6月頭から札幌から福岡まで全国7ヶ所で開催されたきゃりーぱみゅぱみゅのワンマンライブツアー「ぱみゅぱみゅレボリューションツアー」の追加公演。今年1月29日の渋谷WWWでのバースデイ・ライヴ、2月25日渋谷クラブクアトロでの初のワンマン・ライヴ『もしもしクアトロ』のどちらもチケット抽選に外れ涙を飲んだので、今回も無理だろうと思いつつ追加公演2日間分申し込んだら両日とも当選してしまった。2日目は平日なので知り合いに譲り、日曜日の追加公演初日に参戦することにした。
デビュー・アルバム「ぱみゅぱみゅレボリューション」はオリコン初登場2位にランクインの大ヒット。ツアーもすべてSold Outでまさに今が旬のアーティストだ。アーバンギャルドの天馬氏によれば「アイドル戦国時代」の現在、多くのアイドル・グループが乱立する中で、ピンのアイドルとして唯我独尊、特異な存在といえるきゃりたんのステージが間近で観られるのは今のうちだけかもしれない。
生憎の霧雨の中AXの前には多くの観客の傘がキノコの群生のように揺れている。客層は殆どが20代で男女比は半々。青文字系ファッションに身を包んだ派手な女の子もチラホラ。しかし多くは普通の恰好の今風の若者達だ。会場に入るとまず驚いたのは乱舞する祝い花の数。テレビCMでも引っ張りだこの彼女だけあり、テレビ局やスポンサー、芸能人から贈られた色とりどりの花がギッシリ並んでいる。中にはきゃりたんのファッションに倣ったカラフルなオブジェをあしらったパネルも。そして物販に並ぶ人の列。Tシャツやタオル、バッジなどがあったようだが、アイドルの物販は凄い売り上げなんだろうな、と軽くショックを受ける。
会場は熱気が蔓延。SEは延々と電子オルゴールのフレーズが繰り返されている。20数年前ピンク・フロイドのライヴで開演前にずっと鳥の鳴き声を流していたことや裸のラリーズが1時間以上無音でストロボを点滅させていたことが心をよぎる。会場に足を踏み込んだ時から気が付かないうちにきゃりたんの脳内の迷宮に迷い込んむ仕掛けを意図したに違いない。しかし会場を埋めた若者達はSEには無頓着で仲間同士会話に花を咲かせている。そのうち皆が2F席を見上げて歓声を上げ始めた。どうやら芸能人が多数来場している模様。芸能界には疎いので誰だか判らなかったが、かなりの有名人揃いの様で「大島さーん」(多分AKB48の大島優子嬢)「みゆきちゃーん」(NMB48の渡辺美優紀嬢か?)「椿鬼奴でた~」などと盛り上がっている。
10分押しで会場が暗転し大歓声が上がる。色とりどりの頭をしたキッズ・ダンサーが登場、ノリノリのテクノビートに乗せて激しく踊る。階段の上にきゃりたんが登場すると客席全員腕を振り上げてそこらのロック・コンサートより激しい盛り上がり。「私のライヴは遊園地。いろんなアトラクションを楽しんで下さい」。星やハート型の照明、ステージセットはPV監督の増田セバスチャン氏が制作。左右に大きな角の生えた犬の頭があり、中央には階段がある。そしてバック・スクリーンに投影される映像が滅茶苦茶サイケデリック。60年代フィルモア・イーストでのライトショーやピンク・フロイドのビデオ投射、サイケデリックトランスの照明をそのまま現代に蘇らせたドープ感たっぷりの画像が乱れ飛ぶ。大音量のダンスビートとブレイクダンスときゃりたんのド派手な衣装と童謡メロディに明らかにトンだ歌詞の世界。以前アルバム・レビューで考察した通り、やはりきゃりーぱみゅぱみゅは曼荼羅だった。
MCではよく悪夢を見る話。前日はかりんとうをくわえて綱渡りをして堕ちてはまた綱渡りを繰り返すという悪夢を見たと言う。夢野久作「ドグラマグラ」かクリムゾンの「再び赤い悪夢」か。この日はご両親が観にきているとのこと。中田ヤスタカ氏との出会いは高1の時にきゃりパパから渡されたCapsuleのCDだったそうだ。きゃりママにとてもしつけを厳しく教え込まれた。シャルロットを育てるセルジュ・ゲンスブールとジェーン・バーキンのようである。
アルバム1枚にシングル3枚しか出していないからライヴ自体それほど長くないだろう、と予想していたが、Capsuleのカヴァーや2回のお色直しの間のダンス・タイムなどを交え100分に亘るステージを展開。この日だけのスペシャル・ゲストとしてanのCMで共演するお笑い芸人コンビ2700が登場、CMさながらに「右ひじ左ひじ交互に見て」の振付けを踊る。とにかく最初から最後までエクスタシーをキメまくったような多幸感に貫かれたノリに幻惑され放っしの圧倒的なライヴだった。
間もなく「JAPAN EXPO 2012」でフランスでライヴを行い数々の夏フェスに出演、そして遂に11月6日には初の武道館公演が決まったことだし、今年の紅白出場も間違いあるまい。それにしても合法ドラッグと言っても過言ではない中毒性のあるきゃりたん&中田ヤスタカの世界で育った子供たちは一体どうなってしまうのだろうか?ティモシー・リアリーもビックリ仰天である。
きゃりーさん
トンで夢見て
いい気分
再びアーバンギャルドにご登場願おう。天馬氏+よこたんの最新インタビューをお読みいただきたい。「病めるアイドル」の最右翼がAKB48ならば、最左翼はきゃりーぱみゅぱみゅなのである。
Set List (7/2)
01. ぱみゅぱみゅレボリューション
02. CANDY CANDY
03. おねだり44℃
04. ちょうどいいの
05. Drinker
06. きゃりーのマーチ
07. みんなのうた
08. スキすぎてキレそう
09. jelly
10. ギリギリセーフ
11. RGB
12. おやすみ
13. でもでもまだまだ
14. PONPONPON
15. きゃりーANAN
16. ちゃんちゃかちゃんちゃん
<アンコール>
17. つけまつける