A Challenge To Fate

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家具の音楽の循環定理~アンビエント・ミュージックの元祖エリック・サティ

2012年07月02日 00時32分32秒 | 素晴らしき変態音楽


7月1日はフランスの作曲家エリック・サティの命日だった。
19世紀後半~20世紀初頭にかけて活躍したサティは「音楽界の異端児」「音楽界の変わり者」と称されていたが、後の西洋音楽に大きな影響を与えた。ドビュッシー、ラヴェルも「その多くの作曲技法はサティによって決定づけられたものだ」と公言している。

ピアノ曲「ジムノペティ」はいろんな映画やテレビのBGMに使われて有名だが、これが当時は現代音楽の最先端として語られていた事実を知らない方が殆どだろう。アート界でいえばゴッホ、ムンク、ピカソ、ダリ、ウォーホール、岡本太郎など、文学ではカフカ、ジョイス、ボーヴォワール、中原中也、安部公房などのようにかつての異端児、前衛派が現在では巨匠と呼ばれ学校の教科書に出て来るほどポピュラーな存在になっている例は数多い。音楽でもストラヴィンスキー、バルトーク、シェーンベルク、ケージ、武満徹などがそうである。

私がサティを知ったのは音楽誌のブライアン・イーノ関連記事である。「ミュージック・フォー・エアポート」を始めとする"アンビエント・シリーズ"や先日紹介したペンギン・カフェ・オーケストラ等の"オブスキュア・シリーズ"などの環境音楽を追求していたイーノのルーツとして「家具の音楽」を提唱したサティの紹介がされていたのである。"「家具の音楽」というのは彼が自分の作品全体の傾向を称してもそう呼んだとされ、主として酒場で演奏活動をしていた彼にとって客の邪魔にならない演奏、家具のように存在している音楽というのは重要な要素であった"、とある。また「官僚的なソナチネ」「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」「冷たい小品」「梨の形をした3つの小品」「胎児の干物」「裸の子供たち」などの奇妙な題名の作品は、普通の男子用小便器に署名をして「泉」と名付けたダダ芸術家マルセル・デュシャンを思わせる前衛精神を感じさせた。

早速サティの作品を聴いたところ確かに環境音楽的なクールな空気感はあるものの、基本的に美しい旋律を持ったシンプルな作品であり、甘美なメロディがとても気持ちよかった。同じ頃にダグマー・クラウゼを通してブレヒト/ワイル作品に興味を持ち「三文オペラ」のキャバレー的演劇性に目覚めた時だったから、ヨーロッパの現代音楽に興味を持った。そして12音技法、セリー主義、ミュージック・コンクレート、ミニマル・ミュージックへと興味は広がり、レコメン系チェンバー・ロックやフリー・インプロヴィゼーションと繋がり私の音楽観は拡大して行ったのである。

そのきっかけとしてサティには感慨深いものがある。一般的にはイージーリスニングの元祖と言われるが、私にとっては現代音楽への扉を開いてくれた恩人なのである。





サティには
足を向けては
寝られない

空気のように永遠に循環する音楽、それこそサティの目指したものなのかもしれない。


コメント (2)
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