「第14回 秘蔵の名品 アートコレクション展」 ホテルオークラ東京

ホテルオークラ東京港区虎ノ門2-10-4 アスコットホール 別館地下2階)
「第14回 秘蔵の名品 アートコレクション展 - パリのエスプリ・京の雅・江戸の粋 - 」
8/8-30



毎年、お盆になると、ホテルオークラまでいそいそと足を運んでいるような気がします。今年で14回を数える夏の東京のアートな風物詩、「秘蔵の名品 アートコレクション展」へ行ってきました。



出品数からすれば、今年のアートコレクションはやや小ぶりと言えるかもしれません。リストを見比べれば一目瞭然、去年は全103点の絵画が展示されていたのに対し、今年は例えば計60点ほどにとどまっています。(ただし、広重の名所図絵全55枚を出品リストに倣って一点として数えた場合。)そのせいか、お馴染みの会場アスコットホールも、心なしか余裕があるように感じられました。とは言え、ちらし表紙も飾る、大山崎山荘よりのモネの大作「睡蓮」をはじめ、大成建設と村内のドービニーの見事な三点の風景画、または柏の摘水軒よりの二点の若冲、さらには襖四面に曲水宴などの光景が壮麗に描かれた冷泉為恭の「鷹狩・曲水宴図襖」など、他で展観されにくいような名品が出ているのも事実です。お気に入りの一点を探すのにさほど時間はかかりません。



今回、私の一推しに挙げたいのは、六曲一双の屏風に虎が対峙する、竹内栖鳳の「虎」です。これはまさにいつもお宝を秘めて蔵している三の丸尚蔵館の作品ですが、睨みをきかす虎の表情が栖鳳ならではのリアルな表現にて巧みに示されています。それに澱みない線描によるヒゲの様子や、たらし込みを利用したそのふっくらとした体つきなども見所の一つです。また例えば応挙の作のように、江戸絵画におけるどこか猫のような虎と比べると、相応に真へ迫っているように見えるのは、やはり栖鳳自身が生きている虎を見て描いたからなのでしょうか。かの代表作、「班猫」にも劣らない名作と言えそうです。



西洋画では8点ほど出品されていたモネにも見応えがありましたが、とりわけ惹かれたのは、上でも触れたドービニーの3点でした。中でも1867年、パリ万博の美術展にて展観され、1等賞を得たという彼の自信作、「ボニエール近郊の村」は必見の一枚です。夕日に照らされた川沿いの村が、川面に反射する家々の光景も鮮やかに、うっすらと朱色を帯びた瑞々しい色彩感にて美しく描かれています。また土手で馬に水を飲ます様子が、一日の勤めを終えた日常の一コマを控えめに表していました。黄昏時の僅かな時間だけに見られる一瞬の美しさを見事に切り取った作品です。

その他では、ついこの間まで東博の表慶館で開催されていた、フランスのジャポニスム陶器展に出ていたブラックモンの銅版画なども印象に残りました。また大倉集古館ご自慢の名品、酒井抱一の「五節句図」も久々に出品されています。



展示のトリを飾るのは、北斎と広重による二大巨匠の浮世絵群です。広重の「五十三次名所図絵」にて東海道の疑似ツアーを楽しんで会場を後にしました。

また今年もアートコレクションのチケット1枚にて、大倉集古館(紙で語る)、及び泉屋分館(明治の七宝)の展示を見ることが出来ます。毎度のことながらお得感のある展覧会です。

今月30日までの開催です。
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