A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

Michel Henritzi + à qui/Junko+Sachiko/Mickey Guitar@Yellow Vision 2014.5.27(tue)

2014年05月29日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


Michel Henritzi Live in Tokyo 2014

Michel Henritzi (guitar, lapsteel) + à qui avec Gabriel (accordion)
Mickey Guitar(松谷健+福岡林嗣)
Junko (voice, from Hijokaidan) + Sachiko (voice, etc)



Michel Henritziの名前はJunkoや白石民夫の共演で知っていたし、灰野敬二のアルバム『'C'est Parfait' Endoctriné Tu Tombes La Tête La Première(真っ逆さまに落ちてゆく洗脳された「これでいい」』(2003)をリリースしたTurtles' Dreamを主宰し、JOJO広重/白石民夫『情趣演歌 Enka Mood Collection』(2014)のリリース元An’archivesレーベルにも関わっていることもあり、気にはなっていた。しかし、何故か知らねどその演奏をきちんと聴いたことはないばかりか、名前の読み方を「ヘンリッチ」と思い込んでいた(フランス人なので「H」は発音しない)。SNSで早くから告知されていた今回の来日ツアーは、Junkoをはじめ興味深い共演・対バン満載だったので、阿佐ヶ谷でアンリッツィ初体験と洒落こんだ。

 

●Mickey Guitar

(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

Mickey Guitar:
2005年、マーブル・シープ、キャプテン・トリップのMATSUTANI KENがギター・サウンドの広がりを求めて開始したプロジェクト。現在までに3枚のCDR、7inch、CDと制作されている。CDは当時remix誌でも取り上げられ大絶賛されるも、売上には結びつかなった。ステージは様々な形で対応、現在は福岡林嗣、サトウアキラ(OHP)を交えて行われている。

福岡林嗣:
1991年、東京でサイケデリックロックバンドOVERHANG PARTYを結成。自身のレーベルPataphysique Recordsから6枚のアルバムを残す。2008年OVERHANG PARTY解散。新たに「魔術の庭」を結成し、精力的にライブを行っている。現在までに5枚のアルバムを発表。他に様々なアーティストとのデュオ作品も発表している。



マーブル・シープ松谷、Overhang Party福岡という90年代日本サイケの象徴的ギタリストふたりのユニット。Liquidbiupil(サトウアキラ&清水美雪)によるリキッド・ライティングが最も映えるのがミッキー・ギターのステージだった。ロバート・フリップとスティーヴ・ヒレッジのセッションと云った趣のアンビエント・インスト「Birds」、マーブル・シープ直系のブルース・ブギ「Rabbit Fighter」、福岡のヴァイオリンが悪魔の旋律を奏で、轟音フィードバックへ上り詰める「Wave」(以上曲名は筆者の聴き取りによる)。総じてビート感のないドローン演奏だが、光のシャワーの中に身を浸して聴いていると、意識が頭蓋から滲み出して音と光と交じり合い、身体の中が空っぽになるような感覚に襲われる。意識の拡大ではなく、意識の漏洩と云うべきアナザー・サイド・オブ・サイケデリック感覚は極めて新鮮だった。



●Michel Henritzi+à qui avec Gabriel


MICHEL HENRITZI ミッシェル・アンリッツィ(仏):
フランスはメッス在住。1984年カセットレーベルAKTを始める。Dustbreedersのメンバーとして活動するほか、自主媒体を通じての音楽批評・レーベル主宰者として様々な表現に携わる。A Bruit SecretとTurtles’ Dreamの二つのレーベルを主宰し、秋山徹次、灰野敬二、向井千恵・福岡林嗣デュオ、友川かずき、三上寛等多くの日本人アーティストの作品をリリース。現在、白石民夫・Junko・秋山徹次・浦邉雅祥その他多数の日本人アヴァンギャルドミュージシャンとのヨーローッパツアーを企画、共演している。

à qui avec Gabriel:
ミュージシャン「アキ」とアコーディオン「ガブリエル」によるソロユニット。2001年、TZADIKより灰野敬二をゲストに迎えデビューアルバム『UTSUHO』をリリース。2007年頃から様々なミュージシャンやダンサー等との演奏を始める。2010年、河端一とのデュオを開始。2012年より日本の歌を中心にピアノで弾き語りをはじめる。

 

フランス風の名前のアキ・アヴェック・ガブリエルは、2005年4月28日ペンギンハウスで灰野敬二、狩俣道夫、河村純との共演で観たことがある。変わった名前だなと思いつつ、女学生風のキュートなルックスで、ベテランミュージシャンと亘りあうのが印象に残った。それから9年経つが、無垢な童顔は変わっていない。この日は歌モノを披露。数曲のカヴァーを除いては、アンリッツィが作った曲の詞を日本語に訳してアキが歌うスタイル。アンリッツィが演歌好きだということは、大阪公演で対バンしたドットエス橋本から聞いていたが、実際に観て気が付いたのは、演歌とシャンソンの類似性だった。特にアンリッツィが日本語で歌ったラスト・ナンバーは、ジュルジュ・ブラッサンスやジャック・ブレルそっくりだった。また、ロス・プリモス「ラブユー東京」がニコやブリジット・フォンテーヌを想わせる怨念情歌に変幻してしまったのは、堕天使ガブリエルの思し召しか?(実際はアキのガブリエルは愛用のアコーディオンの名前)。



●Junko+Sachiko


Junko:
ロックの極限形態としてのNOISEバンド「非常階段」のメンバーとして知られるスクリーマー、ボーカリスト。非常階段の他、ソロ、海外アーティストとのコラボレートも活発に行っている。

Sachiko:
光束夜、OVERHANG PARTYのベーシストとして参加する傍ら、ヴォイスとエレクトロニクスによるソロ演奏をはじめる。06年ファーストアルバムを発表。以降、各国のレーベルよりリリースを続ける。他に山安籠とのヴォイスデュオ「VAVA KITORA」やコサカイフミオ率いる「Tangerine Dream Syndicate」で活動。レーベル「Musik Atlach」主宰。

 

「信じていれば何事も必ず叶う」というのはJOJO広重や古川未鈴(でんぱ組.inc)が実証した至言だが、変態音楽愛好家の妄念が現実になったからと言って、いい気になっていては罰が当たろう。昨年ソロでメジャーデビューして以来、国内でも単独活動が活発化するJunkoが、今年3月六本木Super Deluxe「高周波地帯」でのSachiko Mに続き、地下音楽界のアナザーサチコ=Sachikoとのコラボが実現。テーブルにエフェクターを並べ、覆いかぶさるようにロングヘアーを振り乱すSachikoと、マイクスタンドを握り、直立不動で高周波スクリームを発し続けるJunkoのコントラストが秀逸。Junkoの「ジュン」は純情の「純」。Sachikoの「サチ」は君に幸あれの「幸」。Pure×Happyの陰陽論に関しては、時間があれば考察してみたい。筋肉質なプロレス技に傾斜しがちな男子に比べ、女子ならではの貧血症エクストリームノイズテラーは、月の働きに支配されるメンシスト(月経者)の兆であり、血のように真っ赤な水疱が踊るリキッドライトがビアンな饗宴をマキシマム化した。エンディング近くでSachikoもエフェクターを通して叫びを上げ、お互いの傷を舐め合うような睦み合いには濃厚なエロスが漂っていた。



フランスと
ニッポンの
ヘンテコ歌合戦

Michel Henritzi『横浜のシャドウズ』


2013年最新作。穂高亜希子、à qui avec Gabriel、秋山徹次、磯端伸一、Cédric Lerouley、今西玲子、福岡林嗣が参加したブルース作品集。
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