「小袖 江戸のオートクチュール」 サントリー美術館

サントリー美術館港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン・ガーデンサイド)
「初公開 松坂屋京都染織参考館の名品 小袖 江戸のオートクチュール」
7/28-9/21



1931年、京都で開設され、現在は染物資料を全1万点ほど所蔵するという、松坂屋京都染織参考館の小袖、約300点を展覧します。サントリー美術館での「小袖 江戸のオートクチュール」へ行ってきました。

染物などに関心の薄い私にとって、実は日頃、お世話になっているこの方にお誘いいただくまでは見るのをパスするつもりでしたが、率直なところこの展覧会は、私のような小袖のこの字も知らない人間でも十分に楽しめるものです。その理由は言うまでもなく、小袖の意匠の持つ深い絵画性にあります。艶やかな梅などの草花はもちろんのこと、朱に染まる紅葉から流水紋に宝船、鷹狩りから宇治風景に到るまでのモチーフは、小袖を単なる衣服というの枠から開放し、多様な詩情と斬新な意匠を持ちうる、一つの絵画世界へと昇華させていました。ひょっとすると、かの鳥獣戯画展よりも長居して、しげしげと作品を見入っていたかもしれません。

 

展示ではいくつかの様式をとった江戸期の小袖全般と、その変遷を知る上で『重要な資料』(公式HPより)である雛形本などが紹介されていましたが、不思議とパッと見た際の第一印象で好き嫌いが分かれてしまうのは、やはりそれが人を飾る衣装と言う道具の一つであるからなのでしょう。印象深い作品を挙げていくとキリがありませんが、小豆色の地に草花と応挙犬の如く可愛らしい犬たちが戯れる「雪持ち蘭に仔犬模様振袖」(江戸後期)や、まさに宗達の扇面流しの屏風を思わせるダイナミックな図柄の「扇面模様小袖」(江戸中期)などは、上の図版を見ても改めて見事だと思える作品の一例です。また伊勢の八橋に構図をとった「杜若に八橋模様小袖」(江戸中期)など、江戸絵画としては定番中の定番と言えるモチーフの作品も魅力的でした。シチェーションに合わせ、色とりどりの小袖を選ぶことの出来る女性たちが素直に羨ましく思えるほどの多様なラインナップです。



明治の洋画家、岡田三郎助の小袖コレクションを紹介した一角も見応えがありました。小袖に惚れ込み、小袖を纏う女性を描いた岡田の油絵、「支那絹の前」はなかなかの力作です。また、その際に用いた小袖も合わせて展示されていました。イメージも膨らむ、巧みな展示構成です。

9月21日までの開催です。(三度の展示替えあり。リスト
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