正直言ってレゲエには余り思い入れがない。確かにエリック・クラプトンがカヴァーしたボブ・マーリーの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」は知っていたし、ザ・クラッシュがデビュー・アルバムでリー・ペリーの「ポリスとこそ泥」をカヴァーしたり、レゲエ・パンクと呼ばれたザ・ポリスやデニス・ボーヴェルがプロデュースしたザ・ポップ・グループやザ・スリッツなどを聴きレゲエ独特のリズムには馴染んでいた。1979年にザ・スペシャルズやマッドネス、セレクター、ザ・ビートなどの2トーン・ブームでスカが流行った時はそのスタイリッシュなファッションも含め夢中になったものである。その年ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズが来日し、ラジオや雑誌でレゲエ特集が組まれた。特有の2・4拍目を強調したリズムに乗せて政治的メッセージを歌うレゲエは正にパンクに通じるスピリットがあり、特にジャマイカ移民の多いイギリスでは両者はとても近しい存在だった。
しかし2トーンやダブなどパンクを通過した白人発信のレゲエは理解できたが、本場ジャマイカのレゲエは日本人には相容れないユルさやレイドバック感が苦手で、ラスタカラーやマリファナを施したデザインはいいが、音楽として積極的には聴かなかった。1981年に36歳でマーリーが早逝した時も特に大きな感慨はなかった。それでも偉大な音楽家/活動家としての功績は認めていた。
ジャマイカ独立記念作品として「ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド」という映画が公開される。試写状を貰ったので観に行ってきた。試写会は「ドキュメント灰野敬二」を上映しているシアターN渋谷の1Fにあった。最終試写ということで補助席が出る盛況振り。時間ギリギリに現れた派手な数人組は有名なミュージシャンか。
映画は西アフリカでの奴隷港野様子から始まる。ジャマイカの電気も通ってない田舎町にアメリカ軍人の白人の父とジャマイカ人の黒人の母の元に生まれたロバート・マーリー。彼がハーフだということを初めて知った。ハーフ故の差別と孤立感の中、音楽を支えに育ち、1960年代半ばウェイラーズというコーラス・グループを結成。政治的動乱に揺れるジャマイカの社会で成功を収めるにつれて銃撃されたり、コンサート中に催涙弾を打ち込まれバンドも観客も避難する中ひとりステージで歌い続けたり、対立する政党の党首をステージで握手させたり、7人の女性との間に11人子供を授かったりと、文字通り波乱に満ちた36年間が本人のインタビューや貴重なライヴ・シーン、関係者の証言で明らかにされる144分。エチオピア帝国最後の皇帝ハイレ・セラシエ1世を「ジャー (現人神)」と崇めガンジャ(大麻)を手放さないラスタファリアンの生態を知れるのも興味深い。そして全編に流れるマーリーのレゲエが映画全体のトーンをラスタカラーに染め上げており、孤高のアーティストというよりひとりの男としてのボブ・マーリーを身近に感じることが出来る。私のようにレゲエがイマイチ苦手という方にこそ観ていただきたい映画である。
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レゲエには
大麻の香りと
燃える闘魂
映画「ドキュメント灰野敬二」が大ヒットにつき上映延長および地方上映が決定したとのこと。地方の方、お待たせしました!