久しぶりに書店に行き、新書のコーナーを眺めた。その中からこの本と、森万佑子『韓国併合』(中公新書)を購入した。書店で買うのはほんとうに久しぶりだ。
後者はいまだ読んではいない。韓国併合については、親しくしていた海野福寿さんが晩年よく調査されていたし、また折に触れてその内容を教えてくれていたので関心があるからだ。海野さんは、突然ハングルを勉強し始め、内地留学で東京外大に行き、本格的にハングルを学んだ。その直後、韓国で日韓(日朝)の歴史を調べ始めた。海野さんにとってはまったく新しい分野の研究であった。私も、海野さんに誘われて、在日コリアンの歴史などを調べ始め、私自身も調査のために何度も韓国に行くようになった。
海野さんは『韓国併合』(岩波新書)をはじめ、それに関する著書をいくつか刊行された。海野さんのそれと森万佑子のそれと、どう異なるのかを知ろうと、『韓国併合』を購入した。
さて前者についてである。奥泉光は作家である。加藤陽子は歴史家である。副題に「太平洋戦争をどう読むか」とあり、二人が満洲事変から敗戦までを語り合うのだが、加藤はたくさんの史料の知見を保有しているが故に、最近の研究がどういうところを明らかにしてきたかを語る。私が学んできたことはすでに時代遅れとなり、新しい史料の発見により別の見解が生まれ、それが通説化しているようなのだ。そういう個所がいくつかあり、とても刺激になった。歴史学研究の進歩はすごいと思った。
退職後、あるいは研究会の幹事をやめたことから、歴史研究の最前線を追わなくなっていた。自治体史などで、「15年戦争」期の時期などを担当することが多かったので、それに関連する書物はたくさん読み込み、今も書庫などにあるが、最近の研究は知らずにいた。しかし私が学んでいた頃の研究は古くなっていたことを知らされ、大きな刺激を受けた。その点で、知的好奇心が喚起された。
本書は三部構成で、三部では太平洋戦争に関する文献の紹介に宛てられている。読んだものもあったが、未読のものもあり、読みたくなった。本を読んでいて、それを契機に他の本を読みたくなることは、知的欲求が減退していない証拠である。
知的好奇心を喚起する本は、良い本である。新書という相対的に安価な本で、最新の研究状況を学ぶことができた。諸物価上昇、しかし収入は増えないという状況で生活に陰りがみえる現在、高価な本(単行本は高価だ!)は買えなくなっているから、有難いことだ。
赤線を引いたり、書き込みをしたところをもう一度読み直して、もう寝よう。眠りに入ろうとしたところに、隣家がわが家の前で車から降車し、ドアをバタンと閉め、大きな声を出したので眠れなくなってしまい、この本を読んだ。
農業に従事する者にとって、秋は農繁期である。サツマイモを掘り、種を蒔き・・・・・という無限の作業が続く。疲れているから早く床に就きたいと思うのだが、邪魔が入る。