東京フィルオーチャード定期 「チャイコフスキー:交響曲第5番」他 飯守泰次郎

東京フィルハーモニー交響楽団 第771回オーチャード定期演奏会

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー 交響曲第5番

ピアノ アンドレイ・コロベイニコフ
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団(コンサートマスター:荒井英治)
指揮 飯守泰次郎

2009/5/10 オーチャードホール



日曜昼下がりのオーチャード、定番の超名曲プロでも、飯守泰次郎とあらば気の抜けた演奏などあろうはずもありません。東フィルのオーチャードホール定期を聴いてきました。

あまり時間も経たずに同じピアニストを聴けるとは奇遇です。冒頭のピアノ協奏曲のソリストを務めるのは、つい先日、LFJで果敢に迫るバッハを披露したロシアの俊英、弱冠23歳のアンドレイ・コロベイニコフでした。相変わらず彼のピアノはダイナミックです。飯守サポートで管も全開のオケに負けることなく、音をホールいっぱいに行き渡るまで半ばガンガンと打ち鳴らしていきます。とは言え、彼の魅力はそうした激しいフォルテよりも、もっと控えめで落ち着いた、p方向の表現の箇所にあるのではないでしょうか。軽やかな音を奏で、まるでシャボン玉を吹くかのようにして音符を舞わせる様は、決して若さだけで力押ししないコロベイニコフの才能を伺い知るのに十分です。またその特性は、アンコールのチャイコフスキーの「四季」より、6月の「舟歌」でも存分に味わえました。是非また聴きたいピアニストの一人です。

メインのチャイ5は飯守節全開の力演となりました。金管はさながらブルックナーでも演奏するかのように猛々しく彷徨させ、弦は高音と低音部の対比を明確に、また木管群は全体より浮き上がるかのようにして瑞々しく吹かせます。そして圧巻なのは最終楽章です。かなり早めのテンポの3楽章よりほぼアタッカで入り、そのまま息も切らさぬスピードで「運命の動機」へとすすめ、ここで一端テンポを落としてじっくりと歌った上にて、アッチェレランドのかかる高速コーダでワーグナーばりの高揚感を演出しました。緻密さという点にはやや欠けた面はありましたが、濁流のように進み、また歌うところでは濃厚に歌うオケのドライブ感、またその力強さは、最近の飯守らしい見事な内容ではなかったかと思います。東フィルもかなり好調でした。

Mravinsky-Tchaikovsky I

*定番のムラヴィンよりチャイ5の第1楽章。

終演後はもちろん拍手喝采です。健闘したトランペットはもちろんこと、情熱的な演奏で一際目立っていたティンパニに大きな拍手がおくられていました。
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