「水墨画の輝き - 雪舟・等伯から鉄斎まで - 」 出光美術館

出光美術館千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
「水墨画の輝き - 雪舟・等伯から鉄斎まで - 」
4/25-5/31



室町より江戸、近代に至るまでの日本水墨画史を総覧します。出光美術館で開催中の「水墨画の輝き - 雪舟・等伯から鉄斎まで - 」へ行ってきました。

構成は以下の通りです。出光コレクションから周文、雪舟、牧谿、玉澗、等伯、武蔵、宗達、大雅、玉堂、鉄斎らの水墨画、または屏風絵の全41点が紹介されていました。

第一章 水墨山水画の幕開け
第二章 阿弥派の作画と東山御物
第三章 初期狩野派と長谷川等伯
第四章 新しい個性の開花 - 近世から近代へ



上記の通り、まさに水墨画史のオールスターを一堂に楽しめてしまうお得な展覧会ですが、それを単に時代別にだけでなく、画題までに注視しているのも企画に秀でた出光ならではのことかもしれません。中でもとりわけ印象深いのは、桃山期の水墨屏風、全4点の登場する第三章より、長谷川等伯の二点、「竹虎図屏風」と「竹鶴図屏風」でした。ここではどこか飄々とした仕草で屈む雄と雌の二匹の虎が描かれていますが、それを同館の解釈では各々の求愛行動として捉え、伝統的な画題にも巧みな情感表現をこめた等伯の進取性を賞賛しています。またさらに私が付け加えたいのは、横に並ぶ「竹鶴図屏風」における大気の表現です。「松林図」の例を挙げるまでもなく、等伯の風景画にはいささかの湿り気を帯びた大気と、また時に木々を揺らす風の気配が巧みに取り込まれています。この二点を見るだけでも改めて等伯の斬新さに触れることが出来るのではないでしょうか。至極感心しました。



もちろん展示の魅力は等伯だけにとどまりません。冒頭に登場する雪舟の「破墨山水図」(上図版)の筆の見事な様子にも唸らされました。力強い墨の滲みが岩山から湖畔までを一気に示し、また余白の湖面には颯爽とした墨線による小舟が浮かんで情緒を醸し出しています。またもう一点、是非とも挙げておきたいのは牧谿の「平沙落雁図」です。茫洋深淵たる大地の上の虚空を雁の群れが点々と連なって飛んでいます。地面で羽を休める鳥との対比的な空間構成、また最小限の筆遣いより生まれた情景描写など、いつか府中で見た蘆雪の「蛙図屏風」の詩的表現にも通じる見事な作品でした。



古代中国の伝説の皇帝を描いた宗達の「神農図」他、東博大琳派にも出品のあった其一の「雑画巻」など、琳派が登場するのも嬉しいところです。また最後のコーナーは、玉堂や鉄斎、そして大雅などの南画系作家のミニ企画展です。中でも精緻なタッチが山水の景色を彩る玉堂の「籠煙惹滋図」は印象に残りました。まるで銅版画のような質感です。細かい墨線が刻み込まれるように走っていました。

会場の随所に展示されている出光ご自慢の工芸品にも注意して見て下さい。南宋の禾天目や李朝の茶碗などがさり気なく紹介されていました。

今月末、31日までの開催です。(展示替えはありません。)
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