愛のために死す&Reconquista Presents
"Frame Out Volume.9"
Live 愛のために死す TADZIO 三富栄治 福田柊 / Shop Reconquista
良く晴れた日曜日は昼から出かけて日比谷野外音楽堂のでんぱ組.incライヴイベント参戦。当たらなかった第3部のチケットは現地調達しようと思っていたが、直射日光の下のアイドル現場の熱気に殺られ、これはイカンと離脱。身に染着いた中央線方面の休日は快速電車が止まらない被差別駅へ向かう。途中下車して寄り道したディスクユニオンで掘り出し物を発見。恐らく金に困った地下音楽愛好家が売り払ったと思われる「Masami Kawaguchi's New Rock Syndicate」「Makoto Kawabata & Shinsuke Michishita」に加え「AINOTAMENISHIS」のLPがお買い得価格で埋まっていたので、四の五の言わず救出。これから訪れる"枠外(Frame Out)"演奏会への通行手形を手に入れた。
阿佐ヶ谷駅から徒歩10分のスタジオへの道は、変哲のない商店街を抜けて暫く歩くので、何となく不安になる。地図の通りスーパーマーケットの隣にスタジオゾットを見つけひと安心。24畳のレコーディング・スタジオでイベントが開催されていた。観客20人程度のこじんまりした演奏会なので、気心知れた和やかな空気がある。2番手の福田柊が終わるところだった。
●TADZIO
鏡張りの狭い部屋で衆人環視下での仮面罵倒会。罵倒マニアにとって、これほど昂奮する状況は在り得ない。かと言って人目を憚らずに眉間を弄(まさぐ)り恍惚の表情を浮かべるわけにもいかないので、それを我慢するという二重の呪縛にM男の悦楽はマキシマムに昂ぶる。PAの完備していない生出しに近い環境での生演奏は、消し忘れビデヲのような淫靡さと猥雑さがあり、堪えられない。音響装置という鎧で武装していないリーダー&部長が、マスクをしても痛い視線に全力パフォーマンスで対抗する姿は、流行りの妹アニメのエピソードに盗用されるかもしれない。冗談はさておき、大胆過ぎる罵倒の言葉と激しいハードコアサウンドの中に、少女の純情を隠し持つこの二人組にこそ、混迷する現代ロックシーンの外殻をブチ破る突破革命を期待するべきだろう。
●愛のために死す
大口弦人率いるこの4人組をこれまでに3度観たことがある。そのうち2度がライヴハウスやコンサートホールではなく、練習スタジオでの企画イベントだった。決して彼らが普通のライヴをやらない訳ではないし、筆者がチケット代をケチって規格外ライヴを選んでいる訳でもない。偶然に過ぎないが、結果的に「愛のために死す」という現在進行形のロケンロードキュメントを共に歩んでいるような気がする。入手した1st『LIVE`418』が2006年、2nd『部屋と夢』が2010年の作品。弦人以外は流動的だったメンバーが、現在の4ピースにほぼ固定したのが2012年頃だが、2nd以降音源リリースをしないのは、まだ現体制での理想型に至っていないからではなかろうか。筆者が観るのは昨年3月以来14か月ぶりだが、バンドにとっても7か月ぶりの久々のライヴは、正式ドラマーのシマの骨折の為、ばちへびというバンドの香川永利子がサポート・ドラマーとして参加。
いつものように両手を広げてジャンプするエネルギーの塊のような弦人のパフォーマンスで幕を開けたステージは、女子ドラマーがいるせいか、今までになく開放的で見晴がいい。狭い会場なのに、エナジーが情念的に結露することなく、気持ちよく空気を振動させる。数曲演ったところで弦人がギターを構え、へヴィーなコードを刻む。ベースレス&ツインギター編成の『LIVE`418』では、コードもフレーズも無視した暴走ギターを弾き倒していたが、現体制ではヴォーカルに専念していた弦人が再びギターを手にしたのは、原点回帰か新たな挑戦か。かつてのローファイ・ガレージ・ロックを髣髴させるアヴァンギャルド感覚が溢れたロケンローは新鮮な衝撃をもたらした。1時間の全力のステージに、進化・深化し続ける運動体「MOURIR D'AIMER-愛のために死す」の決意を強く感じた。
愛の為の死
愛の為の罵倒
愛の為のロケンロー