香り立つ 鉄砲百合の相席に ご馳走(箸染)越しの 比良の山々
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君待つと 我が恋ひ居れば 我がやどの 簾動かし 秋の風吹く
額田王
秋風一夜百千年。共にする秋風の一夜は価百年、千年。春
は「花」(滝廉太郎)の歌詞に顕れるように、「錦おりな
す長堤(ちょうてい)に/くるればのぼる/おぼろ月/げ
に一刻も/千金のながめを何に/たとふべき」と対照的な
「紅葉」(高野辰之)の「 溪(たに)の流に散り浮く紅葉
/波にゆられて離れて寄つて/赤や黄色の色さまざまに/
水の上にも織る錦」の歌詞が自然と浮かび流れる。
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釈迦といふ いたづらものが世にいでて おほくの人をまよはすかな
一休宗純
とはいえ、秋は内省の季節、反省頻りでメランコリから非
定型鬱症に落ちるかと言えば、そうはならないだろうと楽
観している。刈り終えた田畑の秋風が頬を過ぎる時、人を
詩人に変えているからだが、気温の降下が影響しているの
ではないかとも思う ^^;。
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精神分析学者ジークムント・フロイトは「悲しみ」(悲哀、
喪)と「憂鬱」(メランコリー)を区別した。愛する者や
対象を失って起こる悲哀の場合、時間をかけて悲哀(喪)
の仕事を行うことで、再び別の対象へ愛を向けられるよう
になる。これに対しメランコリーは、愛するものを失った
悲しみは悲哀と共通するが、「愛するもの」が具体的なも
のではなく観念で、対象を失った愛は自己愛に退行し、や
がて愛は憎しみに変わり、憎しみが高まり自責や自嘲が起
こるというが、フロイトはここに自殺の原因をも見ている。
現代の心理学では、憂鬱(メランコリー)の概念は鬱病
(デプレッション)と同義とされている。

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鉄砲百合(学名 Lilium longiflorum)は、ユリ目ユリ科ユリ
属の多年生草本球根植物である。ラッパに似た形の筒状の
花を横向きに咲かせる。丈が 50cm~1m 程度に生長し、楕
円形で長い葉をつけ、葉脈は水平方向に入る。花長は 10~
15cm、直径 5cmほど、花弁が6枚あるように見えるが根元が
つながり筒状。雌雄同花である。
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母のショートスティで休養の彼女とクサツエストピアの「
梅の花」へ。シルバーウィークということで1時間ほど予
定時間より遅れ食事に。湯葉と豆腐の創作懐石料理店。そ
のため魚肉料理が極端に少ないコース「梅の花膳」をいた
だくことに。特に嶺岡豆腐(=牛絡:牛乳と生クリームを
葛で固めた物)は印象的。
湯葉煮、茶碗蒸し、お造り(マグロと長芋合わせ)、とう
ふしゅうまい、湯豆腐、生麩田楽、湯葉揚げ、湯葉グラタ
ン、デザートなどフルコースで全カロリーで1140kcalと健
康的。「豆腐シューマイ」が気に入りテイク・アウトする
ことに。部屋から琵琶湖の西岸の比良山系が眺望でき景観
は抜群。夜になると夜景が美しいだろうと思いつつ歌を書
く。らっぱに似た花の「テッポウユリ」。花言葉は「純愛」。

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東シナ海、黄海、渤海から日本海にかけて分布するエチゼ
ンクラゲにウマズラハギ、皮剥という天敵がいるとは知ら
なかった。ウマズラハギは皮剥に比べ味が劣るといわれて
いるが実感はない。刺身は河豚に似ているが河豚以上に美
味しい。ならば養殖ということだが、共食い対策、食餌方
法で収量を大きくすれば問題ない。実際、養殖ものの方が
肝が美味しい言われているので、食糧とクラゲ繁殖抑制の
両面で「システム生育」事業として有望だ(河豚毒禍の心
配はない)。

それじゃ、エチゼンクラゲを食用化出来ないかというと、
「エチゼン=福井」のイメージダウンを逆手に、巨大クラ
ゲをキャラクター化し、福井県立小浜水産高等学校と北陸
ゆつぼ本舗との共同研究し「えくらちゃん」クッキーを、
また、越前本舗では「潮 羽二重餅」を開発販売している。
旧聞だが理化学研究所と信和化工株式会社は糖タンパク質
のムチンを発見し医薬品としての研究開発を行っている。


技術が確立したら中国現地で共同事業化すれば良いではな
いかと思う。矛盾があるから進歩を育む。そうポジティブ
に考えていくと面白いではないか、実に面白い。
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冷蔵庫などなかった古代に動物性タンパク質の保存の知恵
として生まれた。コイやフナなどの川魚に飯を混ぜ、重石
をして数ヶ月〜数年保存する。乳酸発酵作用によって酸っ
ぱくなり、飯は半ば流状化してしまうので、魚のみを食べ
る。これが古い形のナレズシである。くさややドリアン同
様、異臭食品で、慣れないと独特の臭気が鼻を突くが、食
べ慣れると臭気を感じにくくなる(ボツリヌス菌が繁殖し
やすいので注意が必要)。
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実をいうと、宮世話での話題として必ずといって良いほど
なれ鮨の作り方が話題となる程好きな連中が多い。なれず
しは「ホンナレ」と「ナマナレ」、中間の「ハンナレ」に
分類でき、漬け込んだ米を食べるか食べないかという点で
も異なる。ホンナレでは漬け込む期間が長く、魚の体内体
外に一緒に漬け込まれた米が乳酸発酵によって流状化して
米粒の実体がかなり失われることもあって、米は食べない。
ナマナレは漬け込む期間が短く、魚と一緒に漬け込まれた
米が流状化する前に米も魚と共に食する。
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それでも、メジャーになれないのは独特の臭いと骨など食
べにくさが障害となっているから。仲間のひとりがハスズ
シの試作を家から持ってきたので試食。味はそこそこで問
題ないが、堅さのムラと食べ難さが問題となる。(1)作
り方の技量はそれこそ、熟れ(ナレ)の問題だが、(2)
食指をうながすには、前発酵及び発酵プロセス開発(香り)
が課題ということで、またの寄り合いの話題に。
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