日本と中国、日本と韓国、その原始人達の争い
人間の本質的な能力に学習能力がある。
赤ん坊は、大人達が話をするのを「口まね」しながら言葉を学習して行く。
この「まね」をする能力が学習能力の基本になる。「まねる→まねぶ→まなぶ」と古い日本語は変化して来た。
古代社会以前、有史以前から、人間が生きて生活している社会・共同体の中で、この本質的な能力がトラブルを起こし続けて来た。
お互いに「まね」をし合う事でお互いが次第に似てくる現象が起こり、自分と他人の「区別がつかない」混同状況が出て来る。
やがて「自分は自分であり他人と違う」という明確化のために、 他人を憎悪し排除しようとする近親憎悪が起こる。親と一体化して育ってきた子供が、親と自分を区別するために親を憎悪し、自分と親を切り離そうとする「反抗期」が、心理学では、この現象に該当する。
1つのファッションが流行すると皆が同じファッションを「まね」し始め、皆が「同じ」になって来る。自分と同じファッションをしている人間を人間は決して好きにはならない。「誰もみな同じカッコウをして」と憎しみの感情を抱く。
アラン・ドロンが主演した「太陽がいっぱい」という映画では、金持ちの青年と常にいっしょに遊び歩き行動している貧しい青年が、金持ちの青年の「まね」をしている内に、自分がその金持ちの青年だと混同し始める。「自分が2人いるのはおかしい」と考え始めた青年は、最後には金持ちの青年を殺害する。近親憎悪の典型である。
精神分析学では、お互いが「鏡に写ったソックリな状況」という意味で「鏡像段階」と呼んでいる。
この「鏡像段階」は、社会全体に相互憎悪を引き起こす。
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有史以前から、人類社会の中では、この相互憎悪が「万人の万人に対する殺し合い」に発展し、共同体が壊滅する事態がたびたび起こって来た。そうした経験を「積んだ」人間社会は、1つの解決策を発見した。
「万人の万人に対する殺し合い」を万人の1人に対する殺人へと集中させ、「殺意を発散解消」させる事にした。リンチ殺人であり、魔女狩りであり、それを定式化したものが延々と続いて来た「イケニエ」の儀式である。
2012年現在でも、皆がサラリーマンとなり「同じ生き方」をする「鏡像段階」の現代社会で、定期的に特定の芸能人の私生活を暴き、悪人として「祭り上げ」、徹底的に叩くリンチ報道がマスコミによって行われている。
皆がサラリーマンという「鏡像段階」社会の相互憎悪、殺意を「1ヶ所に集中させ、解消させて」いる。
この集団リンチ=イケニエの儀式の残虐さを少しでも緩和するため、人間のイケニエはやがて「イケニエの羊」として動物に置き換えられ、さらに人形等を破壊するシンボル的な殺害に置き換えられた。それを最も抽象的な「ただのお話」にまで「文明化」し、「リンチの生々しさ」を忘れさせながら「リンチによるストレス解消と社会秩序の安定」を入手出来るように「公式化」したものが、キリストの十字架ハリツケというリンチ殺人の「物語」である。
実際のリンチ殺人であれば、そのストレス解消効果は1年程度は保てるが、キリスト教は単なる「リンチ物語」でしかないため、その効果は長続きしない。毎週教会に行かなければ、その憎悪、殺意感情のコントロール効果は持続しない。キリスト教社会で、「毎週教会に通わない人間は不信心から悪事を行う」と噂される事には、合理的な根拠があった。
哲学者ニーチェが著書「ツァラトゥストラかく語りき」で「神は死んだ」と言った時、ニーチェは、キリスト教の持つ、この暴力コントロール機能がもはや機能しなくなり始めた事を指摘していた。暴力コントロール機能が作用しなくなれば、当然、暴力が噴出する。
ニーチェは、晩年の著書「権力への意志」の中で、「万人の万人に対する殺し合い」が復活する事を予言した。ニーチェは、アドルフ・ヒトラーの出現を予言し的中させた。
「汝の隣人を愛さなくなった」人類は、古代社会の「万人の万人に対する殺し合い」に先祖帰りする。憎悪のターゲットは常に、「自分と顔の似ている隣人」であり、鏡像状態にある隣人である。どれ程、文化・生活習慣・宗教が異なっていても数千キロ先の他民族同士の間で民族紛争が起こる事はない。紛争は相互に顔の似ている隣人同士の間で起こる。尖閣諸島をめぐる中国と日本、竹島をめぐる韓国と日本。「顔の似ている隣人同士」の間で紛争が起こっている。
暴力を用いず、冷静沈着な利害関係の調整を行う事で問題解決が可能であるにも関わらず、人類が数万年間繰り返してきた紛争から「何も学ばず」、暴力を用い、怒声を上げ、他国の国旗を焼く、争いを好む原始人達の愚行が続いている。
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