「絹谷幸二 生命の軌跡」 東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館台東区上野公園12-8
「退任記念展 絹谷幸二 生命の軌跡」
1/5-1/19



「20年以上に渡り東京藝術大学絵画科油画で教鞭をふるって」(美術館HPより引用)きた画家、絹谷幸二の業績を回顧します。東京藝術大学大学美術館で開催中の「退任記念展 絹谷幸二 生命の軌跡」へ行ってきました。

強く惹かれたかどうかと言えば迷うところですが、底抜けのブルー、そして燃えたぎる炎のような朱色などを鮮やかに交えて描かれた大作群の数々には素直に感心するものがあります。特にそびえ立つ富士を背景に、二体の龍がそれこそ山頂を超えて激しく跳ねる「富嶽龍神飛翔」などは、芸大美の意外と広い展示室にも負けることのないスケール感で異彩を放っていました。

とは言え、今回の個人的なハイライトはもはやモニュメントと化したかのような巨大立体作品に他なりません。会場入口で左右に広がった飛び出す絵本ならぬ「湾岸の悲劇の長い物語」をはじめ、シャガール風の男女が赤と青の空間で寄り添う「愛する者達・希望」、さらには高さ4m、一辺は約2m近くはある立方体に、ダリやピカソの描いたような人物たちの顔が埋まる「Open the box of Pandora」などには終始圧倒されました。

その他、奈良の出とも関係するという仏教的なイメージ、また一方で時事的な要素を取り込んだ作品なども印象に残りました。その最たる例として明王と9.11の光景を織り交ぜた「明王夢譚2」が挙げられるのではないでしょうか。影絵のように飛ぶ飛行機、煙を上げるビル、それを伝えるTV報道、そして明王へ救いを求めるかのようにひしめく群衆が渾然一体となって描かれていました。

好き嫌い云々を通したアクの強さは、もはや異論を挟めないまでの個性にまで昇華しています。見ていて痛快でした。

次の火曜日、19日までの開催です。(無休)なお入場は無料でした。
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