師走に残った印象
【架台改良技術】
自然エネルギーの全量買取制度のスタートを控えて太陽光発電の導入が進
むなか、施工費の高コスト化の要因とされてきたモジュール架台は、今後
どのように変化していくのか。これまで架台設置の際に必要とされてきた
コンクリート製基礎は、工期が長くコストも高いため、できるだけ使わな
い方向になってゆくとみられている。現在、太陽光発電システムを導入す
る際に架台のコストは全体の10%前後と言われているが、これから架台の
簡素化が進みさらにコストダウンしていく。
上写真左から、貯水タンク式据え置き型、タッピングパイル工法型、GF
RP基礎架台型、下写真左から、マグネット式架台、シンプル・レイ工法
型、ディスク工法型
始まる再生可能エネルギーの全量買取制度が追い風となり、自然エネルギ
ーの代表格である太陽光発電の導入が加速するとみられている。と、同時
にモジュールや周辺機器のコストも低下しているなか、高止まり傾向にあっ
た設置工事費も下降し始めている。その理由の1つが架台の多様化がある。
従来、モジュール架台の設置にはコンクリートの下地を造成して固定する
煩雑な基礎工事が求められ、それに必要な人件費や工期の長さが高コスト
につながっていた。屋根に穴を開ける陸屋根の場合には、防水加工が求め
られ、場合により何トンにも達する荷重負担に対するメンテナンスなども
コストを引き上げてきたが、最近は産業用、住宅用ともにコンクリート製
の基礎工事を必要としない様々な架台が登場し、コスト軽減に貢献するよ
うになってきている。キーワードは、軽量化と工程の簡略化。例えば、陸屋
根用の架台では円筒形の連結ディスクを屋根下地に取り付け、そこに架台
を取り付けるディスク工法がある。20kWのモジュールを設置した場合、従
来工法で使用される基礎コンクリートの重量は4トンにもなる。この連結
ディスクの総重量は100kgに及ばず1/40の軽量化する。この軽量化は、
建物に対する負荷の軽減と設置作業の短縮そしてコストダウンに直結して
いる。漏水問題も、既存の下地にマンションの防水改修にも使用される専
用の防水層をかぶせ、その上にディスクを固定するので大きな心配はない。。
また、これまでモジュールや架台の点検時の、1台1台モジュールを取り外
し点検しまた設置するという手間が、可変式架台の場合、モジュールをフ
レームに固定せず、上下に開閉できるようになっているので、モジュール
のメンテナンスや、一般的に10年から15年で必要になる屋根の防水改修が
容易になる。
陸屋根用には、FRP(強化プラスチック)素材の架台もある。この架台の 住宅用の架台にも変化が。従来工法では屋根に穴を開けて架台を設置する
特徴は軽量化と強度。例えば、後のページで紹介するFRP製架台はコンクリ
ート基礎を屋根に敷き詰めるのではなく、キューブ状の架台を必要な数だけ
屋根下地に固定する。この架台1つの重量は57kgで、同サイズで比較した
場合、コンクリート製架台の3分の1の重量になり施行も1日、2日程度で
完了する。工期短縮かつ環境配慮型の地上架台地上に設置する場合も、新
型架台の登場で簡素化と低コスト化が進んでいる。また、鋼管を地中に打
ち込み、架台の基礎柱とする鋼管杭工法は、コンクリート基礎を造成する
工法と比べ、掘削、残土処理、コンクリート養生などが全て不要で、工期が
大幅に短縮され注目を浴びている。また、従来では設置が難しかった軟弱な
地盤や傾斜地でも設置できる。移設や撤去が必要な場合も杭を抜くだけで
簡単に原状回復でき、長期的に見てもコストダウンにも繋がる。
必要があったのだが、施工不良によって雨漏りする事故が表面化し、問題
になり、そのリスクをヘッジするための新たな工法が登場し、注目を集めて
いる。太陽光発電の総電力量の80%超を住宅用が占める。当然、各メー
カー間の競争が起きモジュールや周辺機器の価格が年々下がってきている。
設置工事費だけは、2002年から昨年までの9年間、約10万円/kWで横ばいが
続く。
今年4月1日、栄住産業が発売を開始したのが、全メーカーのパネルに対応
するマグソーラーシステム。金属防水加工を施した屋根に着磁補強板を接
着し、そこにマグネットを取り付けたソーラーパネルを設置するこれまで
にない工法だ。屋根に穴を間けないので雨漏りの心配がなく、軽量なので
屋根に対する荷重の負荷もないうえ、パネルの取り外しも簡単でメンテナ
ンスの手間がかからない。また、使用する磁石は1つで40kgの吸引力を持
ち、20年経っても7%しか磁力が落ちないという永久磁石を使用。同社の試
験では風速50メートルの風力、300ガルの揺れでも問題ないことが確認され
ている。屋根以外の様々な屋根に設置できるという。
ところで、太陽光パネル生産量は、いまでは、ドイツに抜かれ、いまや中
国に抜かれ、中国の独走体制になりそのことが国家間での貿易摩擦となっ
ている。中国と米国の間での軋轢は、20数年前の自動車を巡るそれと似通
っている(このときの問題解決は現地生産により緩和されている)。この
ていたらくはひとえに政治家と専門家(国家官僚)に帰するところ大なり
というところだが、半導体、液晶パネルの流れを反省し戦略を練れば必ず
二の舞は踏まないだろうというのがわたしの“独り勝ち戦略”なのだが、
今日はこんなところにしてまた改めて適宜記載していこうと思う。