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レバノンの首都ベイルート、アパートのベランダで花の水やりをしていたトニーは
下で道路工事をしているヤーセルに水をかけてしまう。
謝る、謝らないで口論となり、それがどんどんエスカレートして行く。
暴言から暴力となり、警察沙汰、裁判沙汰となり、マスコミも騒ぎ出し、
遂には裁判の日に軍隊まで出てくる騒ぎとなる。
それもその筈、トニーはキリスト教のレバノン人。
ヤーセルはイスラム教のパレスチナ難民。
二人はそれぞれに、長らく殺し合っているという民族の背景を背負っていた。
お互いに親や家族を殺されたり、故郷を追われたり。
おいそれとは謝罪できないという事情がある。
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それにしても、初めにヤーセルが言った言葉「クソ野郎」は分かりやすいが
次にトニーが放った言葉「シャロンに抹殺されりゃよかったのに」は
日本人には、少なくとも私には、どうしてそれがそんなに暴言になるのか分かりません。
しかしそれはヤーセルにとっては、実に許しがたい、
それを法廷で証言しなかったからという理由で自分が不利になっても
口に出せないという、決定的な言葉だったのです。
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シャロンって誰?
分からないままに話はどんどん進んでいく。
しかもその言葉がいたる所でキーワードとなって来る。
それが分からない人間は観るなということかと、腹が立って来る。
しかも、この男たち、あまりに切れやすいし、年中苛立っている。
元はと言えば自分がうっかり水をかけたのが原因であるのに
トニーは徹底的に攻撃的で自分の非を認めないし、
ヤーセルは寡黙だが協調性がなさすぎる。
大統領が出て来て仲直りさせようとしても、二人は頑なに否定する。
ああ、こりゃもう駄目だと思って観ていくと…
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不意に、赦しが訪れるのです。
すべてはここに至るまでの伏線であったか。
大きなカタルシスに全身が包まれます。
パレスチナ難民問題に疎い私のような人間であっても。
敏腕弁護士も軍隊も大統領もさせられなかった「和解」を
二人がどうやってしたのか?
是非、御自分の目でお確かめください。
ちなみにシャロンというのは、1982年のレバノン侵攻を指揮したイスラエル国防相であるらしい。
面白かった。
今年の映画ベスト5に決定。
レバノン出身のジアド・ドゥエイリ監督は、難民としてアメリカに逃れ、
タランティーノ監督の撮影助手をしていたといいます。
この作品は、自身の体験に基づいて描いたのだそうです。
レバノン、フランス映画。原題は「Insult」(侮辱)。
公式HP http://longride.jp/insult/
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