都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「細見コレクション - 琳派にみる能 - 」 国立能楽堂
国立能楽堂資料展示室(渋谷区千駄ヶ谷4-18-1)
「細見コレクション - 琳派にみる能 - 」
2009/12/23-2010/2/21

国立能楽堂資料展示室で開催中の「細見コレクション - 琳派にみる能 - 」へ行ってきました。
まずは本展の概要です。
・細見美術館の館蔵品より「能」に由来する作品を展示。出品数は約40点。(会場は手狭な展示室一つ。)
・又兵衛(1)、宗達(1)、光悦(3)、光琳(1)、其一(4)、雪佳(7)の江戸絵画(カッコ内は出品数。)の他、作者不詳の「洛外図屏風」、織物、七宝などを紹介。
・大多数が通期で展示されるが、数点のみ展示替えあり。
# 鈴木其一「翁図」・「楽茶碗花鋏図」~1/24、池田弧邨「小鍛冶図屏風」・中村芳中「朝顔図」1/26~、酒井抱一「松風村雨図」2/9~
例えば昨年の日本橋高島屋など、最近は細見コレクションを目にする機会も多くなっていますが、「能」をキーワードを軸とすると驚くほど斬新に見えたのは私だけではないかもしれません。比較的詳細なキャプションは、能の素養がない者にも、作品の意味を新たに知らせてくれます。堪能出来ました。
前期中で全4点のうち半数が展示を終えてしまいますが、私が今回の主役として挙げたいのが鈴木其一です。おそらくは其一の師、抱一の属する酒井家の演能を描いたのではないかとされる「翁図」(前期)をはじめ、能の高砂をモチーフに、初日の出に従う高砂の松と住吉の浜を描いた「旭日・高砂図」(通期)など、文字通り「能」にまつわる作品は十分に見応えがありました。

またさらにもう一点、其一の弟子とも言われた無名の絵師、市川其融の「雪中常盤図」(通期)にも要注目です。これは平治物語より能の「常盤」に由来する作品ですが、その表具に師の其一を彷彿とさせる描表装が用いられています。実はだまし絵展でも出た作品とのことですが、画中に登場する常盤御前と牛若をはじめとした三人の子どもたちの衣装と、表具の雪松の紋様の色遣いの対比もまた鮮やかでした。
能の「俊寛」に借りた又兵衛作の「俊寛図」(通期)、そして一見、オーソドックスに洛外の景色を表しながらも、その内の四条河原の舞台にて葵上が演じられたシーンを取り入れた「洛外図屏風」(通期)など、点数こそ少ないものの、印象に深い作品も何点かありました。
もちろん絵画以外にも、能に関する文物、例えば舞台で用いられる被り物の飾りなども僅かながら展示されています。象嵌で紋様の示された「七宝 鳥兜文引手」の精緻な作り込みには目を見張るものがありました。
能楽堂にてこのような琳派関連の作品を紹介することは極めて稀だそうです。巡回展ではありません。
リストの他、内容を鑑みると割高(2500円)でしたが、図録も販売されていました。巻頭の文は河野元昭氏によるものです。
ところで本展に関連した特別講座が今月16日(土)に開催されます。当初は受付を昨年末に締め切る予定だったそうですが、この度、急遽延長され、最終の申し込みが1月12日までとなりました。(往復はがきで12日必着。無料。)興味のある方は申し込まれてはいかがでしょうか。
「特別講座 細見コレクションの世界」
細見良行(細見美術館館長)
田沢裕賀(東京国立博物館調査研究課絵画彫刻室長)
日時:1月16日 14時~16時
場所:国立能楽堂大講義室
定員:160名(多数の際は抽選。)
(門をくぐらずに左側の路地を進みます。)
ちなみに会場は能楽堂内の資料展示室ですが、正面玄関口とは別の場所から入場しないとたどり着けません。ちょうど正面より向かって左手の路地を進んだ右側に事務室・展示室と書かれた玄関があります。そこが入口です。
(こちらが展示室の入口です。)
2月21日まで開催されています。なお入場は無料でした。(チラシ拡大画像)
「細見コレクション - 琳派にみる能 - 」
2009/12/23-2010/2/21

国立能楽堂資料展示室で開催中の「細見コレクション - 琳派にみる能 - 」へ行ってきました。
まずは本展の概要です。
・細見美術館の館蔵品より「能」に由来する作品を展示。出品数は約40点。(会場は手狭な展示室一つ。)
・又兵衛(1)、宗達(1)、光悦(3)、光琳(1)、其一(4)、雪佳(7)の江戸絵画(カッコ内は出品数。)の他、作者不詳の「洛外図屏風」、織物、七宝などを紹介。
・大多数が通期で展示されるが、数点のみ展示替えあり。
# 鈴木其一「翁図」・「楽茶碗花鋏図」~1/24、池田弧邨「小鍛冶図屏風」・中村芳中「朝顔図」1/26~、酒井抱一「松風村雨図」2/9~
例えば昨年の日本橋高島屋など、最近は細見コレクションを目にする機会も多くなっていますが、「能」をキーワードを軸とすると驚くほど斬新に見えたのは私だけではないかもしれません。比較的詳細なキャプションは、能の素養がない者にも、作品の意味を新たに知らせてくれます。堪能出来ました。
前期中で全4点のうち半数が展示を終えてしまいますが、私が今回の主役として挙げたいのが鈴木其一です。おそらくは其一の師、抱一の属する酒井家の演能を描いたのではないかとされる「翁図」(前期)をはじめ、能の高砂をモチーフに、初日の出に従う高砂の松と住吉の浜を描いた「旭日・高砂図」(通期)など、文字通り「能」にまつわる作品は十分に見応えがありました。

またさらにもう一点、其一の弟子とも言われた無名の絵師、市川其融の「雪中常盤図」(通期)にも要注目です。これは平治物語より能の「常盤」に由来する作品ですが、その表具に師の其一を彷彿とさせる描表装が用いられています。実はだまし絵展でも出た作品とのことですが、画中に登場する常盤御前と牛若をはじめとした三人の子どもたちの衣装と、表具の雪松の紋様の色遣いの対比もまた鮮やかでした。
能の「俊寛」に借りた又兵衛作の「俊寛図」(通期)、そして一見、オーソドックスに洛外の景色を表しながらも、その内の四条河原の舞台にて葵上が演じられたシーンを取り入れた「洛外図屏風」(通期)など、点数こそ少ないものの、印象に深い作品も何点かありました。
もちろん絵画以外にも、能に関する文物、例えば舞台で用いられる被り物の飾りなども僅かながら展示されています。象嵌で紋様の示された「七宝 鳥兜文引手」の精緻な作り込みには目を見張るものがありました。
能楽堂にてこのような琳派関連の作品を紹介することは極めて稀だそうです。巡回展ではありません。
リストの他、内容を鑑みると割高(2500円)でしたが、図録も販売されていました。巻頭の文は河野元昭氏によるものです。
ところで本展に関連した特別講座が今月16日(土)に開催されます。当初は受付を昨年末に締め切る予定だったそうですが、この度、急遽延長され、最終の申し込みが1月12日までとなりました。(往復はがきで12日必着。無料。)興味のある方は申し込まれてはいかがでしょうか。
「特別講座 細見コレクションの世界」
細見良行(細見美術館館長)
田沢裕賀(東京国立博物館調査研究課絵画彫刻室長)
日時:1月16日 14時~16時
場所:国立能楽堂大講義室
定員:160名(多数の際は抽選。)

ちなみに会場は能楽堂内の資料展示室ですが、正面玄関口とは別の場所から入場しないとたどり着けません。ちょうど正面より向かって左手の路地を進んだ右側に事務室・展示室と書かれた玄関があります。そこが入口です。

2月21日まで開催されています。なお入場は無料でした。(チラシ拡大画像)
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