A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

「初音階段」非常階段/坂田明/白波多カミン@秋葉原クラブ・グッドマン 2013.2.2 (sat)

2013年02月04日 00時26分48秒 | 素晴らしき変態音楽


<「初音階段」発売記念・非常階段ワンマンライブ>
【出演】非常階段
【ゲスト】坂田明、白波多カミン

昨年2度のJAZZ非常階段はあったが非常階段としてのワンマンライヴは相当久々なのではなかろうか?少なくとも2000年以降の私のライヴ記録には東京でのワンマンライヴは見当たらない。そもそも非常階段としての集団ライヴ演奏は長くて40分、大抵20分前後である。マゾンナは極端な例だがノイズのライヴはだいたいそれくらいの時間である。凝縮されたテンションの高さ故の精神的/体力的制約もあるがメロディーがないので演奏の起伏がつけにくいこと、さらに物理的なオーディエンス側の耐久力の問題もあるだろう。特にひとりノイジシャンズの場合長時間演奏するためにはゲストを迎えてセッションするか映像等とのコラボにするかしかない。その点"バンド"である非常階段は有利である。JAZZ非常階段以外に彼らのワンマンライヴを観たことはないが、坂田明と豊住芳三郎を交えてピットインで展開された色々な組み合わせによるセッションはひとりノイズでは不可能な無限のヴァラエティを楽しめる立派なエンターテイメントだった。その一端は最新スタジオ録音盤「非常階段 featuring 坂田明/Made In Studio」に収録された3つのセッションで味わえる。



初音階段レコ発として企画されたこの日のライヴはノイズバンドとしての非常階段の奥の深さと引き出しの多さを如実に表していた。秋葉原クラブグッドマンは非常階段やAcid Mother Temple、遠藤ミチロウ、灰野敬二、吉田達也関連のイベントが多く開催されの日本の地下音楽にとって重要な拠点である。1996年にオープン、同じビルに売り場のあるイケベ楽器店が運営するライヴハウス。地下には練習スタジオもあり楽器を背負った若者が出入りするロックファンにはワクワクするロケーションである。嬉しいのはドリンクチケットでソフトドリンクが2杯飲めること。初台ドアーズと並ぶ良心的なハコである。ヲタクの街アキバの片隅にこんなコアなハコが存在するのは偶然ではないだろう。昼間AKB劇場やディアステージでアイドル三昧、夜グッドマンでパンクやノイズ塗れという夢のハシゴも可能である。

この日会場を埋めた200人の観客は90%男性。確かにノイズ系のライヴは男性上位の傾向があるが改めてイッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールドであることを実感する。初音ミク目当のお客さんもいるのか?黒尽くめの外見ではその区別は出来ない。PAから軽快なフュージョンが流れている。



10分押しでステージ前のスクリーンが上がるとそこには実体化した初音ミクの姿が!白波多カミンによるアニメコスプレ。カ、カワイイ。。。ヲタ心が激しく萌え上がる。美川さんじゃなくて良かった! 左右をJOJO広重とT.美川が固め「初音階段」収録の「タンゴ」「やさしいにっぽん人」を演奏。CDでは非常階段の音はサンプリングだったが生で切り込むリアル・ノイズの迫力が凄い。「スラップ・ハッピー・ハンフリーの手法を応用した」という広重の言葉に納得。この日のテーマ「初音階段」はこの2曲で終了。


(写真撮影・掲載に関しては出演者の許可を得ています。以下同)

続いて坂田明+インキャパシタンツ=T.美川&コサカイフミオのセッション。坂田はもはやゲストというよりメンバーといってもいい存在。「何をやるか知らずに来てみたら楽屋にキレイなねーちゃんがいて街角から迷い込んだのかと思った」と坂田が言う通りアキバ駅周辺にはコスプレイヤーの姿が珍しくない。美川の電子ノイズと坂田の咆哮サックスをコサカイのドローンヴォイスが津波のように包み込み鋭角的かつ流動的な異次元空間を産み出す。


3つ目のセッションは坂田+JUNKO+岡野太。非常階段を何度も観るうちにサウンドの要はJUNKOのスクリームと岡野のパワードラムではないかと思うようになった。JUNKOの声の威力は勿論だが、特にドラムの存在が得てして聴覚的刺激に偏りがちなノイズ演奏に肉体性を与え人間の野性本能を呼び覚まし非常階段のサウンドに独自性を与えているのは間違いない。「Made In Studio」に収録された坂田+JUNKOのトラックは両者の剥き出しの音の衝突がハイライトでJAZZ非常階段の演奏で最も即興ジャズに近いという印象を受けた。岡野がリズムに囚われない自由度の高いパルスビートで絡んだ三者の演奏は秘められた衝動のパンドラの箱を抉じ開けるエネルギーに満ちていた。


第1部最後は白波多カミン+広重+JUNKOによるいわば「カミン階段」。コスプレ衣装を脱いでも萌えオーラを放つカミンが小柄な身体に不釣り合いに大きなアコギを抱え「お墓ソング」を歌う。たゆたうギターに浮遊間のある歌声が広重氏好みと言えよう。彼女の初ノイズ/インプロ演奏は昨年10月難波ベアーズでの広重とのデュオだったという。カミンはその時の印象を「とてもセクシーな気分」と記している。ノイズをセクシーと表現する人は初めてだが、私がTIMISOARAで女性ノイズに目覚めJUNKOは勿論Reiko A.や日野繭子などフィメールノイジシャンに惹かれるのは性的魅力のせいかもしれない。押し寄せる広重とJUNKOのノイズをものともせず歌い切ったカミンは後半アコギを掻きむしりインプロに雪崩れ込む。うん、とってもセクシーでしたよ。


▼白波多カミン@難波ベアーズ



休憩時間ドリンクの列に並んでいる間に他の客の会話に耳を傾ける。BiS階段Tシャツの3人組がBiSの話をしていた。BiSが2/20に発売する「バックステージ・アイドル・ストーリー」Blu-rayの先行予約特典がBiS階段DVD-R(BiSメンバーに加え広重のサイン入り!)。丁度今そのイベントが名古屋・大阪・仙台で開催中で彼らは地方まで追っかけている様子。アイドルが先かノイズが先か判らないが確実にファン層は広がっているようだ。

▼BiSニューシングル 3/13 On Sale



第2部は非常階段+坂田明の集団ノイズ演奏。坂田のフリークトーンを合図に一斉にノイズ開始。初っ端からレッドゾーンに振り切れた高密度爆音演奏。ピットインでは大人しく座っていなきゃならなかったがグッドマンなら縛りはない。最初はじっと観ていたオーディエンスも演奏に煽られ暴れ始める。激した客がダイブする。広重のアクションに応じて振り上げられる拳。坂田はサックスを置いてマイクを掴んで叫ぶ。インキャパのふたりの痙攣、岡野の容赦ない打撃音、そしてクールビューティーJUNKOが女王のように後光を浴びて屹立する。神々しい6人の投射熱が会場を赤く燃やす。先日U.F.O.CLUBの音の良さに感動したがグッドマンの音響も素晴らしい。最前列美川サイドで観ていたが一番離れたコサカイの音もクリアに聴こえる。前日のノイズ大学講座で美川が正しいノイズの鑑賞法はスピーカーで大音量で聴くことと語っていたが住宅事情でそうもいかない我々にはライヴ体験が最高の鑑賞法である。激高したコサカイのダイブはなかったが最後にエフェクターボードをステージに叩きつけて40分に亘るノイズ大会終了。












沸き起こるアンコールの拍手。機材を破壊してもやるのかなと思ったらカミンを加えた7人全員で再登場。坂田の哀感たっぷりの「赤とんぼ」にノイズ演奏が絡み付く。コサカイは壊した破片から使えそうなエフェクターを拾い上げ演奏。カミンはアコギで広重のギターと渡り合う。哀愁のメロディーが混沌に変貌する演奏は本編とはまた違った味わいがあった。坂田の「解散!」のMCでワンマンライヴ終演。


外へ出ると昼間温かかったのがめっきり冷え込んでいた。

ノイズとは
何かと問わず
ライヴ観よ

前日の講座で「非常階段のコピーバンドをやる時の秘訣は?」との質問に「僕や美川君のコピーは出来るだろうがJUNKOさんだけは無理」と広重が答えていたがとんでもない。この演奏をコピーすることなど狂人でも不可能であろう。

2月5日(火)DOMMUNEに初音階段が出演する。白波多カミンも参加。詳細はコチラ

JOJO広重「初音階段インタビュー」はコチラコチラ
白波多カミン インタビューはコチラ

<非常階段 ライヴ・スケジュール>
3月10日(日)六本木スーパーデラックス 出演:非常階段、ジョン・ダンカン、ジム・オルーク
4月6日(土)新宿ピットイン 『JAZZ非常階段』 
出演:JAZZ非常階段(非常階段、坂田明、豊住芳三郎)+山本精一

<JOJO広重 ライヴ・スケジュール>
2月13日(水)大阪HOKAGE 出演:BIDE & JOJO + Gigi ほか
2月17日(日)大阪なんばベアーズ 『3階33段』 出演:JOJO広重、3月33日
3月5日(火)高円寺UFOクラブ 出演:JOJO広重 ほか

<コサカイフミオ ライヴ・スケジュール>
2月16日(土) 東京画廊haus コサカイフミオ 無声映画音楽
コメント (2)
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