「シェイプ・オブ・ウォーター」http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/
#welovegoo