窪田恭史のリサイクルライフ

古着を扱う横浜の襤褸(ぼろ)屋さんのブログ。日記、繊維リサイクルの歴史、ウエスものがたり、リサイクル軍手、趣味の話など。

薫る漆黒の向こう側-第106回YMS

2019年04月11日 | YMS情報


  桜満開、ようやく春らしい暖かな陽気が訪れたと思った矢先、しまいかけていたコートを慌てて引っ張り出すような、真冬逆戻りの寒さとなった4月10日。mass×mass関内フューチャーセンターにて、第106回YMS(ヨコハマ・マネージャーズ・セミナー)を開催しました。

  今回のテーマは、「コーヒーは楽しい!〜まだまだ広がるコーヒーの楽しみ方〜」。ひょっとすると、今やお茶よりも身近かもしれない飲み物でありながら、意外と知られていないコーヒーの入口についてお話しいただきました。



  かく言う僕も、コーヒーの知識は皆無。確かに毎日浴びるようにコーヒーを飲んではいますが、上の写真の通りインスタントがメイン。強いて言うなら、22年前福岡で仕事をしていた時、今はなくなってしまった近所の「今泉珈琲店」の中煎りコーヒーが好きで、福岡土産にコーヒー豆を買って帰っていたということぐらいです。お茶は多少の心得があるので、今回はお茶と比べるという意味でも興味がありました。



  さて、講師は寺澤孝史様。何と言っても経歴が異色で、元歯科医。学生中にコーヒーに目覚め、2003年に本物のエスプレッソに出会い、エスプレッソの修業を積まれました。現在はコーヒーに合わせた抽出法や人それぞれに合った楽しみ方を追求し、カフェなどのコンサルティングや出張バリスタ、様々な場所に応じたコーヒースタイルの提案、イベントの計画など「コーヒーデパートのコンシェルジュ」として活動の幅を広げておられます。



  今回のYMSは特別です。始まる前から部屋の中がコーヒーの良い香りに包まれているのです。弥が上にもこれからの好奇心を高めてくれました。

  講義の初めはまず焙煎から。焙煎は浅煎りから深煎りまで大まかな分類がありますが、明確な規定はないそうです。僕が好きだった中煎りも今泉珈琲店の焙煎基準だったのかもしれません。簡単に言うと、浅煎りの方が酸味が強く、深煎りになるほど苦みが出てくるそうです。コーヒーの酸味というのは、豆が酸化することによって起こるのではなく、果物と同じように、焙煎することによって現れるコーヒーが持つ本来の味だそうです。この焙煎により、コーヒーの酸味と苦みのバランスが決まります。まず、自分好みの焙煎度合いを見つけることがスタートだそうです。
 
  因みに、昔の横浜は良質のコーヒーが入手できず、質の低いコーヒーを少しでも美味しく飲もうと深煎りして熱いものを出す文化になったそうです。それで横浜では今でも深煎りを好む人が多いのだとか。かつてサイフォン式が主流だったのも、最も高い温度で入れられるというのが理由の一つだったようです。



  つづいて産地について。コーヒーは、赤道を中心とした北緯25度と南緯25度の間の地域、いわゆるコーヒーベルトと呼ばれる地域60か国以上で生産されているそうです。昔は豆の品質を問わず生産国で一括りにされていたそうですが、ここ20年位で生産国ではなく農園レベルでの取引が広がっているそうです。つまり、良質な豆が流通するようになったと言えますが、それにより豆の個性に合った抽出法なども発達するようになったそうです。しかし、僕のような初心者はまず大まかに好みの生産国を捉えることから始めるのが良いようです。

  第三は、豆の品種について。コーヒー豆も、ワインのブドウや日本米のように品種による味わいの違いがあります。後述しますが、今回は「カトゥーラ」、「アビシニカ」、「ブルボン」、「ティムティム/アテン」という四種の豆の違いを体験しました。



  第四は、標高と風味の関係について。ウィスキーは熟成中の樽の位置によって味が変わりますし、ワインのブドウも土壌や気候の特徴が出たりますが、コーヒーも同様に標高、日照、降水量、気温など栽培条件による違いが出るそうです。標高について言えば、標高が高いほどコーヒーチェリーの生育が遅くなるため、それが香り、甘み、酸味などに影響を与えるのだそうです。因みに今回体験したのは、全て一番上のカテゴリでした。

  第五は、精製方法について。コーヒーチェリーを剥いて、豆にする工程です。大きく分けて、水を使い、生のまま剥くウォッシュドとチェリーを乾燥させてから剥くナチュラルとに分かれるそうです。ナチュラルはチェリーを乾燥させる過程で多少発酵が進むため、それも味に影響を与えるそうです。なお、後で出てくるスマトラ式というのは、チェリーが生乾きの段階で剥いてしまうそうです。それがスパイシーな味わいに影響を与えているのだとか。



  さて、一通りコーヒーの基本知識を学んだあと、カッピングと呼ばれるテイスティングに移りました。今回カッピングしたコーヒーは以下の通りです。焙煎元は横須賀のTsukikoyaさんというお店です。



  初めに、挽いたコーヒー豆のにおいを嗅いで、違いを感じます(ドライ)。正直なところ、それぞれの違いははっきり分かるのですが、それをどう表現したらよいかが分かりませんでした。ただ、④だけはカレーのような、非常にスパイシーな香りがしました。



  続いてお湯を注ぎ1分後、香りの違いを確かめます(クラスと)。さらに4分後にスプーンで攪拌し、また香りの違いを確かめます(ブレイク)。また豆の時とは全く異なる香りがしました。

  最後にスプーンで上澄みをすくい、一気に吸い込みます(テイスティング)。



  本来は、写真のようなカップリング・スプーンと呼ばれる深めのスプーンを使うそうです。

  またこれが豆の時とは全然違うイメージになりました。唯一④だけが相変わらずスパイシーだったという位です。この変化には正直驚きました。例えば①などは豆のときは非常にマイルドな香りだったのに、味わってみると渋みと言うのか妙な個性を放っていました。②は豆の時も味わった時も、デイリーで楽しめそうなまとまりの良さを感じました。③はやや酸味を強く感じました。

  因みに、このカップリングには世界大会もあるそうで、その世界大会で2位になられた天野五月さんという方が、来る4月18日に横浜中華街でカッピングイベントを開催されるとのことです。



  最後に、コーヒーのグレードについて。一番下は、生産国消費やインスタントコーヒーに使われるもの。頂点のスペシャルティは毎年80点以上の品質を維持できることが条件の最高級グレードで、日本では沖縄県国頭村安田(あた)の徳田泰二郎さんという方のコーヒーが、2017年に初めてスペシャルティコーヒーに認定されたそうです。また、日本が真ん中のコモディティコーヒーを淹れる技術に優れており、アジア人初の世界チャンピオンとなった千葉県船橋市にある株式会社Philocoffeaの粕谷哲さんの技法が、現在世界の標準となっているそうです。



  ワインも少しでも知っているのと全く知らないのとでは大違いですが、これを機会にまずは自分好みの焙煎と産地を探すところから始めたいと思います。なお余談ですが、今年の麻布中学入試問題にコーヒーの淹れ方が出題されたのだそうです。

コーヒーは楽しい!
チュング‐レング トラン セバスチャン・ラシヌー
パイインターナショナル


過去のセミナーレポートはこちら

繻るに衣袽あり、ぼろ屋の窪田でした
コメント
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