浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

林勝彦編『科学ジャーナリストの警告』(清流出版)

2012-10-04 23:03:17 | 日記
 校正ミスがいくつかあるが、内容的にはすばらしい。現時点における“フクシマ”に関わる論点をきちんと解説してくれている。

 “フクシマ”から1年半も経過し、そろそろ怒りの記憶も薄らいできている時期ではあるが、きちんと起きたこと(「原子力ムラ」の方々の対応も含めて)を、頭の中に整理しておくために効果的な本だ。

 “フクシマ”に関わるマスメディアの情報が、あまりにひどく、このブログでも大量に情報を流したが、マスメディア産業には「良き人」がいない。というのも、この本に書いている人の多くは、すでにメディア産業にはいないからだ。過去に「科学ジャーナリスト」であった人々。

 現役の「科学ジャーナリスト」が書いたものを読みたかったが、いまメディア世界にはジャ-ナリストが見当たらない。

 読むべき本の一つ。ただし2000円+悪税という値段は、少し高いかな。
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具体性の中で

2012-10-04 08:14:15 | 日記
 購読している雑誌の一つに『法と民主主義』というものがある。日本民主法律家協会が発行する法律家の雑誌である。私も一応法学部の出身なので、法律関係の雑誌(その他日本評論社の『法律時報』など。『法律時報』の別冊はほとんど購入している)も読むのである。

 最新の『法と民主主義』の特集は、“原発と人権”である。海渡雄一氏の「福島原発事故の原因と責任」は、原発問題に関わる司法の国策追随の姿勢を具体的に指摘する。「原発利権」でつながるトライアングル(政、官、財(業)、学、報(マスコミ))は、本当は司法を含めた六角形ではないかと思うほどだ。

 さて、この特集、今年4月に福島で開かれた「全国研究・交流集会」の記録である。当然地元の原発災害の被害者たちの生の声が綴られている。怒り、悲しみ、悔しさ、しかしそのなかでも福島で生き続けようという「決意」には、心が動かされる。

 しかしひとつ、飯舘村村長の菅野氏の発言はいただけない。話が抽象的なのだ。この人は何を考えているのだろうか、と思ってしまう。双葉町長の井戸川氏の発言は具体的でよいのだが、菅野氏は何を言おうとしているのかよくわからない。

 福島大学の清水修二氏の発言には、考えさせられることがあった。

 「原子力発電は「原子力ムラ」が国民に押し付けたものではなく、国民が選択してきたものである、との認識を持たないと、今回の災害は国民的教訓にし得ない」ということばは重い。国民の「責任」=応答可能性の問題である。福島事故は、国民に、原発、そして放射能被災=被曝の問題を他人事ではなく、みずからの問題として考えることを促しているという発言であった。

 原発事故は未だ収束していない。考え続けなければならない問題なのである。
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