グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

『大島ならではの宝物』現地観察会3日目

2016年02月23日 | 火山・ジオパーク
2月8日(日) に行われた、現地観察会3日目の報告です。

この日は、筑波大学の上條隆志先生(生態学・森林工学)、首都大学東京の 谷口央先生(歴史考古学)に同行していただきました。

9:00~11:00 波浮港地区 (島の南部) 参加者20名
波浮港で園芸店を営む金子さんの私設資料館(金子勇博古館)で、大島の昔の写真を見学してから町歩きに出発。

(写真は園芸店前の駐車場で、人がそろうのを待っているところです)

所々に置かれた歌碑の前で立ち止まり、皆で歌を読み上げました。

波浮港には、明治から昭和の半ば頃まで多くの文人が訪れて歌を詠み、その時の歌が歌碑として残されているのです。

「大島の雲はよきかな~」

いいですね~。
歌が詠まれたときの情景が目に浮かびました。

その後、大谷石で作られた塀のある風景を歩いて、今はミュージアムとして解放されている民家にたち寄りました。

大島の他の地区は、地元の溶岩で作られた石垣がほとんど。
栃木県宇都宮市の大谷周辺で採掘される石材『大谷石』を使っていることは、それだけこの地区が羽振りが良かったことの証でもあるようです。

この地区でタイヤキ屋さんを営む参加者の店の前で足を止め、しばし雑談。


空き地の前ではこの地区生まれの参加者が「昔ここは風呂屋だった」と教えてくれました。

「波浮は、とても栄えていたので風呂屋が3軒あった、使用人がいっぱい働いていた」等々…直接見ていた人の話は実感がこもっていて、当時の情景が思い浮かび面白かったです。

波浮港を歩いた後は、筆島の磯にも寄って海岸植物を観察しました。

地面を這う檜の仲間“オオシマハイネズ”に触りながら「地を這うのは多くが海岸植物だが、高山と海岸には弱い共通性がある。神津島では標高500mにオオシマハイネズがはえている」という話を聞きました。

12:00~14:30 三原山地区(島の中央)参加者17名
ここでは森~草地~溶岩と移り変わるコースを、上條先生の解説で歩きました。
上條先生は学生時代からずっと、伊豆諸島の植物をテーマに研究を重ねて来られた方です。

「自然の動きを見るのは大変だが、大島ではそれが見られる。土も生き物も全てが消えたところということを覚えておいてほしい」と上條先生。

ハチジョウイヌツゲが優先する森での解説では…

「三宅島も大島も一般的にいうと回復が早い。玄武岩はリンが多いので植生回復には良い。ハチジョウイヌツゲは山の上の雲雨林のような多湿な環境が好き。孤立峰の上にイヌツゲが多い。風が強くて湿潤な環境。200年で20cmの土壌層があり火山灰層が40~50cm。土はミミズや葉っぱなど生き物が作った」とのこと。

この他、たくさん新情報を教えてもらいました。
「小さくて葉の厚いイヌツゲは丈夫。アオキは葉も薄いし守られていないとダメなので、回りに森ができていないと生きられない」
「スダジイ(伊豆大島では標高の低い所に巨木の森を作る木)は、湿度が好きではない」
「イヌツゲはスダジイより成長が遅い」等々…。

森がススキ野原に変化するあたりで、学生さんが『伊豆大島の土壌と植物』を調べた時の写真を見せてもらいました。


ここはおよそ30年前の噴火で一度焼かれているので、土壌層がわずかなようです。


ここで「何故ハチジョウイタドリは、溶岩の上に2年5カ月で芽生えられたのか?」を聞いてみました。

上條先生の回答は…
「溶岩に足りないのは窒素。安定しているので植物は取り込めない。ススキは根を水平に長く伸ばし、イタドリは垂直に長く伸ばす。雨には硝酸がふくまれており、わずかな硝酸を取り込んで生きているのではないか?葉が落ちれば分解が始まる」←納得!(^_^)

説明は続きます。
「植物は光と水を争う競争ばかりしているが、これだけ環境が厳しいと助け合う。ナースプラントという言葉も有る。オオバヤシャブシはヤシャブシに比べ、暖温帯に適応している。噴火直後にも“火山ガスに強い微生物”が存在する。ススキ、イタドリ、ヤシャブシは3つどもえでトップの座にある。ススキは火山ガスに強い。1年生草本は火山は苦手。1年で花をつけなければならないので。火山は多年生草本か木が先。花をつけずに成長し、力を蓄えられる」

「なるほど~!」がいっぱいで、とても面白かったです。
そして…

伊豆大島の“火山地質図”と“植生図”の対比。

じっくり見比べたら、色々なことがわかりそうです。

さて、3日間で学んだことはとりあえず3回シリーズで備忘録をかねてまとめてみました。

しかし、全然足りません…。
聞き取れていないことや、メモできなかったこともたくさんあります。

あとは今回学んだことを皆でさらに充実させて、わかりやすい形に整理して、島の中で共有したり、島外から来た人達に『伊豆大島ジオ物語』を楽しんでもらえるようにしていかなければ…。

活動すればするほど「やりたいこと」が増えるジオパーク。

伊豆大島の皆様、物語作りへの協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

(カナ)


コメント (2)
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