「私のいる場所 -新進作家展Vol.4 ゼロの年代の写真論- 」 東京都写真美術館 4/23

東京都写真美術館(目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
「私のいる場所 -新進作家展Vol.4 ゼロの年代の写真論- 」
3/11-4/23(会期終了)

既に会期を終えてしまった展覧会ですが、最終日の駆け込みで見てきました。7ヶ国15名(もしくはグループ。)の若手写真家によるグループ展です。(ゼロの年代=2000年以降に頭角を現してきた写真家。)



展覧会は各テーマ別に三つのセクションに分かれていましたが、(入場料も別個に設定されています。)殆ど一つの展覧会と捉えて差し支えないでしょう。全体に大きな「プライベート」というキーワードが置かれて、それらが自分自身や社会などとどう関わるのかについて問う内容ではありますが、テーマを無視して素直に写真と向かい合った方が楽しめます。ここは難しいことを抜きにして写真に見入ることにしました。



展示のインパクトという点においては、地下一階フロア(part.3 日常への冒険)に展開されていたセカンドプラネット(グループ)とみうらじゅんが際立っています。みうらじゅんの「特選30点」と「アイノカテゴリー」。ありふれた日常風景の中に見出された皮肉まじりの笑い。「下らない。」という言葉がここではポジティブな意味として光っています。対象の固定観念を覆すイメージを生み出すような写真。それが、本来そこにはないはずの笑いとともにやってくる。この絶妙なセンス。好き嫌いが分かれそうではありますが、私は楽しませていただきました。



セカンドプラネットは、特定のテクストのイメージを東京とプラハの二都市に被せて、さらにはその差異を写真によって表現するアプローチをとります。同じ言葉がそれぞれ風土の異なった二都市にどう見えていくのか。テクストは500名の一般参加者が作り上げました。見慣れた東京の街と未知のプラハ。同じテクストから切り取られた光景は当然ながら大きく異なります。ここでもみうらと同じように、写真を、先入観に縛られた言葉の意味を解きほぐすかのように提示していました。



特に美しい作品を見せてくれたのは、「part.2 社会の中の私」のセクションで展示されていたニコール・トラン・バ・ヴァンのファッション的ヌード写真です。「ヌードとはけっして裸ではない。わたしたちは常に身体という衣装をまとっている。」という言葉の通り、単なるヌード写真にとどまらない、まさにファッションとしての裸体を見せた作品です。美しいアラベスク模様の中で一人座り込む若い裸女。彼女はそのアラベスクの装飾の中の一部となって、まるで人形のように存在しています。裸体がアラベスク模様の衣服のように見えてくるのは、模様が裸体と背景の両方を飲み込んでいるからでしょうか。身体がファッションの一部となっていること。これをヌードと定義するのを阻むような美しいファッション写真です。



その他では絵画のように日常の一面を切り取ったジャン=ポール・プロペスや、性をまるで殺伐とした暴力行為のように見せてくるアントワーン・ダガタ、さらにはメディアアート的な手法を用いて本と写真の関係を問う姜愛蘭の作品などが印象に残りました。ちなみにこの新進作家展は、2002年からテーマを変えながら毎年開催されています。(昨年は「新花論」。)来年も楽しみです。
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