浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

『韓国からの通信』を読み直す

2022-01-02 12:57:58 | 

 朝、書庫に岩波新書の『韓国からの通信』をとりにいった。1974年に刊行されている。著者の池明観氏が亡くなられたので、もう一度読み直そうと思う。とはいっても、韓国の独裁体制は長期間続いていたので、T・K生の通信はこの一冊だけではない。

 読みはじめてこういう文があった。

韓国人は伝統的に二つの態度をもっている。 一方では力の前では退き、風の向きにつれて折れ、嵐が過ぎるまでかくれている。そうかと思うとまた一方では、限界点に到達すると爆発して激しい行動になる。この二つの態度の間においてどのような均衡を保つことが可能であるか知らない。(3)

 いったい日本人はどうなのだろうか。現在の日本人は、嵐が吹き荒れても我慢して生き、風が吹いてくるとその風の方向に率先して行き、どんなことがあっても静かにしている。もちろん少数の人は、嵐の中でも行動し、ひるむことがない。しかし少数なのだ。

 韓国のロウソクデモをみて、私は、多数が集まって抵抗の意思を表す韓国人に心から共感し、またうらやましくも思った。

 韓国の人びとからは学ぶことが多い。

 

 

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池明観さん逝去

2022-01-02 08:18:12 | 近現代史

 岩波書店の『世界』に、T・K生という名で「韓国からの通信」が掲載されていた。当時の韓国は朴正煕独裁政権で、その重圧下に多くの人が苦しんでいた。しかしその重圧を跳ね返そうと、これまた多くの人々が抵抗運動を行っていた。

 T・K生とは誰かはわからなかったが、宗教哲学者で当時東京女子大の教授を勤めていた池明観氏が、民主化された後、みずから名乗り出た。

 私は『世界』に毎号掲載される韓国の状況に、その弾圧のあまりの過酷さにこころを痛めると同時に、抵抗する人びとの輝くような生のほとばしりを感じてもいた。同時に、韓国は詩の国でもあることを教えられた。抵抗のなかに、さまざまな詩がつくられ、それらが私の心を打った。

 その「韓国からの通信」は後に岩波新書となった。いまも私はそれを保持している。

 池明観氏は、民主化後、金大中政権の下で、日韓の交流に力を注いだ。

 その池明観氏が亡くなられたという。韓国の歴史の中で、池氏の生は燦然と輝くはずだ。韓国には、そういう「人士」がたくさんいる。彼らによって歴史は創られていく。

 

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