浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

歴史学者 色川大吉

2012-01-19 20:16:27 | 日記
 日曜日、NHKの夜の番組で、久しぶりに色川大吉の尊顔を拝した。自由民権運動について樋口陽一氏とゲストで出ていたのだ。お年をとった(86歳)なあと思ったが、しかし知性にはいささかの衰えもない。

 三多摩を中心とした自由民権運動の研究の先達として私の前に現れた色川氏は、私の歴史認識に強烈な印象を与えた研究者だ。とくに『民衆憲法の創造』(評論社)で明らかにされた事実は、私の生き方に大いなる影響を与えた。

 最初に色川氏の文章にあったのは、当時購読していた『朝日新聞』の日曜版の連載の一つ、“思想史を歩く”というシリーズだったか。その連載は本にもなった(確認したら1974年)。書庫にあるので確認はできないが、そこに色川氏の情熱的な、明確な問題意識をもった美文があった。

 それから私は色川ファンになった。色川氏の本は、刊行されたら必ず購入して読んだ。黄河書房版の『明治精神史』を入手したくて苦労したが古本屋でもかなり高額だったのであきらめたこと、中央公論社から『新版明治精神史』が出たので購入したら、黄河書房版とかなり異なっていることを知りがっかりしたこと、後に黄河書房版は『講談社学術文庫』で発売されやっと手に入れることができたこと、『三多摩自由民権資料集』を購入したこと、『明治の文化』(岩波書店)など、色川氏の本は次々と読んでいった。そのなかでも『ユーラシア大陸思索行』(平凡社)は、私の視野を一挙に広げてくれた本だ。

 今、アマゾンでチェックしたら、買ってない本もあることがわかった。しかし、それはすべて最近のものだ。1970年代から90年代のものはだいたい読んでいる。

 さて、今日図書館に行ったら、色川氏の自分史の一つである『昭和へのレクイエム』(岩波書店)を発見した。いつかは読もうと思っていたものなので、借りてきて読み始めた。色川氏の人生は、書物や自由民権百年集会などを通じて、ほぼ私の生きていた歴史と重なるところがある。だから、読みながら、自分自身の来し方を振り返るようだ。

 しかしそのなかに、まったく無知のものがあった。歴史民俗博物館開館への色川氏の関わりである。古代史の碩学井上光貞氏に請われて歴博の展示の原案づくりに大きくかかわったことは、まったく知らなかった。それもほとんど報酬なしに。また文部官僚の妨害と闘いながら。この本にはその官僚の名が堂々と書かれている。中田和夫である。この項目には、官僚の本質がはっきりと書かれている。さすが色川さん。

 まだ途中であるが、町田の住人も暇があったら読まれたらいい、と思う。

  
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中森明夫『アナーキー・イン・ザJP』(新潮社)

2012-01-19 10:06:23 | 日記
 大杉栄をとりあげた小説だというので読んでみた。まあシッチャカメッチャカのストーリーだ。現在的に大杉を「復活」させるとすると、こうなるのか・・・と思った。

 大杉栄の墓は静岡市の沓谷霊園にある。私は、大杉には人一倍関心があるのだ。

 大杉については、やはり瀬戸内寂聴の『美は乱調にあり』、『諧調は偽りなり』が一番よいと思う。

 大杉の『自叙伝・日本脱出記』(岩波文庫)も、今読んでも大変おもしろい。

 中森のこの本は、一応読み通したけれど、得るものはない。小説というのは、主観的なものではあるが、この場合は大杉など歴史上の人物を扱っているのだから、客観的な扱い方というものがあるのだろうと思う。小説では、大杉の魂を現在に呼び出しているのだが、大杉もこれでは怒るだろう。

 大杉はいろいろなかたちで「復活」されるが、今度の大杉については戯画化され、断片化され、切り刻まれている。

 大杉については、やはり真面目に向かい合うことが大切だと思う。

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