KOENJI HIGH 5th ANNIVERSARY
割礼 結成30周年・「ネイルフラン」「ゆれつづける」
リイシュー盤発売記念ライブ
LINE UP:割礼/Boris/下山(GEZAN)
割礼は30年間の活動の割にはライヴ盤を除く正規のスタジオ作品は「PRADISE K」(87年)「ネイルフラン」(89年)「ゆれつづける」(90年)「空中のチョコレート工場」(00年)「セカイノマヒル」(03年)「星を見る」(10年)の6作のみ。寡作さゆえに「伝説のサイケデリック・バンド」と呼ばれることが多いが年間30本以上のライヴを小規模な会場で行っており関東在住なら「伝説」を体験するのは容易である。実際割礼マニアといえる根強いファンが存在し毎回ライヴに足を運ぶ知り合いも少なくない。ラリーズのように本当の「伝説」になる前にご覧になることをお勧めする。
初めて彼らのライヴを観たのは2001年UFO CLUB、対バンは光束夜だった。当時は熱烈なサイケ・マニアでジャックスやラリーズやモップス、頭脳警察、フラワー・トラヴェリング・バンドなどジャップロックのオリジネイターや不失者、サバート・ブレイズ、ゴースト、ハイライズなど現役のバンドを聴き狂っていた。割礼の名前は80年代から知っていたがSSE(元トランス・レコード)のコンピに参加していたこともあり何となくネオサイケのイメージがあり敬遠していたのが正直なところ。初めて観た割礼の想定外にねっとりとした濃厚なスローモーション空間とサイケなビデオ・ライティングに打ち震えて以来、最低でも年5回はライヴに通うようになった。対バンイベントでも5時間ワンマンでも宍戸ソロでも印象は全く揺るぎない。ついでに言えばドラムの松橋の告知MCも変わらない。毎年物販を頑張り続けるバンドである。願わくばそろそろ新しい物販グッズを作ってくれないだろうか。宍戸特製目玉親父グッズなんていかがか?
30周年イベントにゲストで迎えたのはBorisと下山(Gezan)。Borisは昨年結成20周年、下山は結成5年目という3世代に亘る個性派バンドの共演である。高円寺へ向かう途中で中央線が不通だと知り丸ノ内線で新高円寺から歩く羽目に。受付で「お目当てのバンドは?」と尋ねられ実際は3バンドとも目当てだが「下山」と答える。これがバンドのギャラにキックバックされるのだろうか?それとも単なる人気投票?どこのライヴハウスでも訊かれるが目的を知りたいものだ。
Borisは昨年5月のアソビ・セクスとの対バン以来。前回は元スターズの栗原ミチオがゲスト参加したがこの日はオリジナル・トリオ演奏。2011年のメジャー作「New Album」のハイパーポップ路線には???だったが本来のヘヴィロックに立ち返った演奏に安心する。スワンズに破壊された聴覚が重低音に耐えられるか心配だったが人間の回復力は凄い。逆に襲い掛かる音圧が快感になっている。ギターのWATAのミーハーファンなので黒いシックなドレスとハイソックスに萌える。新作を3作連続でリリース予定とのこと。第1弾はアナログ・オンリーのアルバム。デビュー時からアナログに拘る姿勢は変わらない。5月から2か月間USツアー、帰国後夏に新代田Feverで2Days予定。
1月のワンマンで下山(Gezan)のオーディエンスの反応に戸惑った。ただでさえアウェイな環境で後列から観るとまた欲求不満になると思い最前列に移動。いつものSEに乗って登場した4人はいつも通りのジャンキーオーラを放つ。最前列で観るのは久々なので血が騒ぐ。カルロスのぶっといベースとシャークの乱打ドラムが炸裂、マヒトとイーグルが文字通り飛びまくる。その動きのキレの良さはハンパない。悪態をつきながら傲慢なまでに弾けた演奏を聴かせつつ、バラード・ナンバーではマイクを通さず生声を張り上げるマヒト。彼らのライヴのキャッチコピーに「What's やさしさ?」とあるがマヒトの表現の核には底知れぬ「やさしさ」があることを実感して涙が出た。かつてここまで壮絶にやさしさを表現した者はいただろうか?今回は人目を憚らず目の前のカルロスに成り切って暴れて最高に気持ちがよかった。下山を断固支持することを決意。
瞬発力の塊の下山の後だから割礼のまったりした世界が余計際立つ。30周年という気負いは全くなくいつも通りの4人の佇まい。バックスクリーンに投射されるアンビエント映像とコマ割り映画のような超低速演奏が相まって轟音以上に緊張感あふれる張り詰めた空気に溺れっぱなし。サイケサイケと騒ぐのもいいが彼らのワン・アンド・オンリーな世界観は言葉で言い表すことは出来ない。さりげない動作ひとつひとつに30年の重みが漲っている。強力な磁場に頭痛も吹き飛ぶ。
(ライヴ写真・動画の撮影・掲載については出演者の許可を得ています)
3バンドそれぞれが「いつも通り」の演奏を繰り広げたイベントは例えようがなく充実していた。電車の中で耳鳴りが続いていることに気が付いたがどうでもいい。「サティスファクション」とはこういうものだと堪能した夜だった。
割礼と
Borisと下山
仲良しさん
●1983年デビューのアーティスト:飯島真理/岩崎雄一/大江千里/大沢誉志幸/尾崎豊/小山卓治/GONTITI/後藤次利/斎藤誠/THE STREET SLIDERS/C-C-B/杉山清貴&オメガトライブ/鈴木さえ子/チェッカーズ/浜田麻里/PINK/和田アキラ。
●大体30周年のバンド:BOΦWY/怒髪天/the 原爆オナニーズ/少年ナイフ。
何となく割礼の立ち位置がわかるリストではなかろうか。