
凄い映画です。
冒頭からラストまでの2時間、緊張させられっ放し。
話がどう展開するのか、まったく先が読めない。
ミズーリ州の田舎町の道沿いに、中年女性ミルドレッドが三枚の看板を立てた所から話は始まります。
「私の娘はレイプされて殺された」
「まだ犯人は捕まっていない」
「何故なの? ウィロビー署長」

悲嘆にくれる犠牲者の母親と、やる気のない警察との闘いの始まりかと思いきや、さにあらず。
このウィロビー署長というのはとんでもなくいい人で、町中の人から慕われている。
片やミルドレッドは下品で傲慢で、誰にでも当たり散らす嫌な女。
三枚の看板は、当事者だけではなく、町の人たちが抱える様々な問題をも浮き彫りにしていく。
マザコンで人種差別主義者の巡査ディクソンなども加わって…

犯人捜しのサスペンスものかと思いきや、そうではない。
人種差別主義者を糾弾する社会派作品かと思いきや、そうでもない。
さっきまでどうにもしようがなかった悪人が
何かのきっかけで、とても良い人になったりする。
世の中の善悪は完全に棒引きすることはできない、
白黒を単純に色分けすることはできないといったところか。

「怒りは怒りを来す」という言葉が中盤以降、何度も登場しましたが
人を変えることができたのは結局、怒りではなく、赦しと愛だった。
あの強烈に嫌な男だったディクソン巡査が、火だるまになりながら
レイプ事件のファイルを抱えて警察署から飛び出すところ。
彼が火傷で、ミイラのような全身包帯の姿になって病室に入った時、
ディクソンによって半殺しの目に遭った広告会社のレッドがしたこと。
あのシーンには、泣けました。
脚本も手がけたマーティン・マクドナー監督は、
20年ほども前にアメリカで実際にこのような看板を目撃したことから
この話を練り上げたというのに驚きました。
ちなみに「レイプして殺された」というのは「Raped While Dying」というらしい。
憶えても役に立ちそうにない英語ですが…
公式HP http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/
#welovegoo