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極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

ヘーリオスの長征

2011年12月02日 | デジタル革命渦論

 



【百花繚乱 ヘーリオスの長征】

株式会社カネカはIMEC(ベルギー)と共同で銀フリーの高効率ヘテロ接合
シリコン太陽電池を開発しました。ヘテロ接合シリコン太陽電池では、集電極
の形成に、銀のスクリーン印刷技術が用いられているがこの手法では銀電極の
低抵抗化と細線化が困難であること、高価な銀を使用することにより高コスト
の要因となっていた。今回の銀フリー手法では、銀のスクリーン印刷を銅エレ
クトロプレーティング(電解析出)で置き換えることで、低抵抗化と細線化と
大幅なコストダウンを実現。銅エレクトロプレーティングによる集電極形成に
ついてはヘテロ接合シリコン太陽電池への適用は世界で初めて。銅エレクトロ
プレーティングは、経済的かつ工業的に実証されたプロセスであり、銀のスク
リーン印刷の弱点を克服できるだけでなく、さらに高い変換効率の実現及び大
幅な製造原価の低減が図れとしている(2011.11.28)



そこで、どのような方法で銅の電解析出しているのかネット検索をするもそ
れらしいものがヒットしない。手前味噌だがわたしのデータベースの「太陽
電池構造体と製造法
」 (特開2011-142127)程度が妥当ではないかと一旦保
留することとした。しかし、カネカの新規考案には酸化亜鉛の電解析出法を
使った薄膜ヘテロ接合シリコン系太陽電池の凹凸反射効果を高めることで太
陽光を閉じこめ有効利用する工法が記載されているのだが(この方法の元の
技術はかって岐阜大学との共同開発の経験を有す)、極薄平面に均一に酸化
亜鉛を析出することは至難の技なのだが、対象基板の表面抵抗をできる限り
抑えることで問題解決しているので、下記にその実施例の要点を抜粋掲載す
る。

 特開2011-243633


【符号の説明】

1 透光性基板 2 透明導電層電解析出用電極層(電解析出用電極層)
2A 透光性基板の主表面における外周縁部の全部または一部の領域に形成さ
れた外周縁部電解析出用電極層(外周縁部電解析出用電極層)
2B 透光性基板の主表面を複数の領域に分割する実質的に直線状の互いに平
行な一以上の線状の中心部電解析出用電極層(線状中心部電解析出用電極層)
3 第一の透明導電層 4 第二の透明導電層 5 電源接続用部材
6 透明導電層付き透光性基板 7 半導体層 8 裏面電極層 
9A 透明導電層分離溝 9B 半導体層分離溝 9C 裏面電極層分離溝
10 セル隣接境界領域 
W1 外周縁部電解析出用電極層が形成されている領域の幅
W2 隣り合う二つの線状の中心部電解析出用電極層の間隔




ガラス基板の透明導電層に、数μmから数10nmのサイズの微細凹凸構造を
設け入射光の散乱を増加させ変換効率を上げる方法は、低圧CVD法、ナノ
インプリント法、ケミカルエッチング法、電解析出法があるが、光を散乱さ
せるためには微細凹凸のサイズは光の波長と同程度であることが望ましいが
数μmオーダーの凹凸を形成することのできる電解析出法は、800~1200nmの
波長領域の光散乱効果に優れ、
電解析出法を用いることよりステンレス基板
上に平均粒径が0.4~1.2μmの酸化亜鉛結晶粒の表面形状を有する透明導電
層が作製できる。

【実施例】

まず厚み1.8mm、125mm×60mmのガラス基板の中央部に50mm×50mmのマスクに
外周縁部電解析出用電極層をスパッタリング法で酸化亜鉛を90nm、Agを200nm、
酸化亜鉛を90nm順次製膜し、低圧CVD法で酸化亜鉛を主成分とする第一の
透明導電層を形成。製膜チャンバーに搬入し基板温度を160℃温調後、水素
を1000sccm、水素で5000ppmに希釈されたジボランを280sccm、水を400sccm、
ジエチル亜鉛を200sccm導入(チャンバー圧は20Pa)
、膜厚2μmの酸化亜鉛
を主成分とする第一の透明導電層を堆積する。

 

次に、電解析出法で酸化亜鉛を主成分とする第二の透明導電層を製膜。対
極電極125mm×60mmの亜鉛板を用いた。第一の透明導電層が形成された透明
導電性基板と対極電極との間は8mmとする。絶縁テープを外周縁部電解析出
用電極層の形成領域に貼り付けることで、外周縁部電解析出用電極層が形
成されていない 50mm×50mmの領域にのみ製膜する。電解析出に用いられる
電解液は硝酸亜鉛濃度を0.1mol/Lとし、添加剤として、デキストリン濃度
を0.15g/Lフタル酸水素カリウム濃度を40μmol/Lに調整した水溶液とした。
電解析出時の水溶液温度を80℃、電流密度を4mA/cm2として、膜厚3μmの
酸化亜鉛膜を製膜することで、電極距離と関わりなく均質な膜厚が得られ
るという。 



技術と工学と実用との三角関係は実に複雑だ。特に工学と実用との関係は
なおさらで、電解析出法、真空析出法、常圧析出法(印刷法)の優劣を判
断するには、加工対象、加工手段、加工素材、環境制御の因子×水準をで
きる限り押さえ込みながら、仮説を構築して実験を繰り返す、そしてやっ
と最適解らしきものが得られたとしても、前提条件が崩れると(それは外
部情報によりもたらされることが多い)、またやり直さなければならない。
なによりも、需給バランス、品質、コスト、社会自然環境(外部不経済費
用)などの諸条件を満たしての話だが。それは長い、長い長征の旅だ。そ
うやって漸く満足できるものと出会えたなら果報者といわけだ。

 



時には気の重い本も読まなければと手に取ったもの内挿された写真をまと
もに凝視することができない。

 
 1986年に起こったチェルノブイリのたった1つの原子炉の爆発は、地 
 
球上の半分の地域に放射性降下物を拡散させた。それにもかかわらず、
 原子力が経済的で、クリーンかつ安全な、魔法のようなエネルギーを
 生み出すという絶えざる宣伝文句が世界各地で止むことはない。原子
 力発電の発電コストは、電力1キロワット・時当たり約2セントとさ
 れる。天然ガスが4セント、風力、水力、石油が7セントであること
 から、原発の発電コストは低いと喧伝される。しかし、このコストは
 最も低く見積もった場合のものである。

 なぜなら、これは発電所の運営費だけに基づいているからだ。この値
 には、発電所の建設費、放射性廃棄物の管理、生産サイクル終了後の
 解体費用が含まれていない。中規模の原発の建設費は約15億ドルであ
  る。稼働開始から約30年が経過すると、プラントは物理的な寿命を迎
 え、解体が必要になる。解体には少なくとも建設と同等の費用がかか
 る。たとえば、フランスのエクセレンテーフエニックス原子炉の解体
 コストの総額は24億ドルと見積もられている。原発の経済効率を訴え
 る主張には、根本的な欠陥があるのである。
 
 しかしそれは、数千年にわたって危険な状態が続く核廃棄物の保管の
 問題と比べれば取るに足らない。アメリカエネルギー省は最近、同国
 におけるこの問題の解決策を明らかにした。現在全米各地に保管して
 いる最も危険な放射陛物質を、ネバダ州北部のユッカマウンテンの巨
 大な地下貯蔵庫に移動し、そこで集中的に処理するという計画だ。ユ
 ッカマウンテンは、ラスベガスの北西160キロメートルの位置にある。

 原子力発電所は通常、年間10トンの放射陛廃棄物を生産する。アメリ
 カではこれまでに5万トンの放射陛燃料が使用され、プルトニウムの
 生産によって3億5000万リットルの高レベルの放射性廃棄物が排出さ
 れた。大量のプルトニウム、50万トンの劣化ウラン、数百万立方メー
 トルの汚染器具(金属、衣類、オイル、溶剤、他の廃棄物の破片)、ウラン
 の加工による2500万トンのウラン廃棄物が生じた。この量を一度に積
 載するには、赤道を越える長さの列車が必要になる。
 
 ユッカマウンテン貯蔵庫についてのアメリカの提案は2002年2月に受
 け入れられた。費用は莫大で、オペレーションは極めて複雑だった。
 地形の事前調査のために70億ドルが使われ、貯蔵庫の建設費として少
 なくとも580億ドルが見込まれている。さらに、現在は39州131施設に
 保管されている放射|ヽ生物質を輸送するという問題がある。輸送のた
 めには4600台の列車とトラック、および警察と軍による警護が必要だ。
 
 目的は、廃棄物を永久に隔離することである。アメリカは、それが数
 十万年を要するものであることを知っている。あるいは、人類はそれ
 以上長くは存在しないと考えているのかもしれない。現在、アメリカ
 が理解する放射性物質の保管期間よりも長い間、放射能を漏らさすに
 格納できることを保証する素材は見つかっていない。放射性廃棄物の
 格納に使用されるニッケル容器は、非常に高価なものであるにもかか
 わらず、500年も持ちこたえられないだろう。

 また、地質学的に見ても、地層が容器の安定性を絶対に保証できると
 いう科学的な証拠はない。むしろ、その逆である。地殻は絶えず動き
 続けており、保管している核廃棄物に影響を与え、帯水層や地表に四
 散することが予測される。アメリカエネル
ギー省は、アメリカが今後
 70年から100年で、放射性廃棄物の処理のために1兆ドルを投じると
 試算している
。原子力産業にとっては、大いに喜ばしい知らせだ。原
 子力産業はこれまで、原子力エネルギーの正当性を主張するためにコ
 ストの低さを盛んに訴えてきた。しかし、実際には、原子力発電は他
 の発電方法よりも最大で10倍もコストがかかるのである

 原子力発電では、表面的なコストやメリットばかりが語られる。しか
 し、本当のコストは1000年単位で測らなくてはならない。放射陛物質
 の有害性はそれだけの期間持続するからだ。放射能は、何世代にもわ
 たって子どもたちに癌を生じさせる。電気によって明かりは灯っても
 人びとは自らの真の不幸を知ることはないのだ。過去50年で原発によ
 って生じた環境被害は破壊的である。放射陛物質はいまなお秘密裡に
 第三世界に送られ、地下に埋められたり、海洋に投棄されたりしてい
 る。それができない場合は、一時的に地上に保管される。

 アメリカには保管のための主要エリアが10ヶ所ある。ワシントン州の
 ハンフォードでは、数十年間にわたって放射性物質が廃棄され、1450
 平方キロメートル内の住民には高い癌の発症率が見られる。ヨーロッ
 パでは、イギリスのセラフィールド(ウィンドスケール)、ウィンフリ
 ス、ドーンリーの原子炉が、1950年からアイリッシュ海に何百万リッ
 トルもの放射陛物質を投棄してきた。今日、アイリッシュ海は世界で
 最も汚染が酷い海域だと見なされている。1950年から1963年にかけて
 イギリスは大量の放射陛廃棄物を北海に投棄した。また、フランスの
 ラ・アーグにあるウラン再処理施設は、英仏海峡に大量の放射性物質
 を投棄した。

                    ピエルパオロ・ミッティカ
                  「核エネルギーの真のコスト」
           (原タイトル『Chernobyl the hidden legacy』)


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いまさら懺悔もなにもないけれど、かって技術者のはしくれであった者と
して、いや、これからも技術者のはしくれ担おうとしている者として「技
術者としての良心」は失いたくはと打ちのめされながら誓う。

                              


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