「アートスコープ2007/2008 - 存在を見つめて」 原美術館

原美術館品川区北品川4-7-25
「アートスコープ2007/2008 - 存在を見つめて」
6/28-8/31



かの趣きある原美術館の一室で、加藤泉の木彫の人形がくつろいでいるとあれば楽しめないはずはありません。2003年より始まった同美術館の恒例企画、アートスコープへ行ってきました。



交換プログラムと展示内容が今ひとつ結びつかないのは毎度のことですが、まずはこちらでも印象深かった照屋勇賢のインスタレーションからして、邸宅の一室をうまく用いたもので満足出来ます。入口正面、一階のギャラリー1では、浮き輪とロープに演出されたお馴染みのペーパークラフトが、いつもながらの繊細な様相をとって展示されていました。トイレットペーパーの芯をくり抜き、そこから枝葉を出して壁に森を築く「Forest」シリーズ、そしてそれに対応するような松の小枝の「Touch a Port」、さらには普通のハイヒールのように見せかけ、実は蝶の蛹を用いた「Dawn」など、何気ない素材を用いながらも、自然の営みを意識させるその制作はなかなか魅力的です。彼の世界観からして、窓から望む庭木の緑と調和していたように感じられたのは私だけでしょうか。気取らなくて飾らない、それでいてちょっとした美しさで見る者をハッとさせるインスタレーションです。



今回のハイライトは、何と言っても同館最大の展示室(一階ギャラリー2)での、加藤泉の一連の木彫でしょう。奇怪な木彫の人物を右に三点並べ、中央の壁面には、彼らのポートレートの如き大作ペインティングが紹介されています。そして、特に見逃せないのは、左奥テラスの三体の木彫です。顔こそ、かの奇妙な人の表情をとりながらも、まるで馬のような形をした木彫が背中に二体、今度は子どものような人物像をちょこんと乗って立っています。子どもたちの様子は何とも無邪気です。色とりどりの石を嵌め込んだ目をキラキラと輝かせ、手には植物のつぼみを宝物のようにして大事そうに抱えていました。この原美の一室に、例えば展示期間中だけ泊まりに来た一家の団らんの姿のような、どこか微笑ましい光景が広がっています。



二階での外国人二名の作品では、紙に黒鉛などで繊細な建築物を描くピンカーネルのドローイングが心にとまりました。そう言えば原美術館では建築展が殆ど開催されませんが、このような作品を見る限りにおいても、相性は意外と良いのではないかと思います。是非望みたいところです。

品川駅からの徒歩アクセスにやや難のある原美術館ですが、いつの間にかシャトルバスの運行が開始されました。(日曜のみ。2009年6月末までを予定。)このバスはブルームバーグ提供のアートバスということで、作家田尾創樹の手がけたデザインでラッピングされているのだそうです。次回は是非利用してみたいです。(時刻表



8月末日までの開催です。
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