A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ヒラメキが生んだ新古典~坂田明「平家物語 実況録音 映像篇」DVD

2013年02月08日 00時20分00秒 | 素晴らしき変態音楽


2011年10月に発売後、ロングセラーを続ける坂田明『平家物語』(dms-142)に続き、今度は映像版(DVD)が登場です!! 高平哲郎の構成・演出によって、2012年6月24日に新宿Pit Innで行なわれたライブを丸ごと収録。坂田明、ジム・オルーク、田中悠美子、石井千鶴、山本達久のクインテットによる、さらに末広がりになった演奏も坂田明の朗読をこれでもかと引き立て、フリーの演奏シーンでは阿鼻叫喚、「先帝入水」では涙すら誘います。ライブ・ペインティングと絵巻物などがバックスクリーンに投射され、音だけでは伝わらない『平家物語』の豊穣なイメージが映像にも炸裂します。

○演奏
坂田明(アルト・サックス、クラリネット、バス・クラリネット、鳴り物、朗読)、ジム・オルーク(ギター、ヴォーカル)、田中悠美子(義太夫三味線、浄瑠璃、朗読)、石井千鶴(小鼓、締太鼓、ヴォーカリーズ)、山本達久(ドラムス、パーカッション)

○ライヴ・ペインティング
中山晃子

○撮影/編集
テレコム・スタッフ

○構成/演出
高平哲郎

1. 祇園精舎
2. 入道逝去
3. 六道之沙汰
4. 坂落
5. 組討の段
6. 敦盛最後
7. 木曾最期
8. 先帝入水
9. 音戸の舟唄
doubtmusicホームページより)

♪祇園精舎の鐘の声・・・♪という「平家物語」の一節を坂田明が唄うのを最初に聴いたのは2011年8月15日下北沢Lady Janeでの石橋英子&ジム・オルークとの共演ライヴである。その前に観た同年5月23日渋谷Bar IssheeでのTatsu(レピッシュ)&DJ Sniffとのライヴでは唄ってないので「平家物語」企画は2011年6月・7月にスタートしたものと思われる。8月24日キッドアイラックホールでのソロ公演の2ndセットで「平家物語」を吹き語りしたのが世界初演ではなかろうか。doubtmusicからCDがリリースされたのは10月16日。その日にピットインでペーター・ブロッツマンのゲストで坂田と佐藤允彦が出演。ライヴでは平家物語は唄わなかったが休憩時間に話したら「ごめんね、こんなの作っちゃって」と照れていた。JOJO広重がライナーで絶賛していたが坂田本人やdoubtmusicの沼田順社長をはじめスタッフはこの作品がどう受け止められるかいまいち自信がなかったのではなかろうか。

CDはネットを中心に「よくぞやってくれた!」と絶賛され不安視されたジャズ系メディアでも好意的に評価され徐々に話題が広まっていった。直後に始まった坂田明&ちかもらち「ちかもらち空を飛ぶ」ツアー以降「祇園精舎~」はライヴの定番レパートリーになる。

それに気を良くした沼田が企画したのが2012年2月8日秋葉原CLUB GOODMANでの「平家物語 実演会」だった。直前の2月4日四谷・喫茶茶会記でのソロ・ライヴでは客がたった5人だったので動員は大丈夫か?と心配したが蓋を開けたら立ち見も出るほどの大盛況。田中悠美子(三味線)/石井千鶴(小鼓)/山本達久(パーカッション) /ジム・オルーク(ギター)を迎えて2時間近く繰り広げられた集団演奏は坂田ひとりの多重録音によるCDとは全く違ったスケールの大きい世界を見せてくれた。→ライヴレポートはコチラ

その好評ぶりおよび4月9日に開催されたJAZZ非常階段の成功でさらに大胆になった坂田&沼田コンビは6月24日新宿ピットインで「俺たちひょうきん族」「笑っていいとも!」等で知られる高平哲郎の構成・演出によって第2回実演会を開催。私は観に行けなかったのだが何とこのたびその日の演奏が映像版DVDとして発売されてしまった。どこまで悪ノリするのかdoubtmusic!社運を賭けたJAZZ非常階段がそれなりに売れ、フェスティバルFUKUSHIMA!を阿鼻叫喚に陥れたノイズ電車&温泉が話題になり儲けた(?)お金をこんなトンでもプロジェクトに注ぎ込むとは!沼田社長、あなたはゼッタイ的に正しい。足を向けては寝られない。というか沼田のトンでも商法にまんまと乗せられる我々は何と幸福なのであろうか。同時に"非情"階段=JOJO広重のリスナーの懐具合を完全に無視した物欲刺激リリース作戦にも踊らされているのでダブルパンチである。ボックスセットを出さないだけ沼田には慈悲の心があるのかも。明日の昼飯代が心配になるがクロマニヨンズのヒロトが語る通り音楽表現と生活とは別モノだからここで語るのは辞めておこう。

ウルトラQのオープニングのようなリキッド・ペインティングが投射されるステージで坂田の低い唸り声から始まる映像は単なる演奏会の記録ではなく一遍の映画のような映像美とストーリー性に貫かれている。NHK大河ドラマのように日本画と筆文字の字幕が出るのも嬉しい。坂田をはじめミュージシャンの一挙一動が如実に観察出来るので実際にピットインで観る以上に深く演奏に没入することが出来る。ジム・オルークの手による録音はライヴならではの臨場感を生々しく捉えており説得力がある。ミュージカルやロックオペラとは違うが一度観始めると途中で辞めらず一気に最後まで観てしまう。坂田が20分で思いついたという直感的なアイデアが遥かに進化してパフォーミング・アートとして見事に開花しているのに感動する。ここにあるのは単なる物語でも音楽でも朗読でも記録映像でもない。「坂田明 平家物語」という新たな芸術である。この表現運動がどこまで発展するのか。間違いなく日本国内に留まるものではなかろう。「アキバ」「ハラジュク」「ヲタク」「きゃりーぱみゅぱみゅ」と並んで「ヘイケ」が現代日本文化のシンボルとして語られる日は近い。

▼2012年2月8日秋葉原CLUB GOODMANでの第一回実演会の模様。DVDに収められた実演会のプロトタイプである。


(動画の撮影・掲載に関して主催者・出演者の許可は得ていません)

1980年代に坂田は「新童謡」というジャンルを構築したが30余年後に「新古典」を生むとはお釈迦様いや六波羅殿でも気がつくめえ。



八〇〇年
経ってみても
平家は凋落

沼田商法の常としてDVD発売記念ライヴが開催される。
2月13日(水)秋葉原CLUB GOODMAN doubtmusic presents<坂田明 平家物語・実演会 其の参 坂田明/平家物語 実況録音 映像篇(DVD/dmf-148)発売記念!!>
【出演】坂田明、ジム・オルーク、田中悠美子、石井千鶴、山本達久


コメント
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